
電子帳票システムとは、請求書や見積書、納品書などの帳票を電子化し、一元管理するシステムです。従来は紙で行われていた帳票管理をデジタル型/システム上で行う行程に刷新することで、作業を効率化し、確実性をグッと高め、そしてコストの削減が可能になります。2024年1月に改正された電子帳簿保存法への対応ニーズとともに導入企業が急増しています。
今回は帳票の電子化を推進したい企業に向け、電子帳票システムの概要と種類、導入のメリットや注意点、おすすめのクラウド型電子帳票システム/製品(全16製品/2025年6月時点)をご紹介します。
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電子帳票システムとは?
電子帳票システムは、請求書・見積書・納品書などの帳票を電子化し、作成・管理・送付・保存をオンラインで一元化するITツールです。紙やFAXによる手間やコストを削減しつつ、業務効率化と信頼性の両立を実現します。
主な特徴は以下の通りです。
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帳票作成/テンプレート化:取引先情報をもとに自動で請求書や見積書を生成できます。
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一元的な管理と検索:クラウドまたは社内サーバで帳票を統合管理し、全文検索/柔軟かつ即時の情報検索が可能になります。
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帳票配信:メール送信・URL配信・クラウド連携によるダウンロード形式でスムーズな帳票共有が可能。
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紙の帳票デジタル化(OCR・スキャナ保存):紙の請求書や領収書も電子化し、帳票を統一したフォーマットで保存できます。
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アクセス制御とセキュリティ:二段階認証やアクセス権管理などにより機密データも安心保存できます。
電子帳票システム導入の効果
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業務効率化とコスト削減:帳票の作成・保存・検索・送付が一括管理できるため、紙・印刷・郵送コストを大幅に削減できます。
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法令対応強化:「電子帳簿保存法」に対応したシステムなら、タイムスタンプや訂正履歴など、法定要件をクリアできます。
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テレワーク・DX促進:クラウド型を選択すれば、出社不要・24時間365日どこでも帳票管理が可能となり、働き方改革・DX(デジタルトランスフォーメーション)に貢献します。
オンプレミス型/クラウド型の違い
提供形態 |
特徴 |
向いている企業 |
オンプレミス型 |
自社サーバ構築。高度なカスタマイズ性・セキュリティに対応可能。だが初期導入・保守に高コストがかかる |
法規制や社内規約で外部サーバ利用が難しい企業 |
クラウド型(SaaS) |
初期費用が抑えられ、短期間で導入可能。自動アップデートや拡張性にも優れる |
中小企業やテレワーク環境で柔軟に運用したい企業 |
現在はクラウド型の成長が著しく、特にバックオフィス・経理領域では採用が広がっています。
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電子帳票システムの主なメリット
電子帳票システムは、業務効率化だけでなく、コスト削減や法令対応にも直結する多くの利点があります。ここでは主なメリットを4つに分けて紹介します。
- 帳票業務の作業時間を大幅に削減できる
- コスト削減とペーパーレス化が同時に進む
- 正確性と検索性が向上する
- 電子帳簿保存法やインボイス制度への対応が進めやすい
帳票業務の作業時間を大幅に削減できる
帳票の作成・送信・保存・検索などの一連の作業が自動化され、手作業の負担を軽減できます。たとえば、テンプレート化された帳票発行機能を活用することで、1件あたり数分かかっていた作業が数十秒に短縮されるケースもあります。
コスト削減とペーパーレス化が同時に進む
印刷代・封筒代・郵送費といった帳票関連のコストを削減できます。帳票を電子化することで、紙保管スペースの確保や管理にかかる間接コストも削減され、ペーパーレス推進による環境配慮にもつながります。
データの一元管理で正確性と検索性が向上する
取引先別・月別などの条件で帳票を瞬時に検索できる機能があるため、情報確認・修正・再送もスムーズ。重複登録や記載ミスも減少し、内部統制や監査対応にも効果的です。
電子帳簿保存法やインボイス制度への対応が進めやすい
改正電子帳簿保存法に準拠した保存・管理機能(タイムスタンプ・履歴管理など)を持つシステムであれば、税務調査時の対応がしやすくなります。適格請求書(インボイス)対応も含め、法令遵守の体制整備を強力にサポートします。
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電子帳票システムの導入が効果的な企業の特徴
以下のような課題を抱えている企業には、電子帳票システムの導入が特に効果的です。
① 帳票の発行・配布業務に時間がかかっている
紙の帳票を手作業で作成・封入・郵送している企業では、帳票業務の工数が膨大になりがちです。電子化により作業が自動化され、人手不足の解消にもつながります。
② 取引先が多く、帳票の誤送信リスクがある
顧客・仕入先が多岐にわたる場合、帳票の手動管理ではミスが起きやすくなります。電子帳票システムは一元管理と自動配信により、誤送信や重複送付を防止します。
③ 紙帳票の保管・検索に課題を感じている
帳票の物理保管スペースが不足していたり、必要な情報がすぐに見つからない状況があるなら、電子化による検索性・保存性の向上が大きなメリットになります。
④ インボイス制度・電子帳簿保存法に備えたい
2024年以降のインボイス制度や電子帳簿保存法の改正に伴い、帳票データの要件保存が求められています。電子帳票システムはこれらの法制度へのスムーズな対応を支援します。
電子帳票システムを選定する際のチェックポイント
電子帳票システムの選定にあたっては、以下のような観点で比較検討することが重要です。
- 必要な帳票種別に対応しているか
- 他の業務システムとの連携が可能か
- セキュリティ・権限管理は万全か
- 法令対応・帳票保存要件を満たしているか
- UI/UXやサポート体制の充実度
必要な帳票種別に対応しているか
見積書・請求書・納品書・注文書など、日常的に使用する帳票の種類に対応しているかを確認しましょう。また、カスタム帳票作成の柔軟性も比較ポイントです。
他の業務システムとの連携が可能か
販売管理システム、財務会計ソフト、人事・ERPとの連携機能を確認してください。データの一元管理が実現すれば、業務全体の効率が大きく向上します。
セキュリティ・権限管理は万全か
電子帳票には機密性の高い情報が含まれるため、ユーザーごとのアクセス権管理や、暗号化通信、操作ログの記録といったセキュリティ機能の有無を確認しましょう。
法令対応・帳票保存要件を満たしているか
電子帳簿保存法・インボイス制度に準拠しているか、タイムスタンプ・検索要件・操作履歴の保持などが整っているかを事前にチェックすることが必要です。
UI/UXやサポート体制の充実度
実際に操作する社員のITリテラシーに配慮し、直感的な操作が可能なインターフェースかどうかも確認しましょう。また、トラブル時のサポート体制も比較検討すべきです。
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電子帳票システムの選び方と注意点
電子帳票システムは、外部とのお金の流れを管理する重要な役割を担うシステムです。数あるシステムの中から最適なものを選ぶために、まず「導入検討前」にシステム導入の「要件」をしっかりと定義しましょう。参考として、要件として挙がる例の多いポイントを以下に示します。
- セキュリティとプライバシー保護
- スケーラビリティと柔軟性
- 日本語サポートとローカライゼーション
- 使いやすさとトレーニング体制
- コストと効率性
(1)セキュリティとプライバシー保護
セキュリティとプライバシー保護は、企業として重視すべき観点です。重要なデータを扱う電子帳票システムは、機密情報や個人情報を保護し、コンプライアンスに対応できる機能が必要です。データの暗号化、アクセス制御、監査機能など、セキュリティとプライバシー保護を強化する機能が備わっているのかを優先して確認しましょう。
(2)スケーラビリティと柔軟性
電子帳票システムは、企業規模に比例して扱うデータが増加します。企業の成長に合わせてシステムを拡張できなければ、帳票処理にトラブルが頻発することにもなりかねません。システムを選定する際には、企業規模の拡大に対応できるスケーラビリティやカスタマイズ性があるか、柔軟性に注目しましょう。システムそのものの改修を行わなくても、既存のシステムとの連携や統合機能に優れていると企業の変化へ柔軟に対応しやすくなるでしょう。
(3)日本語サポートとローカライゼーション
海外に拠点を持ち、グローバルビジネスを展開する企業ならば、多言語対応している海外製ツールの利用も視野に入るでしょう。海外製ツールは多機能である一方、日本語に対応していないものもあります。また日本の法律や規制に適応できるようなカスタマイズへの対応もシステム選択の要件となります。システムを選定する際には導入企業の拠点となる言語や法律に適応しているかを確認しましょう。
(4)使いやすさとトレーニング体制
システムの使いやすさは、電子帳票システムを効果的に利用するうえで大切な要素です。従業員が短期間で操作方法を習得できるほどに使いやすいツールは導入期間が短く済み、利用開始後も操作ミスによるトラブルを減らすことができます。トレーニング資料やトレーニングプログラムの提供に力を入れているベンダーを選べば、導入のプロセスをスムーズに進められることが期待できます。
(5)コストと効率性
システムを選定するうえで、導入にかかるコストも重視したい要件です。初期費用、月額費用、保守費用など、システムによってかかるコストは異なるため、費用対効果を念頭においた選定を進める必要があります。必ずしも高コストのシステムが自社にあっているとは限りませんので、自社に必要な機能を満たし、コストにあったシステムを選択しましょう。
「電子帳票システム」の導入事例
近年、電子帳簿保存法の改正などに後押しされ電子帳票システムの導入が急激に進んでいます。ここでは電子帳票システムを採用して課題を解決した企業の導入事例をご紹介します。
中小企業向け「電子帳票システム」の導入事例

メンタルヘルスや医療サービスを展開する株式会社フィスメック。顧客に提出するストレスチェック調査票は帳票をベースに発行していました。取引先企業数が20倍、利用者数が10倍という顧客数の爆発的な増加にともない、ストレスチェック調査票の出力数が急増、従来のシステムでは追いつかなくなる課題が発生しました。
そこでクラウド型電子帳票システム「Create!Form」を導入したところ、帳票の作成速度が飛躍的に向上。これまで帳票1000枚の出力に1時間を要していたところ、10分の1である5分程度までの時間短縮を実現しました。帳票の作成速度が向上したことによりストレスチェック調査票の発行速度も向上し、人件費削減や社員の負荷減少にもつながっています。
大企業向け「電子帳票システム」の導入事例

音響機器・楽器・自動車用品などの販売製造大手のヤマハ株式会社は、2016年のシステム移行をきっかけに、見積書発行システムを刷新する必要がありました。
営業支援システムのSalesforceと連携可能な電子帳票システムの中からOPROARTSを採用。約3カ月と短期間で導入しましたが、Salesforce上のデータとの連携を実現し、従来と変わらないフォーマットの見積書の自動作成に成功しました。
「電子帳票システム」に関する最新トピックス、技術動向
近年、電子帳票を取り巻く環境は法改正や新制度の導入、最新技術の利活用により大きく変化をしています。利用者側は最新情報をキャッチし、適切に利用できるような心がけをするのが望ましいでしょう。
「電子帳票システム」に関する最新法律動向
2023年10月1日にインボイス制度がスタートしました。適格請求書発行事業者が発行した適格請求書(インボイス)のみ消費税の仕入税額控除が認められるようになり、事業者別の請求書管理や税率ごとの管理が重要になりました。
2024年1月に改正電子帳簿保存法への対応が義務付けられました。具体的には、取引先との間で取り交わした電子帳票は、電子データとしての保存が義務化されます。検索性を確保した保存も求められるため、電子帳票システムでの管理が重要となっていきます。
その他、電子帳票類には、電子署名法、e-文章法など多くの法律・法令が関係してきます。それらに正しく対応できる電子帳票システムが重視されています。
「電子帳票システム」に関する最新技術動向
電子帳票システムの多くは、「導入後」もさまざまなアップデートが行われ、進化していきます。前述した改正法などへ対応する機能のほかに、例えば、データの取り込みや分類にAI(Artificial Intelligence:人工知能)を用いた高精度化機能、作業の自動化をより進める機能などが追加されています。
また、データ保護のためのセキュリティ機能も進化を続けています。定期的なデータの自動バックアップ機能、通信の暗号化をはじめ、アクセス制限の強化や厳格な権限管理といった機能はほぼ標準装備となるシステムが増えています。
「電子帳票システム」と類似するIT製品
電子帳票システムの他にも、社内業務を電子化・自動化・効率化するツールには多くの種類があります。電子化で効率化となると、ITシステムの一般的なカテゴリーとして「請求書発行システム」「経費精算システム」がよく挙げられます。これらと電子帳票システムはどんな違いがあるのでしょう。参考までに簡単に解説します。
請求書発行システムは、請求書発行にかかる業務を自動化・効率化するためのシステムです。取引関連のデータを基に請求書を自動で発行し、取引先への送付や入金状態の管理などを行います。請求書発行業務における漏れや誤りの防止と業務の効率化が期待できます。
経費精算システムは、従業員への仮払いや経費精算の申請、承認の業務を効率化するシステムです。従業員の経費精算作業を「楽」にするとともに、経費承認フローの構築と迅速化、不正申請の防止、「会計システム」への連携機能などで経費精算まわりの業務を確実に、かつ効率化します。「請求書まわりの業務」「経費精算まわりの業務」に特化し、主に「社内・内部向け」の機能もあることに若干の違いがあります。
また、電子帳票も、請求書発行も、経費精算のシステムもまとめて統合する基幹業務パッケージ「ERP」もあります。「特化型」か「統合型」か、導入プロジェクトの規模や予算、自社のニーズに応じて、製品やベンダーと相談しながら選択していくとよいでしょう。
電子帳票システムを導入し、効率アップと法令への対応を両立させよう
電子帳票システムは、煩雑になりがちな社外との帳票のやりとりを自動化・効率化できます。すでに施行されたインボイス制度や義務化を間近に控えた電子帳簿保存法の改正対応など、法令遵守のためにも欠かせないシステムです。
対応できる帳票の種類や枚数など、システムによって機能に違いがありますので、適切なコストで自社が求める機能を自動化できる電子帳票システムを選び、作業の効率化と安全性を高めましょう。
「自社に合うIT製品・サービスが分からない」「時間をかけずに効率的にサービスを検討したい」というご担当者様は、ぜひITセレクトのコンシェルジュサービス(無料)までお問い合わせください。適切なIT製品・サービスのご紹介や各種資料を分かりやすくご提供します。
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