BABOKで効果的なソリューションを実現しよう:BABOK 2.0を読んでみよう(3)(2/3 ページ)
BABOKバージョン2を解説する本連載の第3回となる今回は、「エンタープライズアナリシスKA」と「要求アナリシスKA」に続き、「ソリューションのアセスメントと妥当性確認」の知識エリアを紹介する。
最適なソリューションを絞り込み、決定する
それでは、各活動の概要とポイントについて見ていきましょう。
まずは、すでに明らかになっている要求に対して、複数のソリューションの候補の中から最適なソリューションを選び出すために、それぞれの候補を検証し、評価をまとめます。今回の知識エリアでは「提案ソリューションをアセスメントする」というタスクとして定義されています。
ソリューションの候補は、状況によって、システム化の技術選択や業務ルールの変更の仕方、購入品の調達先の選定など、いろいろ考えられます。エンタープライズアナリシスの知識エリアで検討したソリューションのアプローチやスコープに基づき、ソリューションの候補を検討します。
個々のソリューションの候補をどのように挙げるかは、ビジネスアナリシスの対象外となっています。しかし、いずれの場合であっても、「組織やステークホルダーの要求に対して最も価値を提供できるのはどの候補か?」を明らかにするために、検証基準を設けて各候補について検証することがポイントになります。
複数の候補から特定したソリューションについて設計が進む中で、それらのソリューションがビジネスの価値を最大化するように、要求間の整合を保ちながら、元となる要求をいつ、どのような形で実現するかを決定します。今回の知識エリアのタスク「要求を割り当てる」がこれに該当します。
ソリューションとは、現状から何らかの変化を起こし、目指すべき姿へ到達させる手段です。組織の全員がこうした変化を必ずしも歓迎するとは限りません。これまでに比べて大きな負荷、一貫性のないルールやシステム、頻繁に発生するルール変更は、混乱やパフォーマンス低下を生み、向上を目指したはずが、現状よりも悪い結果を生んでしまう、いわゆる“改悪”になってしまうこともあります。
こうした事態を招かないためにも、各要求とソリューションの間のトレードオフ(適正なコストや期待される効果)や実現可能性、適切なリリース順序を検討することがポイントとなります。
組織の受け入れ準備状況を診断し、移行要求を明らかにする
綿密な要求アナリシスの実施、ソリューションの選定によって、素晴らしいITシステムや業務ルール、体制が整ったとしても、実行する組織の人々がその意図や使い方を理解していなかったり、反対勢力がくすぶっていたりすると、そのソリューションは想定した効果を生み出せないことがあります。
そうならないためにも、組織が新しいソリューションの導入に際して、その受け入れ態勢ができているかどうかを検証することは重要な活動になります。
具体的な活動として、今回の知識エリアの「組織の準備状況をアセスメントする」タスクの中に以下のような項目が定義されています。
●社内文化(意識)の評価
- ステークホルダーのグループが本当に変化を望んでいるのか
- ソリューションが実施される理由を理解し、歓迎しているか
●運用面や技術面の評価
- ソリューションは組織にとって有利に働くか
- トレーニングの実施や方針・手続きの定義はされているか
- 要求を満たしたITシステムは配置されているか
●ステークホルダーへの影響分析
- ソリューションが各ステークホルダーへどのくらいの影響を与えるか
- リスクは? 見合うスキルは? 代替手順への柔軟性は?
このように、ITシステムの稼働判定に加えて、ソリューション導入へのリスクを包括的に考慮し、ソリューションが効果的に利用されるかどうかを判断します。
次に、組織の受け入れ準備状況や既存のITシステムの状況を踏まえ、移行期間に必要となる事項を移行要求としてまとめる活動があります。
今回の知識エリアでは、「移行要求を定義する」タスクとして定義されています。現在の組織の状態から、スムーズかつ効果的に新しいソリューションを導入するために、並行稼働の検討や旧システムからのデータ移行、影響を受ける人々へのトレーニングなどを移行要求としてまとめます。
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