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“新・お作法”の土台となる情報基盤と組織への展開情報活用の新・お作法(4)(2/3 ページ)

“新・お作法”を実践するには、考え方・スキル・ルール&テンプレートに加えて、それを支援するITインフラが必要だ。新・お作法に即した情報基盤とはどのようなものだろうか?

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活用度の見える化による情報資産棚卸し/情報作成業務自体の棚卸し

 前述のように、情報の価値とは受け手の審判によるため、情報共有市場は「多産多死」にならざるを得ない。玉石混交でもよいからとにかく市場に出してみて、「玉」と判断されたものだけを残していく、という考え方である。

 従って次世代情報基盤は、情報を効率的に選別して「石」はどんどん取り除いていく、という棚卸しの仕組みを持っている必要がある。例えば「最終更新日から3年以上たっているものは取り除く」「ただしフィードバックスコアが50点以上のものは残しておく」など、さまざまな条件で情報をフィルタリングする機能だ。さらに、情報の種類によってはあらかじめ「時限コンテンツ」としておき、例えば「1年たったら自動的に削除される」などができるとよいだろう(図表4)。

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図表4 活用度の見える化による情報資産棚卸し

 紙の時代には、「○年保存」のように、情報は作成と同時にいつか廃棄されることが意識されていた。電子ファイルの時代になって、いつの間にかそうした意識が薄れてしまったが、それを取り戻さなければならない。しかも紙時代と違って、一律に一定期間置いておく必要はなく、有用な情報なら長く取っておく、評価の低い情報はさっさと捨てる、といったより実際的な判断ができるようになっているのだ。これを生かさない手はない。

フローの「見える化」によるコミュニケーションの質の向上とコスト削減

 ここまで主に「ストック」情報の話を見てきた。「フロー」情報についても、見える化による選別が可能である。これは「PushとPullの使い分け」と考えると分かりやすい。

 考えてみると、電子メールはずいぶん乱暴なツールである。相手の都合にかかわらず、誰でも、何本でも発信することができる。こちらとしては善意で「ご参考まで」程度にCCしたのだとしても、それが100本も届いているとしたら相手はたまったものではない。しかも電子メールは「拒否」することが難しいため、受信者自身が見てえり分けする(あるいは読まずに無視することを選択する)しかない。要するにメールとはPushのツール、「情報の出し手」優先のツールなのだ。

 次世代情報基盤では、これを「情報の受け手」優先に変える。まず情報の出し手は、そのカテゴリあるいは案件ごとに情報基盤に投稿し、情報の受け手側では、カテゴリや案件ごとに「お知らせメール」(新規投稿があったことを通知するメール)を受け取るか否かを選択しておく。これにより、現在自分が関心のあるトピックについて、リアルタイムで情報をキャッチアップできる。つまり情報をPushしてもらうことを選択するのだ。

 一方で現在Pushしてもらうほどではないトピックについては、お知らせメールは受け取らない。ただしその場合でも情報はすべて情報基盤上にあるから、必要になればいつでも見に行く(Pullする)ことができる(図表5)。

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図表5 フローの見える化によるコミュニケーションの質の向上(PushとPullの使い分け)

 これがPushとPullの使い分けである。情報の取捨選択の主導権を受け手に取り戻すわけだ。繰り返すが、情報の価値は受け手の判断で決まる。メールとて同じことだ。発信者にとっては重要なメールでも、受信者にとってはそうとは限らないのである。

 ちなみにこれは、個々人の「メール処理能力」とも関係してくる。メールが1日100通送られて来てもびくともしないという人もいれば、30本でも処理し切れない人もいる。後者の場合、それは「重要でないメールに重要なメールが埋もれてしまい、見落としてしまう」ことにつながるわけであり、見過ごせない事態である。

会議の見える化による会議開催効率の向上

 会議はフェイス・トゥ・フェイスで行われる“ライブな”プロセスなので、情報基盤とは直接の関係はないかもしれない。しかし会議開催の周辺作業(ロジスティクス)については、ITを使って支援することができる。

 例えば会議体ごとにメンバーを決めた掲示板を設置し、開催通知やアジェンダ、参考資料、議事録などはすべて掲示板を使って流すことにする。そうすることで、必要な情報を漏れなくメンバーに伝えることができるし、後から議論の経緯を追うこともできる。後でメンバーの交代があった場合も、新規メンバーにとっては過去の経緯がすべて残っているというのはとても役立つし、引き継ぐ側にとっても実に簡単だ。

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図表6 会議の見える化による会議開催効率の向上

 もちろん、会議の持つすべての機能がオンライン上で代替できるわけではない。時間と空間を共有することによる「コミュニケーション密度」の濃さは圧倒的だ。また「顔色」や「勢い」といった非言語表現はオンラインでは伝わらないし、ブレーンストーミングのようなインタラクティブな効果も期待しにくい。

 しかし、距離あるいは時間の制約により、物理的に集まることができないこともままある。それなら、掲示板上で意見を集約するだけでも事足りることもあるのではないか。「報告」や「情報共有」がメインの場合には特にそうだ。ポイントとなるのは、リアルとオンラインの両方を使い分けることなのである。

 なお最近、画期的に高効率な会議運営を可能にするプラクティスおよびツールとして、エクストリーム・ミーティングというコンセプトが提唱されている。これは議事録作成を中心に据え、これを共有しながら会議とプロジェクトを行っていく手法である。

 いかがだろう。次世代情報基盤は、「お作法が自然に身に付く仕組み」を備えるべきである、という意味がお分かりいただけただろうか。

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