惜しくも前回獲得した年間総合大賞こそ逃したが、総合ショッピング・オークション部門では首位を死守した楽天市場。楽天市場編成部の牛山部長は変わらぬ人気の理由として「ユーザー層の幅広さ」をあげる。グリーティングカードのYnotや無料ホームページCOOL ONLINEの完全子会社化、OCNなどへのショッピングモールコンテンツ提供などOEMの積極化といったビジネス面における活発な動きも、ユーザー層の拡大という、いわば基本的な戦略の一環だという。
「お客さまの層が広がったのを受けて、安さだけでなく素材や産地などにこだわる方が増えた。お客さまの人数が増えれば、それだけ違う切り口が必要になってくる。たとえば専門市場の増加は、そこにこたえるべくサービスを考えた結果」。便利で安いのは当たり前。郊外の大型ショッピングモールが“家族で来て1日中楽しめる”路線を目指すのと同じ道を、楽天もまた歩んでいるようだ。
同ジャンル次点の楽天フリマの5倍近い票数を得て、事実上はオークション部門のダントツトップ。2002年は個人確認の徹底と、有料化に伴う出品手続きの複雑化で物議を醸したが、ユーザー離れは一時的なものに収まったようだ。“ヤフオク”ならではのスリルを求める人々の多さにあらためて驚かされる。しかしながら、スタート時からの売りであったはずの“敷居の低さ”が、システムの煩雑化により失われているようにも見えるのだが……。
複数サイトの商品情報を並べて比較検討。オンラインショッピングのメリットをサービスへと昇華させた価格.com。当部門では前回に引き続き3位をキープと、すっかり上位の常連となった。パソコン関連および家電が中心だが、ADSLに自動車保険、化粧品にブランド品と、ユーザーが価格差を気にするジャンルをピンポイントで押さえているのはさすが。12月にはオークション形式のフリマもスタート。掲示板も好評だ。
いま、eコマースはすごく調子がいい。うちの会社(オン・ザ・エッヂ)でやっているアスキーストアも売れているが、楽天はアスキーと違って一般顧客向けだから、伸び方も尋常ではないだろう。楽天の中にいる人たちがいま最もeコマースのすごさを感じているのでは?
なぜ好調かというと、1回でも利用すればその便利さにハマってしまうから。2002年は常時接続のユーザーが増えたが、ADSLなら写真の多いショッピングサイトも一瞬で表示されるし、好きな時間に買い物できる。PCも速くなった、回線も速くなった、常時接続になった、となると、主婦や自由業の人は楽天をずっと見ている。カタログショッピングと同じノリで、そのうえカタログより商品数が多く、売れ筋や流行商品も押さえている。それらを客引きに使っていたりするから格安で買える。僕は家電を買うにも量販店へ行くのは面倒になった。ネットなら価格を全部比較して最安値で買えて、ポイントも付く。しかも届くのが早い。僕みたいな買い物が趣味でもない人がわざわざ街で買いたいものってほとんどない。ネットで十分。
楽天の弱点は決済やサポートがテナントごとなので、「楽天で買えば安心」というようなブランド力に欠けること。たとえばAmazonのような、統一感のあるユーザーインタフェースを整えて、買う側に安心感を与える方がスマートなんじゃないかな。楽天で買うのは町の個人商店で買うようなイメージで、正直いって不安なこともある。考えてみると、価格検索やショップリンク集を備えていれば、ショッピングポータルは楽天である必要はない。価格.comなら登録料はいらないし、ユーザーは価格が比較できればよくて、楽天も価格比較にしか使っていない人も多い。なぜみんな楽天へ行くのかというと、店がたくさん登録されていて価格比較に便利だから。現在の価格.comは登録店舗数が少ないのがネックだけど、店舗数が増えてブランド力が上がってくれば、価格.comの方が出店する側もトク。価格.com的なビジネスモデルには、僕自身すごく興味がある。2003年あたり、うちでもやろうかな。
楽天はこれからも伸びるだろう。ただ、このままずっといくかというと、そうでもない気がする。「本ならAmazon」みたいに、もっと専門的なサイトの方が今後は伸びていくのでは? あと伸びそうなのは中古のeコマース。もっと認知されればブレイクすると思う。まあ、Yahoo!オークションですでにブレイクしているともいえるけど。ただ、これらは確実に価格破壊、デフレを進行させるだろう。もしかするとわれわれは、禁断の実を食べてしまったのかもしれない。