要求を引き出し、情報を整理しよう:BABOK 2.0を読んでみよう(5)(1/3 ページ)
BABOKバージョン2.0を構成する7つの知識領域に関して、「引き出し」「要求のマネジメントとコミュニケーション」を解説する。
これまでの連載で、ビジネス分析のための知識体系「BABOK(Business Analysis Body of Knowledge)」のバージョン2.0を構成する7つの「KA(Knowledge Area:知識領域)」に関して、主要なビジネスアナリシス活動と、それを計画・監視する活動について紹介しました。今回は、支援的な活動である「引き出し」および「要求のマネジメントとコミュニケーション」のKAを解説します。
組織から情報を引き出す
ビジネスアナリシス活動を満足に実施するためには、対象となる組織の関係者と協力して、彼らが何を望んでいるかという「要求」を知る必要があります。そのような情報を得るための活動をBABOKガイドでは「引き出し」KAとしてまとめています。図1および表1に、「引き出し」KAのタスク概要を示します。
番号 | タスク名称 | 内容 |
---|---|---|
3.1. | 引き出しを準備する | 「引き出し」を実施するために必要な情報源の調整やスケジューリングを行う |
3.2. | 引き出しのアクティビティを主導する | 関係者が持つニーズにまつわる情報を協力して引き出す |
3.3. | 引き出しの結果を文書化する | 分析に活用するため、関係者から得られた情報を記録する |
3.4. | 引き出しの結果を確認する | 文書化された情報が関係者の問題意識やニーズとマッチしているか確認する |
表1:「引き出し」のタスク |
タスクの名称がとても分かりやすいので、それぞれの大まかな内容やつながりが想像できるのではないでしょうか。タスクの定義こそシンプルですが、ここであやふやな情報しか得られなければ、分析作業がすべて無意味になりかねません。「引き出し」KAの活動は極めて重要なのです。
「引き出し」KAの活動は、単独で実施するのではなく、分析活動や妥当性確認の活動と併せて実施すべきものであるため、ビジネスアナリストが個々の状況に合わせて適切な手段を選択する必要があります。そこで、どのように「引き出し」KAの作業が行われるかを知るために、BABOKガイドで紹介しているテクニック(Technique)を見ていきましょう。
「引き出し」のテクニック
連載第1回で説明した通り、BABOKガイドに記載されているテクニックは、ビジネスアナリストたちによって広く活用されているものです。主な手法を表2に示します。
テクニック名称 | 内容 |
---|---|
ブレインストーミング | あるテーマについて、批判や評価を排した自由な議論を行うことで、多数のアイデアを創発する |
文書分析 | 参照可能なあらゆる既存文書を収集して調査することで、業務情報や課題、ニーズを収集する |
フォーカスグループ | 選別要員で構成された集団に質問することで、個々の意見の共有と議論を通した信頼性の高い回答を得る |
インターフェイス分析 | ソリューション間のインターフェイス部分の識別から、その相互作用についての要求を得る |
インタビュー | 対話形式によって、個人または集団に対して質問することで、業務情報や課題、ニーズを収集する |
観察 | 実際の業務を観察することで、現状の業務内容や問題点、ニーズを収集する |
プロトタイピング | ソリューションの具体的な実現イメージを示し確認することで、関係者からより具体的な要求を得る |
要求ワークショップ | 綿密に計画・構成された、特定テーマに集中した会議体で議論することで、効率的に情報を得る |
調査とアンケート | 不特定多数の人員に対し短期に質問を行うことで、広い範囲の情報を収集する |
表2:「引き出し」に関連するテクニック |
この中で、一般的に用いられる「インタビュー」と「観察」に着目して見ていきます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.