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第6回 RFPの書き方:要件を確実に伝える表現のコツキーワードでわかるシステム開発の流れ(2/3 ページ)

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青木室長 「赤井君、工場長からのリクエスト機能を何点か追加してほしいんだよ。ヒアリングした結果をまとめたものをメールで送ったので、それを作成中のRFPに加えておいてくれないか」

赤井君 「分かりました。すぐメールを確認してみますね」

追加したい機能(1)〜(5)

 

(1) 1週間での販売個数の多い商品が何か分かるようにする

 

理由:欠品にならないように生産個数を増やすため。現在は、各店舗の店長から電話で知らせてもらっている。

 

(2) ……(省略)

 



赤井君 「なるほど。実際の生産ラインではいろいろ考えることがあるのですね」

青木室長 「そりゃそうだ。せっかく店舗に来てくれたお客さまに売り切れですと伝えるのは避けたいが、そうはいっても、多く作り過ぎて廃棄処分になるのは少なくしたい。うちの会社では、生産ラインのコントロールも工場長の権限になっているから、工場長は毎日、売り上げ実績表とにらめっこらしいぞ」

赤井君 「工場長も大変そうですね。分かりました、RFPに追加で盛り込んでみましょう。ところで、メールの内容だけでは情報が足りないので、少し質問させてください。えーと、まず(1)についてですが……」

(1)についての赤井君の質問内容

 

・どのような手段で分かればよいのか。画面で確認か? メールによる通知か?

 

・いつ知らせればよいのか。毎深夜の集計後? 販売個数の合計が超えたら即?

 

・販売個数としては何を数えればよいのか。単品での個数? 箱数?

 

・「販売個数の多い」とはどのような判断か。商品ごとに基準個数が違わないか? 季節ごとに基準個数が違わないか?

 

・1週間をどのように数えるか? 常に月曜日から日曜日? 6日前から当日まで?

 

・実店舗との連携は? ネットショップだけで集計? 実店舗すべての販売個数と合計して集計?



青木室長 「それは、工場長に直接聞いてみないと……」

赤井君 「そうですか、いまのところ不明ということですね。RFPの方にはどのように記述しましょうか。私の質問について後々判明する回答内容によっては、この機能の開発コスト(費用・時間)は、最小の場合と最大の場合とで10倍近い開きが出てしまいそうです。そうすると、高機能な内容を想定した会社と、最低限の機能を想定した会社とで、見積もり費用が大幅に乖離(かいり)することにもなりますね。実際に開発を進めながら予算を調節するって、うちの会社では難しいんじゃないですか?」

青木室長 「確かにそうだ。当初の概算から誤差の範囲で調整することは可能でも、1000万円が1億円になったりしたら、それは大事だ。うーん」

 赤井君の質問内容への回答までも網羅できたRFPであれば、開発ベンダから提示される提案内容はかなり精度が高く、後々になって大幅なズレが発生するリスクは随分と低いものと考えられます。しかし、そのレベルまでたどり着くには、関係者へのヒアリング、現状の社内業務フローや社内システムの把握を含め、多くの時間のかかる大作業となることが予想されます。一方で、青木室長が最初にメールで示したような個条書きレベルの記述では、何をどのように作りたいのかのイメージが伝わりにくく、いざ開発作業を始めてからコストが膨張したり、実現を断念せざるを得なかったりという事象が発生するリスクが非常に高くなります。最終的には、作成するRFPによって求めるレスポンス(開発ベンダからの提案や見積もりなど)への期待値によって、RFP作成にかける時間や内容を決めていくことになるでしょう。

 「ざっくりしたRFP」からは「ざっくりした提案」しか手に入れることはできませんが、「詳細なRFP」からは「詳細な提案」を手に入れることができるのは間違いありません。

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図1 「ざっくりしたRFP」からは「ざっくりした提案」しか手に入れられない

 「でも、どんなに頑張って作成しても、システム的な見方は専門家に任せた方がよいのでは……」という声もありそうですね。そのような場合は、RFP作成に該当する工程から開発ベンダに委ねてみてはどうでしょうか?

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