前回から上位に変動がないというのは、よく言えばこれまでのサービスが充実しているということだけど、悪く言えば新しいものが出てきていない。ネットバブル以降、みんないろんなやり方を考えたけど、それらは結局、ヒネリはあるにしても95〜98年くらいに生まれたものがベースになっている。
たとえばプロバイダなら、1人加入者を増やすのに相場的には1万円前後かかる。それなら無料という訴求をすればその分お金をかけなくて済む、というのがビジネスとしての考え方で、その分を何らかのビジネスに転換するのが無料というものの本質。前回のこのコーナーで「無料サービスとは結局、広告サービス」みたいなことを言ったけど、「広告のために無料サービスをやる」というビジネスモデルの根本が変わらないと、新しいサービスは出てこないだろう。広告を当てにするのではない、新しいビジネスモデルが出てこないのは残念。有料、無料にかかわらず、最近のネットにはそういうトキメキがない。「○が×を買収しました」「△と□が提携しました」「会員何万人突破しました」なんて、停滞しててつまらない。
ある意味ではネットが実生活に定着してきたんだと思う。これまでは「ネットでビジネス」というのが主流だったけど、いまは「ビジネスにネットを活用する」。これが違いだと思う。ネットで何か新しい仕組みを作ろうとしても、もう出尽くしたのかもしれない。お金が集まらないから、失敗した人がいるから、新しいものが出てこないのかもしれない。
ものすごく基本的なことをやっている人たちがいま、ちゃんとお金を稼いでいて、たとえば僕が役員をやっている会社の健康食品の通販なんてすごく好調だ。変わったことを考えた人たちはどこかへいってしまった。そんな感じがする。
新しいものを作り上げる時代は終わって、ダメなものは退場して、マトモなものだけ残った。次は新しいものを作るのではなく、いまあるものをどう使えばビジネスになるかが課題になる。道具を作る人ばかりいてもしょうがない。すでに出尽くした道具をいかに効率よく、自分のビジネスや、個人なら自己表現や利便性に活用していくかがテーマになる。
たとえば規制や法的、物理的な障害にこそビジネスチャンスがあるわけで、もう少し荒っぽいものが出てくるとおもしろい。僕がやってた「接続料無料」も、いまでこそよくあるけど、当時は荒っぽかったし、だからこそ倒産してもこうやって食っていけるわけ(笑)。2003年の無料サービス部門には、「これが無料かよ!」というような斬新なものが入ってきてほしい。
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