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インドオフショアが、いままた熱い世界のオフショア事情(1)(2/4 ページ)

本連載では、中国以外のインドやベトナム、フィリピンなどにおけるオフショア開発事情を紹介していく。連載第1回はインドのオフショア事情を紹介する

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中国にはまねできない提案力と実績を引っ提げて、いざ参上

 話を本論に戻しましょう。

 どうやら、2007年ころより日本でもインドIT活用への追い風が吹き始めたことに疑う余地はなさそうです。関係者の間では、日本市場でインドが再浮上しつつある主な要因として、次の3項目が指摘されています。

・・インドIT企業がエンドユーザーへの提案を強化

・・日本人のIT技術者不足

・・世界最適調達(グローバルソーシング)の流れに日本企業も向かい始めた

 1番目の要因は、ようやくインドIT企業が本領を発揮する出番が回ってきたことを意味します。

 単に安いだとか、人海戦術をウリにするだけでは、ユーザー部門との直接取引は実現しません。高い技術力に加えて、顧客の業務を理解して問題解決する力、そして何よりもシステム保守運用を含めたITサービス提供の実績がモノをいう世界です。

 厳しい言い方ですが、いまの中国オフショア企業には到底まねできない芸当です。これまでインドIT各社は、欧米からの好調な引き合いを背景に、言葉や商習慣が異なる日本市場を重視する必要性を感じませんでした。それが、後述する幾つかの環境要因によって、日本市場に本格参戦する機会が巡ってきました。これが、2007年に起きた大きな変化です。

 ですが、後半の2項目については、「何をいまさら」という感が拭いきれません。日本人のIT技術者不足はいまに始まったことではありませんし、世界最適調達(グローバルソーシング)だってことさら珍しい概念ではありません。

 パソコンやiPod、旅客機、原子力発電所、食料品など、あらゆる分野で世界最適調達は実現されています。では、いったいなぜここにきて、日本市場でインドIT企業が急に見直されてきたのでしょうか。このなぞに迫る前に、世界のアウトソーシング市場動向におけるインドの地位と役割を分析したいと思います。

世界のアウトソーシング市場動向におけるインドの地位と役割

世界のアウトソーシング市場は堅調な成長を続けています。

 米調査会社Gartnerの調べによると、2008年のアウトソーシング市場の成長率は8.1%。やはり、主役はインド系IT企業です。ここで、わざわざ“インド系”と記したのには理由があります。

 世界の主要各国に顧客を持ち、米国や欧州から大量の資金を受け入れて成長し続けるインド発祥のIT企業は、多国籍企業と呼ぶにふさわしい企業形態に変容しています。2007年、インド系IT企業は、欧州では年率約60%、米国でも同約40%で成長していると伝えられます。

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 日本からのオフショア発注量に歩調を合わせる形で力を蓄えてきた中国IT企業を尻目に、インドIT企業は世界中から流れ込む仕事をのみ込んで爆発的な成長を遂げました。その勢いはとどまることなく、成長著しい中国アウトソーシング産業と比べても、その差は開く一方です(※)


※筆者注:
2007年上半期の中国のオフショアアウトソーシング売り上げは、およそ980億円(65.3億人民元)。今後5年間の年成長率は37.9%と見込まれます。

一方、中国IT産業には内需拡大という絶好の事業機会があるため、産業全体としてはインドITに負けず劣らず成長を続けます。中国ソフトウェア業界の営業収入は2007年度の第1四半期に前年同月比23.6%増の3785億元に達し、電子情報産業全体の伸び率20.1%を上回る高い成長を遂げています。


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インドの主要な“アシ”であるオートリクシャー(三輪車)

 IAOP(International Association of Outsourcing Professionals)が毎年発表する世界のアウトソーシングベンダ評価によると、インドIT大手企業が2007年度トップ10に3社ランクインしました(ウィプロ、インフォシス、マヒンドラ)。トップ10の顔ぶれをのぞいてみると、IBMやHP、アクセンチュア、GE(Genpact)といった多国籍企業が名を連ねますが、彼らは一様にインドで大規模なアウトソーシング事業を展開しています。ことほど左様に、インドは世界のアウトソーシング市場で圧倒的な地位を誇ります。

 一方、中国IT大手の東軟集団(Neusoft)が2007年に初めてトップ25に仲間入りしました。第35位にはHiSoftが続き、中国勢もようやく世界市場で存在感を見せ始めています。対照的に、日本企業は2007年度の世界アウトソーシングベンダトップ100社に1社もランクインしていません。

 IAOPの評価基準では日本国内のアウトソーシング売り上げが評価されないとはいえ、これではあまりにも内弁慶すぎます。残念ですが、世界市場における日本IT産業の地位の低さをあらためて認識させられました。

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