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ビジネスモデリングで、何がどう変わるのか?@IT情報マネジメント 勉強会レポート(1)(2/2 ページ)

2007年12月6日(木)、@IT情報マネジメント編集部主催による「第1回 戦略マップ によるビジネスモデリング勉強会」が開催された。当日は、ビジネスモデリングに高い関心を持つ受講者が多数集まり、講師の説明に熱心に耳を傾けていた。その模様をレポートしよう。

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ビジネスステータスの評価

 戦略マップを使用して、これから目指すべき目標やゴールは明らかになった。では、それらの目標やゴールを達成するには、まず何をするべきなのか?

 ビジネスモデリングの最終目標は、戦略目標やビジネスゴールを実現するためのビジネスモデルを作成し、さらにシステム化することだ。逆にいうと、理想(To be)のビジネスモデルを導き出すためには、まずは現状(As is)のビジネスモデルを「見える化」して、把握する必要がある。

 As isのビジネスモデルを把握するには、まずはその企業の組織構造と、その組織を動かしているルールを定義する。

 組織構造は、以下のようにUMLの実装図を使用して定義することができる。

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図3 洋菓子店の組織モデル

 さらに、組織内の作業上のルールを以下のように洗い出す。この際、明文化されていない暗黙のルール、いわゆる「ローカルルール」も可能なかぎり洗い出して見える化することが重要だ。

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図4 洋菓子店のビジネスルール

ビジネスユースケースモデルの作成

 As isなビジネスの組織とルールを整理したら、次はそれらを踏まえ、ビジネスユースケースを作成していく。これは、RUPのシステム設計の手法を応用し、システムのユースケースの代わりにビジネスのユースケースをUMLで記述するというものだ。

 システムのユースケースを作成する場合と同様に、アクターの識別、ユースケースの識別、アクター同士・ユースケース同士の関係の定義……と続いていく。その際、よくビジネスモデリングの初心者が戸惑うのが、ビジネスのユースケースをどのような粒度で切り出せばよいのか、という問題だ。内田氏はこう説明する。

「ビジネスユースケースをどのような単位で切り出せばよいか、という問題に関しては、指針を提示することはできますが、絶対的な法則は残念ながら存在しません。この作業には、ある程度の慣れも必要です」(内田氏)

 しかし、と内田氏は続ける。

「ビジネスのユースケースは、システムのユースケースに比べればはるかに識別しやすいといえます。第1に、一般的にユースケースの数はシステムよりもはるかに少なくなります。ちょっと大規模なシステムであれば、80から90のユースケースが見付かることも珍しくありません。しかし、ビジネスであればそこまで多くなることはまずありません。第2に、業務には通常名前が付けられており、日々の業務の中でその単位が見えやすくなっています。いずれにせよ、業務の独立性に着目して何度もビジネスユースケースを識別する作業を繰り返していくうちに、徐々に慣れてきます」(内田氏)

 勉強会で用いた洋菓子店のケーススタディでは、最終的に以下のようなビジネスユースケース図が完成した。

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図5 洋菓子店のビジネスユースケース図

質疑応答から

 以上のように、第1回ではまず戦略マップを使った戦略目標・ビジネスゴールの定義を行い、そしてビジネスモデリングの第1ステップとして、現状のビジネスを「見える化」する作業を行った。受講者からは講師の内田氏に幾つかの質問があったが、その一部をここでご紹介しよう。

──勉強会の前半で戦略マップを使って抽出したビジネス目標と、後半でUMLを使って行ったビジネスモデリングの作業とがどのようにリンクしているのか、なかなかイメージがわかないのですが。

内田氏 戦略目標やビジネスゴールを達成するためのビジネスモデリングの作業は、第2回で説明します。今回行ったビジネスモデリングは、その前段として現状(As is)のビジネスを見える化するためのものです。第2回では、このAs isビジネスモデルをTo beビジネスモデルに洗練していきます。

──ビジネスルールを識別する際に洗い出したルールの数が膨大であった場合、すべてのルールを反映させることは難しいと思うのですが。

内田氏 おっしゃるとおりです。まずは思い付く限りのルールをすべて洗い出す必要があるのですが、その後、反映すべきルールをその中から選択していくことになります。逆に、当初見付からなかったルールでも、その後の作業の過程で見付かることもあります。これも、見付かった時点で取り上げるべきかどうかを判断すれば問題ありません。その結果、ビジネスルール識別の作業がやり直しになったとしても、ここで紹介している方法論はウォーターフォール型ではなくRUPをベースにした反復型なので、大した手戻りにはなりません。

第2回の開催に向けて

 第1回の勉強会を終え、参加した受講者からは「大変興味深かった」「ビジネスモデリングもこういった場で実際に体験できると理解が深まる」といった感想が寄せられた一方、質疑応答にもあったように、今回の内容だけでは企業戦略とビジネスモデリングとの関係が見えにくかった、という声もあった。

 第2回では、今回戦略マップを用いて抽出したビジネスゴールの実現に向けて、ビジネスモデルを洗練させていく手法が紹介される予定だ。したがって、前記のような疑問にも答えられる内容になるだろう。また、今回はどちらかというとビジネス寄りのテーマが中心であったが、第2回はシステム化に向けてのビジネスモデリングが話題の中心となる予定である。したがって、システム寄りの技術者にとっても意義深い内容となるだろう。


 第2回への参加をご希望される方は、下記のリンク「第2回 『戦略マップによるビジネスモデリング勉強会』のご案内」をクリックして、勉強会の詳細ページをご覧ください。

第2回 「戦略マップによるビジネスモデリング勉強会」のご案内 >>

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