SCMは「人間」の仕事です:「もう二度と失敗しない」SCM完全ガイド(3)(2/4 ページ)
SCMの成功と失敗の分水嶺となる計画系業務。需要予測システムをはじめ、支援システムは数あれど、最終的にビジネスを判断するのは人間でなければならない。その理由を解説する
販売計画とは人間の意思が込められたもの
では、次に販売計画について解説しましょう。まず販売計画とは、「何を」「いつ」「いくつ」売るのかという販売組織の“意思”を表すものです。統計予測に人間の判断や意思を込めて、“売りたい数字”として計画する場合もあれば、「今期の必達予算」などから導き出す“販売ノルマ”もあるでしょう。
では、「何を、いつ、いくつ売るのか(売りたいのか)」といった販売計画を立案するうえで、具体的には何ができればいいのでしょうか──「業務上の要件」は、以下のように整理できます。
「販売計画」立案で求められる業務上の要件
- 過去の販売実績を把握する
- 目標予算を明確化し、過去の実績と対比する
- 成り行きだけでどの程度販売できそうか、経験から予測する
- キャンペーンなどイレギュラー要素も数値で把握し、計画に反映する
- 入札や大口特注のような特殊需要も、引き合いから受注まで確実に管理する
1つ補足したいのは、売れる時期、売れない時期など、販売傾向は業界によってクセがあることです。従って、販売計画も業種によってさまざまなパターンがあります。自社のビジネスの形態、業界全体の販売パターンなどを、きちんと理解しておくことは販売計画を立案する際の前提条件となります。
では、こうした販売計画立案をサポートするシステムに必要な要件とは何でしょうか? 業務上の要件を基に、販売計画システムが備えておくべき要件をまとめてみましょう。
「販売計画システム」に求められる要件
- 販売計画数を正確に管理できる
- 過去の数値の修正履歴や修正理由を正確に管理・保持できる
- 分析したいメッシュで、数値を集約・分解できる
- キャンペーンなどイレギュラー時の販売計画も数値に反映できる
- 入札や大口特注のような特殊需要も、引き合いから受注まで確実に管理できる
■受注と販売計画の峻(しゅん)別
どうでしょう? 業務上の要件をサポートする機能があれば最低限それで事足りるということが分かるのではないでしょうか。システムというと、どうしても機能の豊富さに目を奪われがちなものですが、大切なのはあくまで「それを使って何をするか」という目的にあるのです。
この点で気を付けたいのが、前述した「計画」と「実行」業務をきちんと区別して理解できていないゆえの“混乱”です。例えば冒頭の繰り返しになりますが、「販売計画」を「受注情報」と混同している例は数多く見受けられます。つまり「これだけ売りたい」「これだけ売らなければ」といった人間の意思の表れである「計画」が、そのまま「受注」と呼ばれてしまうのです。しかもその受注は、発注元にとって引き取り責任のないものだったりします。
こうした混乱の結果、「この数値は販売計画システムで管理すべきなのか、受注システムで管理すべきなのか」「どの段階で確定受注と見なし、出荷指示につなげるのか」といった点があいまいになってしまいます。にもかかわらず、そのままシステムを構築してしまったため、その機能を生かしきれず失敗してしまう例が多かったわけです。販売計画システムを使ううえでは、その導入以前に、その数値は「計画」上のものなのか、「受注」したものなのか、きちんと識別しておくことが肝心です。
なお、会社の業種業態によっては「引き合い管理」や「価格シミュレーション」「製品構成チェック」などの機能が要求される場合もありますが、これらは販売計画システムだけでは実現できないため、ほかのシステムと組み合わせることを考えましょう。
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