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ITILを本当に推進できるのはだれかブライアン・ジョンソン ITILの文脈(2)(1/2 ページ)

短期集中連載でお届けするITIL執筆メンバーのブライアン・ジョンソン氏からのメッセージ。第2回は、ユーザー、IT管理職、現場のIT管理者など、立場に応じて期待や意気込みがばらばらになりがちなITILの、本当の推進役はだれかを考える

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やる気を出さない現場の担当者への対応

本連載は、2007年4月、@IT情報マネジメント編集部がブライアン・ジョンソン氏に行ったインタビューを構成したものです。文責は当編集部にあります。

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ブライアン・ジョンソン氏

 システマチックなITマネジメントを日常的に実行しなければならないのはIT管理者ですが、その結果自分の権限が縮小してしまうのではないかという懸念を持つ人は多く、行動に結び付かないケースは多いようです。

 しかし、こうした傾向は世界中どこでも見ることができます。ユーザーが何かの問題を解決するためにあなたに直接連絡しなければならないとしたら、あなたは(そのユーザーにとって)ヒーローです。しかし、その仕組みが変わり、ユーザーはプロセスに従ってサービスデスクに連絡しなければならないことになったとしたら、いままで自分が重要な存在だと感じていた人にとってはつらいでしょう。対処方法は3つあります。

 まず第1に考えるべき最良の策は、ITILのほうがはるかに優れたシステムだということをその人に納得してもらうことです。同じ問題で1日に6回も電話を受けるより、サービスデスクに問い合わせて情報を確認し、その6つのインシデントがすべて同じものだと分かれば、一度に解決することができます。時間の節約になり、その人にとっても良いことですし、会社にとってもコスト削減につながり、とても良いことです。CAでは「アポロ13号シミュレーション」(アポロ13号で発生した故障をスペースセンターの各担当スタッフがどう協力して解決するかを疑似体験するもの)を提供しています。こうしたツールで体験することで、納得する人たちがたくさんいます。

 第1の方法でうまくいかない場合、教育という切り口を考えるべきです。対象者を職場から離して、ITILトレーニングコースを受けさせます。foundationのコースよりも、practitionerのコースのほうが適しています。3日間のpractitionerトレーニングで、時間やコスト、作業をどのように節約できるかを知ることで、多くの人たちが考えを変えます。

 それでもだめな場合は、残念ながら配置転換しかありません。ほかの仕事をしてもらうことです。配置転換を実際に行うことで、ほかの人たちに対しても、あなたの組織が非常に真剣にITILに取り組んでいるということを明示することができます。

 英国政府ですら、配置転換をやりました。職員を解雇することは単に恐怖心をあおるだけですのでしませんでした。しかし、私たちはこれ(ITIL)が役立つと信じているんだ、あなたにとってもいいことだ、私たちと一緒にやることができないなら、ほかに移ってもらいたいということをはっきり宣言する必要があります。

 ITILではたしかに一部の人々のステータスを多少損ないます。その点では同情すべき点もあります。しかし、そういう人たちにとってもいいことはあるとわかってもらえるはずです。教育を受ければ、いままで自分がやってきたことを基に、プロフェッショナルとして認められるのです。ITILではプロを育成する教育が用意されています。以前はfoundationやpractitioner、managerといった資格がなく、いい仕事をしてもプロフェッショナルとしての地位は得られませんでした。しかし今では一定の道をたどることで、プロフェッショナルとしての認定が得られます。資格を人生に生かせるように、組織として投資をすることができるのです。

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