企業の競争力強化や業務効率化を目指す中で、ERP(Enterprise Resource Planning)の導入が注目されています。特にクラウド型やSaaS型のERPは、柔軟性と拡張性から多くの企業に採用されています。
ERPとは、企業の情報資源を一元管理し、業務プロセスを効率化する基幹業務システムです。製造、販売、人事、会計など多岐にわたる部門の情報を管理し、リアルタイムにデータを共有することで、企業全体の運営を効率化します。特にクラウド型/SaaS型の製品を中心に、市場規模が年々、しかも急速に拡大しています。
なぜERPおよびクラウド型製品の需要が高まっているのでしょう。本記事では、世界および日本におけるERP製品のシェア率と市場規模、導入のビジネスメリットから、あなたの会社に向くクラウド型ERP製品選びのポイントを詳しく解説します。

目次
ERPの市場規模
調査会社 矢野経済研究所の調査結果「ERP市場動向に関する調査を実施(2023年)」によると、ERPの2022年国内市場規模は前年比10.9%増の1406億円、2025年には1797億円規模に拡大すると予測されています。
また、Apps Run The Worldの調査資料「Top 10 ERP Software Vendors, Market Size and Market Forecast 2023-2028」によると、世界のERP市場規模は2023年に1242億ドル(約19兆6000億円/2024年7月時点換算、以下同)、2028年までに1482億ドル(約23兆4000億円)規模に達する見通しです。
出典:「Top 10 ERP Software Vendors, Market Size and Market Forecast 2023-2028」(Apps Run The World)
ERPの国内市場規模は、国が警鐘を鳴らす「2025年の崖」も踏まえた社会のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の意向とともに急速に拡大しており、今後も大きな成長が見込まれています。
「2025年の崖」とは
2025年の崖とは、日本で「DX(Digital Transformation)の停滞」による業務効率や競争力の低下、経済的損失について経済産業省が警鐘を鳴らす意味で用いた言葉です。端的には、企業が老朽化やブラックボックス化した既存システムを使い続けることで、DX推進の足かせになったり、運用や保守の負担が増大したりするリスクを指しています。
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DXを実現できなければデジタル競争に勝てず、既存システムをDXに向けて刷新できなければ人手不足、セキュリティ、事業継続性などのリスクが増え、維持管理費の高騰・圧迫を招き、2025年以降に経済損失が年間12兆円規模にまで拡大する可能性がある──というものです。
この課題を解決するために、また、デジタル化の成果を他社・ライバル社に先駆けて出していくために、ERPを含めて情報、業務やタスクのデジタル化/DXを推進するIT製品によって、またDXをより促進できる新たなシステムへ刷新することで挑む企業が増えています。
日本/世界のERP製品シェア率
各ベンダーのシェア率を理解し、広く使われているのかを知っておくことでERPが選定しやすくなります。
ここからは、国内外の主要ERPベンダーの市場シェアとその特徴について解説します。
ERPの世界シェア

ERP製品ベンダーの世界シェア(2023年)/出典:「Top 10 ERP Software Vendors, Market Size and Market Forecast 2023-2028」(Apps Run The World)
2023年の世界ERP市場でのシェア率は、Apps Run The Worldの2023年調査資料「Top 10 ERP Software Vendors, Market Size and Market Forecast 2023-2028」によると、SAPが6.2%、Oracleが5.0%、Intuitが4.5%。グローバル展開力と業種対応力が評価され、これらベンダーが市場をリードしています。
SAP
SAPは2023年時点、ERP市場で世界最大のERPベンダーと位置付けられ、主に大企業向けのERPを提供しています。
グローバル拠点を含めた情報の一元管理が可能で、多言語・多通貨対応、各国の商習慣や税制度にも対応可能です。
Oracle
Oracleはクラウドに注力していて、グローバル企業に適したOracle NetSuiteと、複雑なワークフローを持つ企業に適したOracle Cloud ERPの2種類のクラウドERPを提供しています。
クラウド技術と組み合わせて、効率的な業務運営をサポートします。
Intuit
Intuitは主に中小企業向けのERPをアメリカを中心に展開しています。
使いやすい操作画面と豊富な機能により、会計管理を中心に在庫管理や給与計算なども効率的に行うことができます。
ERPの国内シェア
2023年時点の国内シェアはノークリサーチの調査資料「2023年 中堅・中小市場におけるERPの社数シェアと有力な差別化ポイント」(2023年10月)によると、SMILEシリーズ(大塚商会)が37.0%、GLOVIA smart(富士通)が28.8%、SAP ERPが26.0%。これらが多くのシェアを獲得しています。
- SMILEシリーズ(大塚商会)(37%/複数回答可、以下同)
- GLOVIA smart(富士通)(28.8%)
- SAP ERP/ SAP Business All-in-One(SAPジャパン)(26%)
SMILEシリーズ(大塚商会)
SMILEシリーズは中小企業に適するとされるERPです。
柔軟なカスタマイズが可能で、業務プロセスに合わせたシステム構築ができます。
GLOVIA smart(富士通)
GLOVIA smartは製造業をはじめとして多岐にわたる業界に適しています。
リアルタイムのデータ分析と高度なサプライチェーン管理機能を持ち、企業の競争力向上をサポートします。
SAP ERP/ SAP Business All‐in‐One(SAPジャパン)
SAPジャパンは、大企業から中小企業まで幅広い規模の企業に導入されています。
中でもグローバルな展開を視野に入れた企業にとって強力なERPとされています。
ERPを導入するメリット
ERP導入の主なメリットには、業務効率化、意思決定の迅速化、コスト削減、顧客満足度の向上などが挙げられます。企業全体の業務改善に寄与する多くの機能を備えています。
- 業務効率化を促進できる
- 迅速な意思決定を実現できる
- 全社のプロセスを統一できる
- コスト削減を実現する
- リアルタイでののデータ分析を実現する
- 顧客満足度を高められる
- サプライチェーンの透明性を向上させられる
- 法規順守・リスク管理体制を強化できる
業務効率化を促進できる
ERPは自動化を通じて手作業を減らし、業務プロセスを効率化する機能を多く備えます。これにより、人為的なミスが減少し、従業員は付加価値の高い業務に集中できるようになります。
迅速な意思決定を実現できる
ERPシステムはリアルタイムでデータを収集・分析するため、経営層は迅速かつ正確な情報や状況を確認でき、その正確なデータに基づいて意思決定を行うことができます。これにより、競争環境に迅速に対応可能となります。
全社のプロセスを統一できる
ERPは部門ごとにばらばらであったシステムを統合し、全社的に統一された業務プロセスを実現します。これにより情報の一貫性が保たれ、部門間の連携が円滑になります。
コスト削減を実現する
ERPの導入により、業務プロセスの効率化と統一を図れることで、無駄なコストも削減できます。在庫管理や生産計画の最適化により、運用コストも低減できます。
リアルタイムでのデータ分析を実現する
ERPはリアルタイムでデータを集積・分析する機能を備えており、企業は最新の情報をもとに市場動向や業績を把握できるようになります。ビジネス戦略を迅速かつ柔軟に決定し、推進していく基盤となるでしょう。
顧客満足度を高められる
ERPは顧客情報の一元管理とプロセスの自動化を通じて、迅速かつ的確な顧客サービスの提供を実現します。これにより顧客満足度が向上し、売上の向上やリピーターの増加が期待できます。
サプライチェーンの透明性を向上させられる
ERPシステムはサプライチェーン全体のデータを統合管理するこtで、各プロセスの透明性も高められます。これにより問題発生時の迅速な対応や予測なども容易に実現可能になります。
法の順守・リスク管理体制を強化できる
ERPは最新の法規制や内部統制をサポートする機能を備え、企業はコンプライアンスやリスク管理の体制も同時に強化できます。法的リスクや業務リスクを低減します。
この1ページで解決ERPの主な機能、メリット/デメリット、選定ポイントを徹底解説
ERPツールを選ぶ際のポイント
ERPツールの選定では、自社の課題に適した機能、クラウド/オンプレミスの選択、ROIや導入コスト、サポート体制、拡張性、無料トライアルの有無などを比較検討することが成功の鍵となります。
- 自社に必要な機能の有無
- サービス形態
- 導入コストとROI
- サポート体制の充実度
- 拡張性と柔軟性
- 無料トライアルの有無
自社に必要な機能の有無
まず、自社に必要な機能が備わっている製品を選ぶことが重要です。例えば、在庫管理に課題があるならば、強力な在庫管理機能を含むERPシステムが求められる、などです。
また、財務管理や人事管理など、特定の業務プロセスに特化した機能が必要な場合もあります。
自社の抱える課題を解決できる機能が備わっているかを確認し、適したツールを選びましょう。
サービス形態
ERPのサービス形態には、クラウド型とオンプレミス型があります。
クラウド型はインターネットを通じてサービスを利用する形態です。
初期導入コストが低く、スケーラビリティや柔軟性に優れています。
一方、オンプレミス型は自社のサーバにインストールして使用する形態です。
セキュリティ面での安心感があり、カスタマイズがしやすいという利点があります。
導入コストとROI
ERPの導入にはコストがかかりますが、ROI(投資利益率)を考慮することも重要です。
初期導入費用だけでなく、運用・保守コストや将来的な拡張費用なども含めた総コストを見積もり、それに対する効果やメリットを評価します。
短期的なコスト削減だけでなく、長期的な投資対効果を見据えて選定しましょう。
サポート体制の充実度
ERPの導入後も、サポート体制が充実していることが重要です。
導入時のトレーニングや運用中の技術サポート、システムのアップデートやトラブル対応など、ベンダーのサポートがしっかりしているかを確認しましょう。
迅速なサポートが受けられることで、システムの安定運用が可能となります。
拡張性と柔軟性
企業の成長や業務の変化に対応できる拡張性と柔軟性を持つERPを選びましょう。
追加の機能やモジュールを簡単に導入できるシステムは、企業のニーズに合わせて柔軟に対応できます。
また、他のシステムやツールとの連携がスムーズに行えることも重要です。
無料トライアルの有無
無料トライアルが提供されているかどうかも確認しましょう。
トライアル期間中に操作性や機能性、サポートの質をチェックして導入後の運用をシミュレーションすることが可能です。
実際にシステムを使ってみることで、自社の業務にどれだけ適しているかを評価できるので、提供されている場合は試してみましょう。
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ERPシェア率の高い製品も参考に、「自社に適するか」視点でERP選定計画を進めよう
ERP市場は急速に拡大しており、企業の業務効率化と競争力強化を支える存在として重要性が高まっています。シェアの高い製品はその分選ばれる理由や実績があるといえるので、まずはそれらの特徴や機能などをERP選定計画の初期指針/ベンチマークに据えてみてはいかがでしょう。
そしてもちろん、製品はそれらだけではありません。中小企業向けから大企業向け、業態業種別、シンプル型/多機能・連携性・カスタマイズに富むもの、低価格から高価格、サポート体制/メニューなどまで、とても多く、さまざまな特徴や機能を持つ製品が市場にあります。あなたの会社が求める課題解決や成長ニーズに沿えるよう、特徴や機能をじっくりと比べながら選定していきましょう。
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