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情報システム部員のための社内営業のススメ特別企画 情シス部員は社内営業しよう(3/3 ページ)

クラウドコンピューティングの登場などによって、SIerや社内情報システム部の存在意義が大きく変わろうとしている。従来の下請け的な仕事では、もはや生き残るのが難しいとも言われている。そこで必要となってくるのが“社内営業力”だ。

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いろいろなスタイルの社内営業とそのポイント

 社内営業のスタイルにもいろいろあり、当然、一概に定義することはできません。

 その人の価値観、キャラクター、考え方、担当者の性格、システムの特性などにより、大きく変わります。ただ、一つだけ共通して言えるのは、いずれにせよ、まずは人間関係の構築からやらなければならない、ということです。

 そこで、最初に皆さんに考えていただきたいことがあります。

 人間関係を築くための「社内営業」とは、何から始めればよいのでしょうか?

 ……。いかがでしょうか。もちろん人間関係の構築にもいろいろなスタイルがあります。いわゆる、正解というものは存在しません。ただし、「人間関係を構築するのは難しいなあ、苦手だなあ」と思っていらっしゃる方であれば、まず下のSTEPを順番に行ってみてはいかがでしょうか。

STEP1:土下座社内営業
STEP2:御用聞き社内営業
STEP3:提案型社内営業

 まず「STEP1」です。最初は聞こえが悪いですが、社内の各部署のキーパーソンに対して土下座営業をしてください。これは情に訴えて人間関係を構築するする社内営業のスタイルです。

 向こうには、特段あなたに会わなければならない理由などないのですから、ここは小細工せず、「なんとか、一回だけでもいいんで……」と、とにかく相手の情に訴えるのが得策です。この時、なんでも良いので「一つでも有益だと思われる情報」を、手土産に持っていってください。

 最近では、土下座営業のようなスタイルは敬遠されがちではありますが、キーパーソンは年配の方が多いので、この営業方法は極めて有効です。大体において、キーパーソンは仕事のできる人です。「提案」や「課題解決」などのキーワードは、すでに聞き飽きています。ストレートに「会いたいんです」と言われれば、好感を持ってもらえるはずです。とにかく下手に出て、感情的に嫌われないことを最も重要視してください。提案を聞いてもらうのは気に入ってもらってからです。

 無事に会うことができたら、とにかく相手に自分の自慢をさせてください。キーパーソンのような人々は、自慢を聞いてくれる相手を心待ちにしています。うまく自慢を聞くことができれば、あなたは相手に気に入ってもらえるでしょう。

 一回でも会ってもらえたら、次は「STEP2」です。御用聞き営業は、定期的にキーパーソンを訪問して、「何か御用はございませんか?」と御用を聞いて回るスタイルです。昔からずっと変わらないスタイルで、古くは富山の薬売りのころから行われています。

 キーパーソンは常に何らかの課題を抱えています。逆に、課題を抱えていない人はキーパーソンではありません。この課題を余さずキャッチできるかどうかが、このスタイルの営業の腕の見せどころです。ただし、キーパーソンは抱える課題を簡単には教えてくれません。

 課題を聞き出すために、時に顧客の雑用を片付け、時に顧客に代わって調整を行うなど、このスタイルのポイントは、特に「何でもある程度こなせる人であるように努力する」点です。去り際には、必ず何でも良いので「宿題はありませんか?」と聞いてください。とにかく、システムの話でなくても依頼されることが大事です。

 江戸時代には「御用聞き」とは、特権を与えられた商人だけに許される名誉ある仕事でした。現在でも、顧客の御用聞きは名誉ある仕事だと思って頑張ってください。

 そして最後は「STEP3」の提案型営業です。ソリューション営業などとも呼びます。提案型営業とは、キーパーソンが抱える課題を見極めて解決策を提案するスタイルのことです。良き相談相手となり、顧客の課題解決に寄与します。

 提案型営業と御用聞き営業はいったい何が違うのでしょうか? 顧客の課題を聞き出すことは共通しています。課題に応じて、宿題をこなすことも共通です。

 本質的な違いは、「提案型営業は、キーパーソンが専門でない分野の提案もする」ことです。キーパーソンの抱える課題は、必ずしも自部門だけで解決できるものではありません。

 広い視野で「キーパーソンのためには何がベストか?」を追求し、情報システムのプロとして、最大限役に立てるように提案をします。これができる人は「提案型営業」を行っていると言えます。

 足繁く御用聞きをしていれば、自ずと情報システムがどの仕事で役に立てるのか、見えてくるはずです。ここまで来ることができれば、あなたは会社のキーパーソンにとって「かけがえのない人物」になっているはずです。時には個人的な依頼やお願いもあることでしょう。

 最後になりますが、この文をお読み頂いているあなたが情報システム部門の長であれば、どうか部門員に社内営業を許可してあげてください。

 これはきっと無駄にはならないはずです。

 あなたが一担当者であれば、ぜひ部門長に社内営業の重要性を訴えてください。部門長は、きっと自分たちの存在意義に危機感を感じているはずです。あなたの提案は上司の心を打つでしょう。頑張ってください。

著者紹介

▼著者名 安達 裕哉(あだち ゆうや)

トーマツ イノベーション株式会社 シニアマネージャ

筑波大学大学院環境科学研究科修了後、大手コンサルティング会社を経てトーマツ イノベーション株式会社に入社。現在、主としてIT業界を対象にプロジェクトマネジメント、人事・教育制度構築などのコンサルティングに従事する。そのほかにもCOBIT、ITサービスマネジメント、情報セキュリティにおいても専門領域を持ち、コンサルティングをはじめとして、企業内研修・セミナー活動を積極的に行う。


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