「最新版(最終fix)-営2課版b-ver3」といった名前のExcelファイルが乱立し、どの数値が正しいのか、どれが最新版なのか分からない──。多くの企業で予実管理のような業務にExcelやGoogleスプレッドシートのような汎用ソフトが用いられていますが、その運用に限界を感じている人も少なくありません。
関数やマクロを駆使した管理表は一見すると機能的でスマートに見えます。しかし、その実態は属人化しやすく、手作業による入力ミスや集計の手間、リアルタイム性の欠如といった数々の課題を内包しています。
本記事では、なぜExcelでの予実管理は限界なのか、その構造的な欠陥・課題を明らかにするとともに、予実管理システムの導入がもたらす単なる業務効率化に留まらないビジネス上のメリット、課題解決に向けた具体的なステップを解説します。併せて紹介するおすすめ製品とともに、データに基づいた迅速な経営判断を実現するための第一歩を踏み出しましょう。
機能で比較「予実管理システム」おすすめ製品一覧
目次
なぜExcelでの予実管理は限界なのか? 現場で起きている5つの課題
「初期導入コストが低く、習熟しやすい」という理由で長年の定番オフィスツールであるExcelですが、昨今の現場ではいろいろな課題も声高に叫ばれるようになっています。“最新版(最終)ver.3”といったファイルが乱立する「バージョン管理地獄」など、多くの企業が経験するExcel手作業ベースでの予実管理のよくある課題シナリオは以下の通りです。あなたの会社はいかがでしょうか?
シナリオ1:ファイルの属人化とブラックボックス化
特定の担当者しかメンテナンスできない、複雑な関数やマクロが組まれた「秘伝のタレ」のようなExcelファイルは、その担当者が異動・退職した瞬間にブラックボックス化します。仕様を理解できる人が誰もいなくなり、修正や改善が不可能になるというリスクです。
シナリオ2:手作業による集計・入力ミスと、その手戻り
各部門から集めた複数のExcelシートを1つのマスターファイルに手作業でコピー&ペーストする。こうした作業では、参照セルのズレや数式の破損といったヒューマンエラーが必ずと言っていいほど発生します。数値のズレを発見するための確認作業と手戻りに、膨大な時間が奪われます。
シナリオ3:リアルタイム性の欠如による、意思決定の遅延
各担当者がローカルのPCにファイルを保存しているならば、経営層や管理職は、担当者がデータを更新・提出するまで最新の状況を把握できません。実績の集計が終わるのが翌月半ばといった状況では、予実差異の原因分析や対策の実行が遅れ、経営判断のスピードを著しく低下させます。
シナリオ4:脆弱なセキュリティと情報漏洩リスク
Excelファイルはパスワードを設定できるものの、コピーやメールへの添付が容易であるため、重要な経営データや売上情報が社内外に流出するリスクを常に抱えています。誰がいつファイルにアクセスしたかの履歴も残しにくく、情報管理の観点から非常に脆弱です。
シナリオ5:複雑すぎる関数・マクロのメンテナンス問題
運用を続けるうちにシートや項目を追加した結果、関数やマクロがどんどん複雑化し、少し修正しただけでファイル全体が正しく動作しなくなることがあります。もはや誰もそのロジックを理解できず、軽微な修正すらできない「アンタッチャブルな(触れない)ファイル」と化してしまいます。
Excel予実管理の構造的な3つの欠陥
なぜExcelでの予実管理に課題が多く発生するのでしょうか。その背景にある、Excelが持つ構造的な3つの欠陥を解説し、システム化の必要性を論理的に説明します。
- 「複数人での同時編集」が考慮されていない
- 「データの一元管理」が極めて困難
- 「プロセス管理(ワークフロー)」の機能がない
欠陥1:「複数人での同時編集」が考慮されていない
Excelは本来個人がPC上で利用するための表計算ソフトで、原則として複数人が同時に1つのファイルを編集するようには設計されていません。
ファイル単体をメールなどでやりとりすれば前述した「最新版(最終)ver.3」のようなコピーファイルが増殖されがちですし、クラウドサービス/共有サーバ上でファイルを運用しても「他の人が編集中で開けない」「誰かが間違って上書き保存してしまった」といったトラブルが発生することがあります。
欠陥2:「データの一元管理」が極めて困難
各部門が個別のExcelシートで予算と実績を管理している場合、それらのデータを一元管理することは困難です。ファイルのフォーマットが統一されていなかったり、勘定科目の名称が微妙に異なっていたりするだけで正確な集計はできなくなります。
欠陥3:「プロセス管理(ワークフロー)」の機能がない
予実管理には、「予算の作成→申請→承認→実績の入力→差異分析」といった一連の業務プロセスが伴います。Excelにはこうしたワークフローを管理する機能がないため、「誰が、いつまでに、何をすべきか」という進捗把握や催促は、別途ファイルへのコメント、メールや口頭でのアナログなコミュニケーションに頼らざるを得ません。
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「脱Excel」がもたらす経営上のメリットとは?
予実管理システムの導入は、有力な解決手段の1つです。単なる業務効率化に留まりません。「過去の分析」から「未来の予測」まで、企業の意思決定を高度化する、より戦略的な視点で予実管理システム導入のメリットを解説します。
- 月次決算の早期化と業務効率向上を図れる
- 予実差異の原因分析とアクションの迅速化が見込める
- 精度の高い着地見込み予測と経営計画のシミュレーションが可能になる
メリット1:月次決算の早期化と業務効率の向上を図れる
各部門がシステムに直接実績を入力し、データが自動集計されるため、手作業による集計や転記作業が不要になります。担当者の作業負担を軽減し、月次決算を早期化することで、より迅速な経営状況の把握が可能になります。
メリット2:予実差異の原因分析とアクションの迅速化が見込める
予算と実績の差異がリアルタイムで可視化され、ドリルダウン機能などでその原因を詳細に分析できます。「なぜ目標を達成できなかったのか」を迅速に把握し、次の一手を打つまでの時間を大幅に短縮します。
メリット3:精度の高い着地見込み予測と経営計画のシミュレーションが可能になる
多くの予実管理システムは、最新の実績と今後の見込みを反映し、年度末の着地見込みを高精度で予測する機能を搭載しています。また、複数の事業計画シナリオを作成し、将来の経営の動きをシミュレーションすることも可能です。
この1ページで解決!予実管理システムの主な機能、メリット/デメリット、選定ポイントを徹底解説
自社に合ったシステムの選び方 3つのステップ
予実管理システムの導入を成功させるための、具体的な選定ステップを解説します。
STEP1:導入目的の明確化(特化型か、ERP連携型か)
まず、「Excelからの脱却と業務効率化」が主目的なのか、それとも「販売管理システムや会計システム、あるいは基幹のERPシステムと連携した全社的なデータ活用」まで目指すのかを明確にします。それによって予実管理に特化したツールを選ぶべきか、ERPの一部として導入すべきかが変わってきます。
STEP2:必須機能の洗い出しと操作性の確認
自社の課題を解決するために必要な機能(例:複数部門に対応した予算作成機能、プロジェクト別の予実管理機能など)をリストアップします。その上で、現場の担当者でも直感的に操作できるか、無料トライアルなどを活用して確認することが重要です。
STEP3:サポート体制とセキュリティ要件のチェック
導入時のデータ移行や初期設定を支援してくれるか、運用開始後の問合せに迅速に対応してくれるかなど、ベンダーのサポート体制は必ずチェックしましょう。また、企業の重要な経営データを扱うため、アクセス制限などのセキュリティが自社の要件を満たしているかも確認します。
こちらも一緒にチェック!「ERP」で何ができるのか? 何が変わるのか? 導入メリット・デメリットと選定方法 おすすめERP製品比較
【目的別】Excelからの脱却を支援する予実管理システム5選
企業の多様なニーズに応える予実管理関連のシステムを厳選して紹介します(製品名 abcあいうえお順/2025年7月時点)。
このほかにもおすすめの製品があります。搭載機能や特徴、評価/口コミ数などで絞り込み/並べかえができる「おすすめ予実管理システム一覧&検索&比較コーナー」をぜひお試しください。またITセレクトでは、IT製品・サービス選定に詳しい専門スタッフに聞ける「ITセレクトのコンシェルジュ相談サービス(無料)」も用意しています。こちらもぜひご活用ください!