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適材適所の人材育成をしよう何かがおかしいIT化の進め方(36)(3/4 ページ)

企業=人だ。企業側も「人材育成が重要だ」というが、実際はどうなのだろうか。今回は人材の問題を考える。

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コンピテンシーという考え方

 コンピテンシーという人の能力を行動特性としてとらえる考え方が、30年ほど前、米ハーバード大学の行動心理学者デイビッド・マクレランド(David C. McClelland)氏によって提唱された。

 人の能力は氷山のようなもので、表面から見える知識やスキルのほかに、水面下に行動や思考、価値観など性格的な特性、基本的な動機の部分があり、実はこれが大変大きな影響力を持っているというものである。

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図1:氷山モデル
ヘイ・コンサルティンググループ編「正しいコンピテンシーの使い方」PHP研究所より作成

コンピテンシー項目

 その後、この理論は、ヘイ・コンサルティンググループに引き継がれ、活用のノウハウの開発がなされてきた。「表1」は基本的な20のコンピテンシーをまとめたものである

 コンピテンシーは「高いレベルの成果を生み出すために、行動として“安定的”に発揮されているもの」と定義され、「できる・できない」ではなく「日常的にやっていること」が対象になる。

 なお、コンピテンシーの項目名には、ヘイ・コンサルティングの用いている用語をそのまま使ったが、例えば「イニシアティブ」のように、われわれが日常用いているものとは、意味を異にするものがあるので注意が必要だ。

 なお、昨今の世の中のあらゆる分野で起こる不祥事を見るにつけ、21番目の項目に「倫理性」といったものを追加する必要があるのかもしれない。

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

コンピテンシーのレベル

 コンピテンシーは「高いレベルの成果を生み出すために、行動として“安定的”に発揮される能力」と定義されており、それぞれについて、まったくやっていないレベルから、一般的表現をすれば、 断片的行動、指示待ち行動、状況対応行動、主体的成果創造行動、全社規範・牽引行動、市場・業界創造行動といった7つのレベルが設定されている(もっとも、その人がいると皆がやる気をなくすような、マイナスのリーダーシップを発揮するような人も時々いるから、マイナスのレベルのある項目も実際には存在するのだろう)。

 なお、それぞれのコンピテンシーに対する1〜7のレベルを具体的に説明した、いわゆるコンピテンシーディクショナリがあるが、その内容はヘイ・コンサルティングのノウハウとして、一般には公開されていないようだ。

 ただし、参考資料として挙げた書物の中に、断片的に一部の項目やレベルについての説明が述べられているので、これらを参考に自社の業務の内容に合わせて、自分たちに分かりやすい表現の説明によるディクショナリを作るのも一法である。

 なお、このときに注意すべき点は、コンピテンシーはあくまで行動を基準に置いた考え方であるから、「XXができる」ではなく、「XXをしている」というとらえ方、表現を大前提に作成することである。いくら頭の中にいいものがあっても、行動として外に出てこなければ能力とは見なさない考え方なのだ。

コンピテンシーの開発(育成)の難易度

 もう1つ、重要と思われる問題として、コンピテンシーの開発(育成・レベルアップ)難易度の問題がある。コンピテンシーには、比較的容易に開発(育成・レベルアップ)のできるものと、先天的、あるいは若い時期に作られてしまい、20歳を過ぎては開発の難しいとされるものがある。この開発の難しいコンピテンシーが適性を考える上での重要な要件になる。

ティータイム:ヒマラヤ登山の隊長に求められるコンピテンシーは?

 本シリーズの第26回の最後に、計5回のヒマラヤ遠征隊に加わり、その中で隊長を3回務めた平井一正氏(神戸大学名誉教授)の、11の項目からなる「リーダのあり方」を紹介した。

 できれば、表1を参照しながら、ヒマラヤ登山の隊長に求められるコンピテンシーがどんなものかを考えてみていただきたい。コンピテンシーという考え方の具体的なイメージの把握ができると思う。なお、11項目のそれぞれが、それぞれ1つのコンピテンシーに対応しているわけではない。

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