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「ノーツ対シェアポイント」の投資対効果を見える化する“見える化”によるグループウェア再生術(4)(2/3 ページ)

情報共有/ナレッジマネジメント系のソリューションは導入効果が見えにくく、ROIを算出しにくい。今回は、そのROIに対する考え方について解説する。

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初期投資のROIを高める

 ROIについての議論でまず必要になるのは、ベンダ/製品選定や投資判断の材料としての見積もりである。マイクロソフト、IBM両陣営から提案を受けたとして、いかにして高いROIを引き出すかという観点をまとめたい。

■マイクロソフトの世界に飛び込むには、思い切りが必要

 もし、Notesの移行先はSharePoint──と心に決めているのであれば、投資額を下げてSPSを導入するか、バージョンアップに付帯する効果を追加することでROIを改善できる。この場合、Notesを使い込んでいる企業ほどハードルは高くなり、移行作業のコストダウンをどれだけできるかが、ROIに大きく影響する。

 そのうち、ソフトウェアライセンスコストについては、ほかのアプリケーションも含めて中長期的にマイクロソフトに囲い込まれることをよしとし、包括契約を結ぶ決断ができれば当座のコストを低減できる。ただし、この選択肢を取れるのは、マイクロソフトから優遇されるほどの大企業でかつSharePoint以外のアプリケーションを含む相当額の取引が期待される場合である。加えて、将来の自由度が犠牲になっているという点を忘れてはならない。

 Iを切り下げるのであれば、大半を占めることになる移行コストを減らすという手段も有効だ。しかし、移行対象のDBを減らすということは、これまで現場の努力で蓄積してきた情報資産を思い切って捨て去ることであり、現場の抵抗は避けられない。かなり勇気の要る決断である。

 ただ、DB数を減らすことで得られる恩恵は大きく、仮に1DB当たり500万円でSharePointのWebパーツに作り替えるとすると、100DBあれば5億円かかってしまうところを、最低限の10DBに絞れば5000万円で済む。

 上記の仮見積もり額が高いか安いかは状況によるが、現在問題なく稼働しているシステムを安全に移行する作業は、一般に非常に大掛かりになることをあらためて指摘しておこう。

 また、移行コストの上ぶれ要因として、エンドユーザーコンピューティングの悪影響がある。Notes DBの場合、設計・開発を担当しているのは専業エンジニアとは限らない。現場の知恵と工夫が詰め込まれたNotes DBは、ソフトウェア開発という面から見ると“素人アプリケーション”であることが多く、開発のお作法を無視している場合が少なくない。サーバ名をコードに直書き、モジュール化の不徹底、無意味に冗長なロジック、未使用コードの放置、ドキュメントの不備や現状コードとの不一致──など枚挙にいとまがない。これらはNotesの長所である、高い設計自由度が招いた問題であり、すべてをSharePointでマジメに再現しようとするとかなり大変である。思い切った仕様変更を決断することで、コストダウンも可能になるが、その場合、業務分析とアーキテクチャ設計が重要で、現場の協力が欠かせない。

■資産を活かした効率的なリフォーム

 一方、NotesバージョンアップやWeb化といったプロジェクトであれば、既存資産を活用できる割合が高い。データや研修・教育を含めた総合的な既存資産の活用度合いを意図的に高めることで、ROIは自然と向上できる。

 また、Notesバージョンアップの効果を底上げするには、サードパーティ製品の追加が有効である。エンタープライズサーチや企業情報ポータル、コンプライアンス対応のためのメールアーカイブなどがそれに当たる。多少の新規投資増があったとしても、既存資産を活用する割合が高ければ高いROIを期待することは不可能ではない。

■成功する投資判断は、金額の比較ではなくロジックの比較

 RFPに対するベンダ/SIer各社からの提案・見積金額を受け取り、どのベンダを選定するか? という段階において、各ベンダやコンサルティングチームにROIの算定を依頼する決済責任者をよく見掛ける。

 多くの賢いCIOは表面的なROIの値に左右されることなく、その裏側の算出ロジックがどれだけ練られたものかをチェックしている。ごくまれに算出結果を妄信し、単純な比較にこだわる責任者に出会うこともあるが、明らかに検討プロセスが短絡的な点を指摘し、考えをあらためていただいている。数千万円、数億円の決済を行う立場であれば、他人が出してきた提案をうのみにすることなく、自分の脳ミソで手触り感を確認していただきたい。各社から提出されたROIがそれぞれ独自の算出ロジックに基づいている場合、それを比較しても“apple to apple”(※)ではなく、意味がないことは自明である。

※ apple to apple=ものごとを比較する際には「リンゴとリンゴ」のように、性質や度量衡が同じもの同士でなければ意味がないという英語の慣用句。

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