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企業合併でシステムが止まらない方法教えます!システム部門Q&A(6)(3/4 ページ)

ライブドアとフジテレビの買収問題がお茶の間をにぎわし、企業買収が注目を集めている。競争力を高めるための企業買収や合併も、日常的になってきた。一方で、銀行における合併時のシステム不具合の発生など、システム合併におけるトラブルもよく聞く。企業合併時に、システム部門はどのような対応をすればよいのだろうか?

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バベルの塔を解決せよ

 自社の常識は他社の非常識といいますが、合併システムでは、用語や概念が違うことが大きなトラブルの原因になります。例えば、商品を納入する相手先のことをA社では「得意先」というのに対して、B社ではそれを「納入先」といい、「得意先」とは請求書の送付先を意味しているとか、A社では「出荷」とは自社倉庫から商品を搬出すること全体を指しているのに、B社では販売における流通のことに限定しており、自社の倉庫間での移動は「転送」といっているなど、基本的な用語すら概念が違っていることが多いのです。

 しかも、お互いにそれらを一般用語だと信じているのですから困ります。話し合いのかなり後の段階になってから「なんだかおかしいな」と気付き、「ところで、得意先とは何ですか」と質問する人がいて、初めてお互いの違いに気付くのですね。そして「得意先がそのような意味だとするならば、話が全然違いますよ」となり、「最初からやり直しましょう」という大きな手戻りになってしまいます。


図3 会社によって用語が異なる

 用語や概念の違いは、仕事の仕方の違いでもあります。それを変更することは仕事の仕方を変えることになります。利用部門が旧システムに固執するのは、これが大きな理由だとも思われます。しかし、早期に用語や概念の違いに気付いて統一しなければ、要求仕様も作れませんし、後になって気付いたのでは大きな手戻りになってしまいます。

 逆に、早期に統一して、それをデータベース化しておけば、情報システムをデータ中心アプローチにより開発することも、EUCによる情報検索系システムを普及するにも便利です。しかも、用語や概念を統合することは、業務を統合することにもつながります。

 このようなことは、常識的に行うことができますので、正式な合併システムの着手以前にも検討できますし、これを行うことにより、合併システムの開発期間を短縮することができます。

 概念の統一などのような抽象的な作業は、即物的な発想しかできない利用部門の人たちには不向きで、IT部員の得意とする分野です。例えば、売り上げ、出荷、移動などを「ものの動き」ととらえ、それを例えば下表のように体系的に整理することなどはIT部門は得意です。しかも、旧システムではそれにどのような用語を用いていたかも知っていますから、それぞれに、A社・B社で使っていた用語の対応表も作れます。それを関係者に示して、新会社では何と呼ぶかを決めさせればよいのです。

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 しかも、単に用語の統一だけでなく、この作業のプロセスにおいて、用語のデータベースを作成し、それに情報システムでの項目名なども対応させてオーソライズすれば、自然にデータ体系ができますし、EUCの普及にも役立ちます(「第9回 情報システム部門の生産性が上がらない理由」の「オンライン・ユーザー辞書を整備する」を参照)。

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