最近、これまで付加サービスとして提供されていたIP電話を、ADSLコースの標準サービスとして提供するプロバイダが増えている。現在、ADSLとIP電話のセットコースを提供する主なプロバイダは下表の通り。これ以外にも「時期は未定だが、導入は検討している」(ASAHIネット)というプロバイダも少なくない。
このコースの最大の特徴は利用料。これまでのようにADSLとIP電話に別々に申し込むよりも、初期費用や月額利用料が安くなるのだ。たとえば@niftyでは、8月より「ADSLハイスピードコース」(他社の24/26Mコースに相当)と「ADSLスタンダードコース」(同12M)、「フレッツ・ADSLコース」にIP電話サービス「@niftyフォン」を標準で付加。月額3280円から(従来の12MサービスとIP電話オプションの利用料の合計は3660円)、ADSLとIP電話を利用できるようになる。
さらにユーザーの利便性も向上する。
「セットコースのユーザーには、IP電話機能を搭載したADSLモデムを提供しています。ADSLモデムに別途IP電話アダプタを追加するオプションコースよりも設定が簡単になります。しかも利用料も安くなる。使い勝手は格段によくなるはずです」(ニフティ常務取締役システム事業部長・加藤雄一氏)
また、セットコースはIP電話の普及を促進する可能性も秘めている。KDDIプロダクト統括部の菅 雅道氏は、いち早くIP電話をADSLの標準サービスにしたYahoo! BBを引き合いに出し「BBフォンが好調なのは、ADSLに加入すれば使えるという手軽さがあるから。ならば、DIONでも同価格帯で提供すればユーザーにIP電話をもっと使ってもらえるようになるはず」と語る。
IP電話のユーザー数の増加はプロバイダやIP電話事業者だけでなく、ユーザーにとっても大きな意味がある。ご存じの通り、IP電話は同じサービスのユーザーどうしなら無料通話できる。だが現在は、IP電話の加入件数自体が少ないため、このメリットを享受できているのはほんのひと握りのユーザーだけ。しかし、IP電話がADSLとセットになっていれば、当然、ユーザーは増加し、無料通話先も増えることになる。
一般加入電話からIP電話への着信、携帯電話や110番、119番への発信などの課題は残すものの、セットコースの登場で、割安で、かつ簡単に導入でき、しかも無料通話しやすくなったのは事実。そろそろIP電話の利用を本格的に検討してもいい時期になったのは間違いないようだ。
●一般電話からIP電話への着信 現在、050で始まるIP電話専用番号へダイヤルできるのはIP電話だけ。つまりIP電話どうしでしか050番号は利用できない。これを受け、NTT東西は8月8日、総務省に一般加入電話からIP電話への着信を可能にする認可申請を行った。最短で10月ごろから接続が可能になる見込みだ。
●110番、119番への発信 IP電話は110番や119番などの緊急回線に非対応。ユーザーは一般加入回線経由で通話することになる。「技術的な側面よりも法制上の側面が大きい。携帯電話がそうであったように、IP電話が普及すれば法律、制度が見直される可能性もある」(ニフティ・加藤氏)
●携帯電話やPHSへの発信 多くのIP電話は携帯電話やPHSへの発信ができない(BBフォンを除く)。これは料金体系上の問題が大きい。携帯電話・PHSに発信する場合の通話料は通信会社によってまちまち。距離や相手先による料金のバラツキを抑えたいIP電話事業者にとって、この価格差がネックになっている。
ニフティ 常務取締役システム事業部長 加藤雄一氏 「IP電話対応モデムは設定が自動で行われるので、よりユーザーにやさしいサービスとして使えるはず」
KDDI プロダクト統括部 インターネットグループリーダー課長 菅 雅道氏 「これまでセットコースとオプションコースを用意していたが、セットコースへの反響が大きかったので、24Mではセットに一本化した」