進ちょく管理で実践したいプラクティス:これから始める進ちょく管理(2)(3/3 ページ)
今回は、PMBOKとCMMIという既存の体系が、どのように進ちょく管理をとらえているかを紹介し、工事進行基準が当たり前となるこれからのプロジェクト管理の参考にしたい。
CMMIでの進ちょく管理
CMMIは、決してPMBOKと排他的な関係にあるわけではありません。それぞれの内容を一度でもご覧になった方であれば、定義の範囲や表現方法が異なるものの、類似した項目も多いということを感じられたと思います。
どちらも、国際標準としてより広く利用されることを目指して作成されているものであるため、さまざまな情報を収集して整理していった結果、同じような結論が出ることが多いのは、ごく自然なことといえます。
CMMIでは、大きな4つの大カテゴリ(プロセス管理、プロジェクト管理、エンジニアリング、サポート)と、さらに細かく約30のプロセスエリアと呼ばれる小分類に区分されています。進ちょく管理にかかわりの深いプロジェクト管理に含まれる代表的なプロセスエリアには次のようなものがあります。
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そして、これらのすべてのプロセスエリアにおける活動は、PMBOK同様、定量的な計測・判断が行われていることが前提となります。その方法については、別のプロセスエリアである計測と分析に次の図3のように定義されています。
計測や分析を行うには、「(1)計測目的(の決定)」→「(2)(対象とする)データ定義」→「(3)データ収集手順(の策定)」→「(4)データ保管手順(の策定)」→「(5)データ分析手順(の策定)」といった流れで進めていきます。そして、主観的な判断は排除される仕組みが用意されます(CMMIを導入する企業がそれぞれ独自に定義します)。
「タスクの終了が3日遅れかぁ。これぐらいなら追い付きそうだから、今回はもう少し様子を見るか」のような主観的な判断はNGです。
「データ分析手順」の中で、「3日以上遅れが発生した場合は、上長に報告・相談する」「1日遅れが発生した場合は、担当者の状況を確認し、別の者をアシスタントに付ける」などとすべてに明確な基準を設けて、行動につなげることが求められます。
PMBOK/CMMIと工事進行基準との親和性
PMBOK/CMMIについては、ほんの一部分だけの解説でしたので、全貌(ぼう)を理解していただくには情報が不足していたかもしれません。ただし、いずれもが客観的な事実、定量的な情報、そして客観的な判断に基づいて進ちょく管理が行われるようになっていることは感じられたのではないでしょうか。
ですから、 「工事進行基準が進ちょく管理に変化をもたらす」でも書いたように、もともとこうした既存のプラクティス(実施手順)に即しながら進ちょく管理を実施してきたプロジェクトマネージャにとっては、いままでの活動プラスアルファが工事進行基準対応なのだという程度の違いしかありません。せいぜい、収集データが若干増えるとか、分析結果の行動フローが少々厳密になるとか、その程度の変化で済むはずです。
残念ながら、これまでは主観的なマネジメントで活動してきた(運よく成功してきた)プロジェクトマネージャは、いまからでもPMBOKやCMMIなどの既知のプラクティスを学んでみるとよいでしょう。会計基準だけでなく、こうしたプロジェクトマネジメントについても、ISOはじめ国際標準化団体が積極的に動いています。あなたがマネジメントするプロジェクトだけが、そうした世の中の動きに取り残されていいわけではないのですから……。
筆者プロフィール
高田 淳志(たかだ あつし)株式会社オープントーン 取締役。これまでさまざまな立場(発注企業の情報システム部門、開発元請会社・下請会社)で、さまざまな役割(プログラミングから業務改善コンサルテーションまで)でシステム開発にかかわってきた。現在は、「関係者全員が満足できるマネジメント(手法や体制)ってどうあるべきだろう?」と考える毎日を過ごしてる。
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