WBSを学び、見積もり・進ちょくに役立てよ!:WBSでプロジェクトを成功させる(1)(1/2 ページ)
システム開発プロジェクトがうまくいかない理由の1つにWBSの作成と適用がある。そこで本連載では、WBSをうまく作るコツと、進ちょく管理に利用するコツを紹介していく
日本のプロジェクトマネジメントの現状
現在、日本のシステム開発プロジェクトは多くの場合、品質、納期、コストのいずれの側面も、まだ及第点ではないようです。日本システム・ユーザー協会の「企業IT動向調査2009」によれば、この傾向はここ数年で改善の傾向があまり見られていません。
プロジェクトマネジメントの現状
その1:中規模以上では4割以上のプロジェクトで納期遅れが発生
その2:中規模以上では約3割のプロジェクトで品質に不満
その3:大規模プロジェクトの5割近くでコスト超過が発生
出典:(社)日本情報システムユーザー会 企業IT動向調査2009
こういった状況に、企業も手をこまねいているだけではありません。PMBOKやISO 10006などのプロジェクト管理の方法論を適用し、改善を試みているようですが、劇的に効果が上がった、といった話はなかなか聞きません。
それはなぜでしょうか。
その理由はいくつかありますが、その理由の1つとして、いずれの方法論でも「プロジェクトの分解・構造化(WBSの作成)」という極めて難易度の高い作業がプロジェクトの初期段階で存在しており、その精度によって、プロジェクト管理の結果が大きく左右されてしまうことが挙げられます。
通常のプロジェクト管理の方法論は、
- プロジェクトの分解・構造化(WBSの作成)WBSの作成)
- プロジェクトに必要な全作業の前後関係、平行関係を明らかにする
- 作業スケジュールの作成
- 進ちょく管理
と順を追って進めるのですが、プロジェクトの分解・構造化が非常に難しい作業であるため、WBSの精度が低く、結果として進ちょく管理に大きな影響が出るのです。
そこで、次に問題となるのはプロジェクトをどのように分解・構造化すればよいかということ、すなわち「WBSをいかにうまく作成するか?」ということになります。精度の高いWBSを作成できれば、作業漏れがなくなる、精緻(せいち)なスケジュールが作成できる、見積もり精度の向上など、さまざまなメリットを享受できます。
そもそも、WBSとは?
ここまですでに、WBSという言葉を使いましたが、少しWBSについておさらいをしておきたいと思います。
WBSとは「Work Breakdown Structure」の略で、プロジェクトの作業と成果物を分解、構造化した図表のことをいいます。
具体的には、以下のようなものです。例として「お花見」のWBSを挙げました。
「お花見」というプロジェクトの最終成果を頂点として、それが「計画の作成」「事前準備」「当日運営」「振り返り」という4つの要素に分解され、それらの要素がさらに詳細に分解をされています。
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