あどみちゃんの超常識キーワード 2008:特別企画 超常識シリーズ
今年もあとわずか。そこで今年、注目されたキーワードを振り返りながら、あどみちゃんといっしょに来年を展望してみましょう。
IT業界には、専門用語、キーワード、バズワードが溢れています。それは単に衆目を集めるためのマーケティングワードである場合もありますが、業界が一致して注目するには、それなりの訳があります。
ここでは2007年、ITエンタープライズ分野で注目された10の“超常識キーワード”(順不同)を取り上げ、2008年以降のトレンドを読み解いてみたいと思います。それぞれのキーワードを「さらに詳しく知りたい!」という方のために、超常識リンクに参考記事を用意しました。併せてお読みください。
超常識キーワード01
日本版SOX法
J-SOX
いよいよ2008年4月から日本版SOX法が適用される。これにより、上場企業は決算発表において、従来の財務諸表に加えて「内部統制報告書」と「内部統制監査報告書」も提出しなければならない。つまり、「財務報告に係る内部統制は有効」であることを証明しなければならなくなったのである。
現在、大企業での対応は一応の目途がつきつつあるが、その子会社や中小の上場企業ではまだ不十分なところが多く、緊急な対応を迫られている。
また、米国では適用初年度は人的リソースで対応したものの、2年目以降システム化が急速に進んだことから、日本でも2008年以降、ITシステムの導入が加速するものと推測される。
超常識キーワード02
内部統制
internal control
会社法が2006年5月に施行されたことや、2008年4月に始まる日本版SOX法の影響で内部統制が注目を集めている。現在、内部統制は日本版SOX法を中心とした“狭義の意味での内部統制”と、コンプライアンス全般にかかわる“広義の意味での内部統制”への対応が行われている。
また、個人情報漏えい事件が頻発していることから、リスク管理面からも注目が高まっており、セキュリティベンダを巻き込んださまざまなツールやソリューションが展開されている。
2008年には日本版SOX法が適用されることから、当面は内部統制需要は下がりそうにもない。
超常識キーワード03
SaaS(Software as a Service)
サース, サービスとしてのソフトウェア
ITアプリケーションを企業が自社のサーバで稼働するのでなく、業者の提供するサービスと契約することで利用できるSaaSが、本格的サービスの増加も手伝って大きく注目されている。
SaaSの基本的な考え方は、10年前にもてはやされたASPと変わるところはない。ASPはネットワーク回線やWeb技術上の課題を克服できず、騒がれた程には普及しなかったために「失敗」とまでいわれたが、SaaSという名でハイプサイクルの谷を越えて華麗に復活した。
SaaSの利点は、自社でコンピュータ資産を保有する必要がなく、運用保守のわずらわしさから解放されること、契約後すぐに利用が開始できることなどだ。カスタマイズや他システムとの連携ができるサービスも増えており、アプリケーション導入において、SaaS活用の流れは強くなる一方だろう。
超常識キーワード04
UML(Unified Modeling Language)
ユーエムエル
オブジェクト指向によるモデリングを行う際に使われる標準的な表記法である。業務分析やビジネスデザイン、システム設計、ソフトウェアモジュール開発などに利用される。
海外ではコミュニケーションツールのデファクトスタンダードになっていることもあって、オフショア開発の広がりとともに利用場面が拡がっているようだ。
ITエンジニアにとってはいわば基礎知識であり、学習者も増えているが、現場で本格的に使われるには、上流工程でモデリングをする風土が定着するかどうかにかかっているといえよう。
超常識キーワード05
仮想化
Virtualization, バーチャライゼーション
仮想化は、コンピュータサイエンスにおいては重要な研究分野として、古くから存在する技術だ。近年、オープン系のエンタープライズ・システムインフラの世界で、その仮想化に再び注目が集まるようになった。
当初、散在するサーバを統合する技術として使われ始めたサーバ仮想化技術は、アプリケーションの導入を迅速化できる、低コストでサーバの可用性を向上できるなどのメリットも理解されつつある。
2008年は、日本における「仮想化元年」と呼ばれるようになるかもしれない。
超常識キーワード06
ITIL(Information Technology Infrastructure Library)
アイティル
ITILとは、ITサービス管理を体系的に行うためのプロセスや手法を提示した一連の書籍のこと。
情報システム運用管理の事実上の世界標準になりつつあり、ITILをベースにした国際規格「ISO/IEC 20000」の日本版である「JIS Q 20000」も2007年に発行され、認定制度もスタートしている。
ITIL自身も2007年にバージョン3が登場した。このバージョンでは「ライフサイクル」という考え方を導入し、サービスを動的で形のないものとしてとらえ直している。ITサービス担当組織のプロセス改善や意識改革は、ITILの主要目的の1つだ。
超常識キーワード07
SOA(Service-Oriented Architecture)
ソア, エスオーエイ, サービス指向アーキテクチャ
ビジネスプロセスの構成単位に合わせて構築・整理されたソフトウェア部品や機能を“サービス”としてネットワーク上に公開し、これらを相互に連携させることにより、柔軟に企業システムを構築しようというシステムアーキテクチャ。
ビジネスの変化にシステムが迅速に対応できるアーキテクチャといわれ、特に昨今のように変化が激しいビジネス環境においてはメリットが大きいとされる。
そのため、2007年に引き続き2008年もSOAを適用したシステム構築事例は増えてくるものと思われる。しかし同時に、メンテナンス性やトランザクション管理などの課題も指摘されており、できる部分からの段階的な適用が続くだろう。
超常識キーワード08
BPM(Business Process Management)
ビーピーエム, ビジネスプロセス管理
BPMとは、“ビジネスプロセス”に「分析」「設計」「実行」「モニタリング」「改善・再構築」というマネジメントサイクルを適応し、継続的なプロセス改善を遂行しようという経営・業務改善コンセプトのことだ。
SOX対策を一段落させた企業では、業務の“見える化”を継続するソリューションとしてBI(ビジネスインテリジェンス)=CPM(コーポレートパフォーマンス・マネジメント)とともに注目されることになりそうだ。
超常識キーワード09
オフショア開発
Offshore Development
企業がソフトウェア開発プロセスの一部、または全部を海外に移管・委託すること。資本関係のない海外企業にアウトソーシングする場合と、海外支社・法人を設立して現地で人材採用を行い、業務移管する場合がある。
日本からはこれまで中国への依存度が高かったが、中国の人件費高騰・カントリーリスク分散などから、タイ、ベトナム、フィリピン、パキスタンなどに発注先を広げる動きも見られる。
オフショア開発には異文化コミュニケーション特有の困難やリスクが存在するが、当面は大幅な人件費削減が見込めるため、2008年以降も広く行われるだろう。
超常識キーワード10
グリーンIT
Green IT
地球環境に配慮したIT製品やIT基盤を採用したり、ITを環境保護や資源の有効活用に利用しようという考えが、グリーンITだ。
環境問題は、アメリカ合衆国元副大統領アル・ゴア氏と「気候変動に関する政府間パネル」(ICPP)が2007年度のノーベル平和賞を受賞したことで、がぜん注目を集めた。いまや地球環境に関する問題は、国際会議の重要案件である。
そうした中、膨大な電力を消費して環境負荷を与える存在としてのITと、環境負荷を軽減する技術としてのITに、社会の視線が向けられている。2008年以降、ITベンダで環境問題に言及しない企業はないだろう。
【超常識リンク】
グリーンIT - @IT情報マネジメント用語事典
“グリーンIT”を真剣に考えるべき3つの理由
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