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「CIO」という固定観念から、自らを解き放て!進化するCIO像(1)(1/3 ページ)

近年、ますます注目を集めているCIOという職務。しかしCIOの職務領域はあまりにも広く、一般的な定義や説明だけでは、実効性に乏しい。ではどうすべきか──「CIOとは自ら役割を作り上げていくものだ」と語る元セブン-イレブン・ジャパンのCIO、碓井誠が、自らの経験をもとに「これからのCIO像」を提案する

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あいまいなCIO像

 CIOの役割とは何か──ここ数年、ITの活用領域が拡大し、経営におけるIT活用の重要性が高まるにつれて、CIOをめぐる議論が活発化している。併せて、日本版SOX法におけるIT内部統制の在り方や、政府の「情報システムに係る政府調達の基本指針」、行政におけるCIO機能強化といった動きを受けて、CIO機能の設置やその役割の明確化が、企業にとっても大きなテーマとなっている。

 そもそも「CIO」という職務の歴史は、1980年代までさかのぼることができる。当初は情報技術活用やシステム構築・運用のマネジメントが中心的な役割であった。しかし1990年代に入ると、ITの戦略的活用が叫ばれる中、情報化戦略の立案・実行と、これに伴う業務プロセスの改善・改革がCIOの役割として重視されるようになった。最近ではさらに進んで、ビジネスモデルの創出や、将来に向けた事業インフラの整備、構造改革のリーダーシップまで求められるに至っている。

 しかし、世間ではCIOというテーマがこれほど注目されていながら、各企業の内部ではCIOの位置付けやIT部門の在り方について、議論が活発に行われるケースは少ない。企業におけるCIOの実態を見ても、求められるCIO像と、その実像とのギャップは大きい。

 日経情報ストラテジー 2008年3月号「有力企業357社CIO調査」によれば、「全社的な経営戦略の立案や新規事業の開発が中核業務」という回答をしたCIOと、(それらは)「自身の業務に該当しない」としたCIOがほぼ伯仲しているという。

 また、CIOの専任状況では「ほぼ専任」が40.3%で、2006年の36.4%、2007年の34.7%に比べれば伸びはみられるものの、非専任のCIOの方が多い、というのが実情のようだ。さらにCIOの役職として「取締役以上」は38.7%であった。ちなみに2006年は28.3%、2007年は36.6%といった状況である。調査対象の多くが名前の通った中堅企業、大手企業357社であるにもかかわらずである。

 求められる姿と現実に、こうしたギャップが存在するのは何ゆえであろう。1つは数値にも表れているように、各企業において、経営におけるCIOの位置付けや役割が整理されていないとともに、ITの位置付け、活用の段階・レベルも企業によって大きな差があるためである。

 日本企業の特性である縦割り組織の温存指向や、組織ごとの機能定義を行いつつ、業務プロセスの標準化・再構築を進める──すなわち組織に横串を通す「改革アプローチ」が不得手な点も、ギャップを生み出している1つの要因であろう。基本的に、CIOの職務とは部門横断的に働き掛ける横串機能である。縦串組織に横串を通すのは容易ではない。

 しかし、IT革命の成果はあらゆる領域で確実なものとなっており、業務プロセスの横串革新は、もはや避けて通れないテーマである。CIOおよびCIO候補は、自社にITの成果を享受させるべく、時代の流れと経営課題を分析し、業務の改善、改革に向けて、粘り強く努力を続ける必要がある。  こうした中、リーダーに求められる努力とは、まず基本的なセオリーを身に付けたうえで、自社の状況や課題に応じて、最も効果的な取り組みを考案することである。加えて、変幻自在な提案力と、チーム編成力を示すことである。

 では具体的に、CIOとは何を考え、どのように行動すべきなのか──この連載では、私自身がこれまでに学んだノウハウを、実務的かつ具体的な形で紹介したい。私の経験が、できるだけ皆さんの業務に役立つようにと願っている。

経営的視点を持ち、情報システム部をリードせよ

 さて、話を進める前に、まずセオリーの部分を確認しておこう。「CIOのあるべき姿」のイメージは、経済産業省の「CIOの機能と実践に関するベストプラクティス懇談会」や国際CIO学会米CIOカウンシルのITマネジメント改革法に基づく「CIOコアコンピタンス」などで、体系的、論理的に整理されつつあるようだ。参考までに、米政府が定めた「連邦CIO資格証明に必要なCIOコアコンピタンス」を以下に引用してみた。いずれにしてもCIOが決定、実行すべきとされているものは実に多岐にわたっている。

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 ざっと眺めてみていかがだろう。いくぶんITに偏り過ぎてはいないだろうか? CIOは、より経営的、戦略的な領域にウエイトを置くとともに、CIO機能の全体を情報システム部門の組織機能として発揮すべきである。CIO機能の実現はCIO個人としてではなく、チームで課題に取り組み、必要に応じてアウトソーシングやパートナー企業と連携して、機能強化を図ることが重要である。

 では、セブン-イレブンではどのようにCIO機能を形成してきたのか、私自身の経験から振り返ってみたい。

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