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BCPに不可欠! 初動対応計画、3つのポイント身の丈BCPのススメ(2)(1/2 ページ)

万一の際にも事業を継続するBCPを成立させるためには、言うまでもなく「事業を行う人の命を守ること」が前提条件となる。今回は、被災時にも確実に人命を守るための初動対応計画について、立案のポイントを紹介しよう。

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東日本大震災が突き付けた首都東京の課題

 2011年3月11日14時46分、東日本大震災が発生した。同時刻、東京都庁では災害即応対策本部が設置され、16時30分には石原都知事による記者会見が行われた。都内の交通機関が軒並み麻痺した。

 17時過ぎ、JR東日本が当日中の運行再開断念を発表。これで一気に帰宅困難者がふくれあがるが、コンビニエンスストア等の災害時帰宅支援ステーション(都との協定に基づき、災害時に帰宅困難者に対し水道水やトイレを無償提供してくれる場所のこと)が立ち上がり、都各局施設、都立学校、区市町施設、合計1030施設が次々と一時受け入れ施設として開放され、9万4001人が利用した。

 また、多くの企業が帰宅を許可し、テレビでは「さいたま市まで7時間かけて歩いてきました」と勇ましくインタビューに答える人の姿が映し出されていたのが印象的だった??。


 このように、時系列で被災直後の動きを追っていくと一見、関東圏では、この大震災に対して総じて問題なく対応できたようにも見える。しかし、一歩踏み込んでこの日に起きた出来事を観察してみると、別の側面があらわになる。

 以下は同日、震災直後に怪我を負った、弊社の取引先に勤務する女性が直面した話である。

ある女性の東日本大震災当日の被災体験

 震災発生時はオフィスにいたのですが、突然、天井からモノが落ちてきて女性の1人が腕を強く打ちました。骨折をしたようでした。本人は激痛で顔をゆがめていました。

 119に電話を掛けて救急車を呼ぼうとしましたが、なかなかつながりませんでした。そして、ようやくつながったと思ったら、「一応受け付けますが、他の重傷者の対応に追われて実質的に対応は無理だと思って下さい」と言われました。

 そこで、自分たちで最寄りの病院へ必死に向かいました。当然、病院までの移動手段はなく、人があふれかえる中、ひたすら歩いて病院へ向かったんです。やっとのことでついた病院も人であふれかえっていました……。


 こうした事例1つを見るだけでもいろいろな問題が浮き彫りになってくる。しかも、あらためて留意すべきは、今回の大震災は東京を直撃したわけではないという事実だ。

 今回、東京を襲ったのは最大で震度5強(江戸川区、足立区、板橋区、荒川区、杉並区、中野区、江東区、千代田区)。向こう30年内に70%の確率で発生すると言われる東京湾北部地震では、東京を震度6弱の地震が襲うと予想されている(南関東地震では震度6強と想定されている)。

 この際には当然、負傷者も増え、多くの道路が閉鎖され、混乱の大きさも今回の比ではないと思われる。内閣府が2008年に公表したシミュレーションによれば、以下の図1のように、「東京湾北部地震が関東を直撃した場合、被災当日は都内からさいたま市への移動だけでも通常の倍近く、すなわち11時間以上かかるだろう」と予想されている。このことからも混乱の大きさが容易に想像できる。

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図1 「東京湾北部地震が関東を直撃した場合、被災当日は都内からさいたま市への移動だけでも通常の倍近く、すなわち11時間以上かかるだろう」と予想されている(内閣府 「帰宅行動シミュレーション結果について/平成20年4月」より)(クリックで拡大)

 こうした事実を踏まえれば、企業は「今回の東日本大震災から見えてきた課題」を真摯に受け止め、来たるべき震災に備えていかなければならないことは、火を見るよりも明らかである。

災害時の初動対応における課題

 ところで、こうした「被災直後における企業の対応の在り方」を示した行動計画を指して、「災害対応計画」や「防災対応計画」「初動対応計画」などと呼ぶ。画一的な呼び方はないが、いずれにしてもその最大の目的は人命保護にあり、避難行動や安否確認、先の帰宅困難者対応を含めた二次被害防止などといった観点についてカバーすることになる。

 企業では「災害に遭遇した際にも、事業を継続できるようにするために策定する行動計画」をBCPと呼ぶが、この人命保護を目的として定めた初動対応の計画は、このBCPの一部となるものだ。そもそも、社員の安全が確保できての“事業継続”であることから、真に役立つBCPを用意する上でも、初動対応計画は非常に重要な位置付けと言える。

 そこで今回は、この「災害時の初動対応計画」における重要な活動のいくつかについて、“東日本大震災からの学び”を紹介したい。

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