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グリーンITで悩む政府〜キモは報われる仕組み作り「環境への影響=CO2排出量−環境貢献」がポイント

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 IDGジャパンは6月24日、同社主催のイベント「GridWorld 2008」を開催。開幕記念講演として経済産業省 商務情報政策局 情報通信機器 課長 住田孝之氏が「グリーンITが創り出す新たな情報経済社会」と題した講演を行い、政府のグリーンITへの取り組みを紹介した。

2025年におけるITによる省エネ効果は5891億kWhで全エネルギーの10%相当

 住田氏はまず、経産省の取り組みは大きく分けて「IT機器の省エネ」と「ITによる省エネ」の2つあると説明。ITによる省エネでは、自動車製造活動とその付帯設備の同期を行うシステムを作ったことで、自動車製造にかかるエネルギーを12%削減したケースや、世界最高レベルの省エネ技術で液晶やプラズマテレビは3年間で30%以上、冷蔵庫は10年で50%以上、エアコンも10年で40%以上の省エネを実現したとした。

住田氏写真
経済産業省 商務情報政策局 情報通信機器 課長 住田孝之氏

 「家電の省エネなどは、まさに日本の技術蓄積がなせるワザだ。ただ、このようなITによるエコの効果をいかに国民に啓蒙していくかが課題だ。2月にグリーンIT推進協議会を発足し、世界との連携も深めている。欧州でも、英、仏、独などで続々とグリーンITに関する会が発足しており、世界規模で大きな流れが出てきている。7月の洞爺湖サミットでそれを加速させたい」(同氏)と語った。

 日本におけるCO2排出量に関しては、「2%vs98%の関係」があると指摘。日本のCO2総排出量12億7500万トンのうち、IT産業の排出量は1.5%。しかし、「ITによる省エネの効果はそのほかの98%の産業に影響している。特に運輸や自動車などの産業への貢献度も大きい。日本ではIT産業の排出量は1.5%だが、どこの国を見てもおおよそ2%程度だ」(住田氏)と説明。しかし、今後IT機器の電力消費量は急増することが予測されており、日本では2025年に現在の5.2倍、世界では同9.4倍と予測されている。

 一方で、IT機器の省エネ効果は2025年で995億kWh、ITによる省エネは2010年時点で1678億kWh、2025年時点で4896億kWhの効果があるため、2025年には省エネに対するITによる削減量は計5891億kWhで、日本の全エネルギー消費量の約10%に当たるとした。世界では、2025年に11兆kWhの削減が見込めるという。

努力した企業が報われる仕組みを作りたい

 続いて住田氏は、現在のグリーンITにおける問題として「3つのトレードオフ」を挙げた。これは「環境と経済性が両立しない」という問題で、「省エネ性能の高い製品へのニーズ」と「製品価格」、「カーボンフットプリントを減らすための技術」と「コスト上昇」、「問題を乗り越えてヒット商品を生み出す」と「売れれば売れるほど生産段階でのCO2排出量が増大する」という3つを挙げた。例えば1点目の場合、環境に配慮して「省エネ性能が高い製品を購入したい」という利用者ニーズがあっても、「省エネ効果の高い製品は開発コストが高くなるために製品の値段が高くなる」というトレードオフの関係ができてしまう。

 最大の問題は3つ目の問題で、例えばA社が努力してCO2排出量が50%少ないエアコンを発売し、大ヒットして前年比2倍の売り上げを達成したとすると、生産時のCO2排出量が2倍になってしまう。しかし、利用者のCO2排出量が50%削減できているので、生産時とユーザー利用時のトータルで考えるとCO2排出量は減るため地球環境には貢献している。その場合、現在の考え方や仕組みではA社は「CO2排出量が前年度比で2倍に増えた」という悪い印象しか与えない可能性がある。また、排出権取引が始まっていたとすると、最悪の場合、他社から排出権を購入しなければならない可能性もある。

 その点について、住田氏は「これでは、地球環境に貢献したA社が報われなくなってしまう。それではモチベーション低下につながるので、頑張った会社が報われる制度にしなかればならない。例えば、『環境へ与えたインパクトを可視化』し、供給者や利用者がエネルギー効率のよい行動をした場合には両者へインセンティブを付与するような仕組みも検討する価値があるだろう。『環境への影響=CO2排出量−環境貢献』とするような仕組みにしたい」と構想段階ながら、環境に貢献した企業や個人がキチンと報われる仕組みを検討していることを明らかにした。

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