検索
連載

素人IT部長に望むこと(2)システム部門Q&A(19)(3/3 ページ)

前回は素人IT部長に求められる姿勢を、反面教師的にブラックユーモアたっぷりに紹介した。今回は、スーパーマンにしか実行できないような“あるべき論”ではなく、一般的な素人部長でも実現できる身近な問題対策から説明する。

PC用表示
Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

新部長が早急に習得するべきこと

 情報技術の習得には時間がかかりますが、ぜひ早急に習得してほしいのは情報化投資の費用対効果(特に費用)に関する知識と、プロジェクト運営に関する知識です。知識というより、「部下にどうさせるかのスキル」といった方がよいかもしれません。

 (1)情報化費用のメカニズムに関心を持つ  

 情報化投資の費用対効果といっても、採算性の計算技法ではありません。ちょっとした要求追加になぜ多大な費用が請求されるのか、出力帳票の個数を半分にしても費用が半分にならないのはなぜか、などのメカニズムを理解する必要があります。また、情報システムの開発では、予定した2倍の費用と2倍の時間がかかるのに、予定した2分の1の機能しか実現できないという「222の法則」がありますが、なぜそのようなギャップが生じるのか原因を理解するべきです。

 実は、このメカニズムがかなりいいかげんなのです。部長がこれに関心を持てば、部下やベンダもいいかげんなことはできなくなります。それによるコストダウンは予想を大きく上回るでしょう。また、これにメスを入れると、メカニズムが「見える」ようになります。これは部長の説明責任を果たすのに効果がありますし、経営者の意思決定の支援にもなります。

    (2)プロジェクト運営     

 店舗出店やイベントなどと比較すると、情報システム開発のプロジェクトは、関係者が多く、技術に不確定要素が多く、小さなミスが深刻な結果になるのに見えないなど、多くのリスクがあります。そのリスクの中で、222の法則ではなく111の法則にするには、プロジェクトマネージャの能力が求められます。

 プロジェクトマネジメントの基礎知識体系であるPMBOK(the project management body of knowledge)を研究するのが理想ですが、それは単純にはできません。当面は部下に研究させましょう。最も簡単なのはプロジェクトリーダーやメンバーと頻繁に接触することです。当然、公式な報告はあるでしょうが、それとは別に報告書などの作業を強いない雑談形式でもよいのです。どのような局面でリーダーはどのようなことをしたかを注目することにより、常識的な運営を理解することができます。それにプロジェクトリーダーは多様な問題を抱えています。部長とフランクに接する機会が多ければ、率直に自分の意見を述べたり、部長の指示や協力を仰いだりするようになります。

 実はこのような行いが、「ちょっとしたことが大きなトラブルになるのを防ぐ」のです。特に、経営者や利用部門の上位者との折衝は、リーダーよりも部長の方が、業務の問題として話せるので有効です。そのような任務を持ってあげましょう。あなたは人との交渉はお手のものですから、このようなことを続ければ、早急にプロジェクト運営のコツを理解するでしょう。そうすれば、さらに相談を受けやすくなるし、適切なアドバイスもできるようになるでしょう。

この記事に対するご意見をお寄せください managemail@atmarkit.co.jp


筆者プロフィール

木暮 仁(こぐれ ひとし)

東京生まれ。東京工業大学卒業。コスモ石油、コスモコンピュータセンター、東京経営短期大学教授を経て、現在フリー。情報関連資格は技術士(情報工学)、中小企業診断士、ITコーディネータ、システム監査、ISMS審査員補など。経営と情報の関係につき、経営側・提供側・利用側からタテマエとホンネの双方からの検討に興味を持ち、執筆、講演、大学非常勤講師などをしている。著書は「教科書 情報と社会」「情報システム部門再入門」(ともに日科技連出版社)など多数。http://www.kogures.com/hitoshi/にて、大学での授業テキストや講演の内容などを公開している


前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る