受注から発注、在庫確認、納期調整、請求処理まで──ビジネスの現場では、受発注業務が複雑化し、手作業・アナログ作業での処理では対応が追いつかなくなりつつあります。情報の分断やヒューマンエラー、伝票ミスといった課題が蓄積され、業務の非効率化を招いている企業も少なくありません。
こうした状況を抜本的に改善する手段として注目されているのが受発注システムです。
受発注システムとは、受注・発注の情報をオンライン上で一元管理し、在庫確認や納期調整、出荷・請求処理といった関連業務まで連動できるITツールです。クラウド型の製品が増えており、24時間どこからでも利用可能で、取引先とのやりとりをリアルタイムで可視化できます。FAXや電話に頼ったアナログな業務フローから脱却し、効率的でスピーディな取引体制を構築できます。
本記事では、受発注システムの主な機能とそのメリット、選定時のポイント、おすすめの受発注システム(全44製品/2025年6月時点)を詳しくご紹介します。
機能で比較「受発注システム」おすすめ製品一覧
目次
受発注システムの主な機能とシステムタイプ
受発注システムは、受注から発注、在庫管理、出荷、請求までの業務をオンライン上で一括管理し、業務効率化と精度向上を支援するIT基盤です。ここでは、まず主要な機能を整理し、次にシステムタイプの分類を解説します。
受発注システムの主要機能一覧
機能名 | 概要 |
受注管理機能 | 受注情報をリアルタイムで一元管理。複数チャネルから受注を自動取り込み、納品書や受注伝票の発行が可能です。 |
発注管理機能 | 定量発注や発注書の生成・送付が可能。再注文タイミング設定による自動発注も支援します。 |
在庫管理機能 | 在庫残数を即時更新し、発注フォームやダッシュボードに反映。欠品・過剰在庫リスクを低減します。 |
出荷管理機能 | 出荷スケジュール作成、出荷指示書の発行、配送追跡などによる出荷状況の可視化が可能です。 |
請求管理機能 | 受領書や納品書から請求書を自動生成、支払ステータスの管理ができ、ミスのない請求を支援します。 |
メール自動発信機能 | 受注・出荷・請求の各タイミングで取引先へHTML/テキストメールを自動送信できます。 |
発注者ログイン機能(発注者向け) | 取引先が自社管理画面にアクセスして、過去の発注履歴や納期情報を確認可能です。 |
他システムとの連携機能 | 販売管理・生産管理・会計システムなどとAPI/CSVで連携し、入力工数を削減します。 |
受発注システムのタイプ別分類
受発注システムは、自社の業態や規模に応じて「どのようなタイプ」を選ぶかが重要です。利用目的やシステム構成で分類される主な4タイプを以下に紹介します。
a. 汎用タイプ
あらゆる業種・販売チャネルに対応できる基本機能を備えたタイプです。受注管理・発注管理・在庫管理・出荷処理などの標準機能が揃い、中小企業の業務を幅広く支援します。スモールスタートで導入しやすく、初期段階に適しています。
b. 業種特化タイプ
建設・医療・食品業など、特定の業界特有の処理(例えば、ロット管理、賞味期限管理、現場別請求)に対応できる機能が組み込まれています。汎用型では対応が難しい商慣習や業務フローに適合し、導入後のカスタマイズ工数を削減できます。
c. クラウド(SaaS)型
ベンダー提供のクラウド上で動作するサービス型です。サーバー構築不要・初期費用低廉で、アップデートや保守もベンダー任せ。サブスクリプション課金により、スケーラブルな利用が可能で、特に多拠点企業やリモート環境に適しています。
d. オンプレミス・パッケージ型
自社サーバにインストールするタイプで、カスタマイズ性やセキュリティ制御に優れます。特に情報統制が重要な大企業や、独自運用が前提の企業に向いています。ただし初期導入・運用コストや保守負担が高くなる点には注意が必要です。
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受発注システムを導入するメリットと注意点
ここからは、受発注システムを導入するメリットと、導入時に注意すべきポイントを説明します。
受発注システムを導入する主なメリット
- 作業効率が大幅に改善する
- 情報を管理しやすくなる
- 受発注機会が増加する
- ペーパーレス化を推進できる
作業効率が大幅に改善する
受発注処理や伝票作成、在庫チェックなどの手作業を自動化できます。
入力の負担が軽減されるうえ、入力ミスや二重入力の削減効果も期待でき、結果として作業時間と人的エラーを大幅に抑えることが可能です。
情報を管理しやすい
受注・発注・在庫・出荷・請求などの重要データがクラウド上や社内サーバに集約されます。
リアルタイムでのデータアクセスが可能になり、管理部門も営業部門も、統一された情報で迅速な意思決定ができるようになります。
受発注機会の増加が期待できる
24時間365日対応できるWeb/クラウドベースの受発注システムなら、営業時間外や出張先でも受発注操作が可能です。
この利便性がもたらす顧客満足の向上により、注文機会の増加や、新規顧客獲得への貢献も期待できます。
ペーパーレス化を推進しやすい
伝票・FAX・納品書などの紙書類をシステム化すれば、印刷・郵送・保管のコストや物理スペースが不要になります。
同時に、社内のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進にも好影響を与え、ペーパーレス化の第一歩として最適です。
受発注システムを導入する際の主な注意点
初期費用と運用コストがかかる
SaaS型でも月額利用料があり、オンプレ型ではサーバやカスタマイズ費用がかかります。掲載制限やAPI接続数に応じてコストが変動するケースもあります。
機能要件とコストをよく比較し、費用対効果をしっかり見極めて選定しましょう。
取引先に対する説明と協力が不可欠
受発注システムは自社だけでなく取引先の協力も必要です。
一部の取引先では「使い慣れたFAXや電話を変えたくない」という抵抗感があるため、導入前には操作方法・メリットの丁寧な案内と、協力依頼が重要です。
社内での学習と業務フローの整備が必要
システム導入には現場への教育と、業務フロー見直しがセットで必要です。
例えば、操作研修やQ&A共有、FAQ整備などを行い、定着化までサポートする体制が成功の鍵になります。
受発注システムの導入がおすすめの企業と製品選びのポイント
受発注システムは、企業の受注・発注業務をDX化し、効率化と精度向上に寄与します。以下に「導入メリットが高い企業の傾向」と、「製品選びで外せない要点」を整理しました。
受発注システムの導入が勧められる企業の特徴
次のような課題を抱えている中小・中堅企業では、受発注システムを導入することで業務の標準化と効率化が望め、市場競争力の向上につながることが期待できます。
- FAXや電話、メールによる受発注業務が中心で、ミスや手間が多い
- ECや店舗、直販など複数チャネルの受注に対応していて管理が煩雑
- 在庫・出荷・請求などを別システムやExcelで個別管理しており、データ連携が不十分
- 店舗や営業拠点ごとに受発注業務が分散し、全体像を把握しづらい
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受発注システムを選ぶ際の主なポイント
受発注システムを選ぶ際、いくつかの重要なポイントがあります。
- 自社の業務に必要な機能はそろっているか
- 導入・運用コストが妥当か
- システムは導入しやすいか
- 事前に使い勝手を確認できるか
- 無料トライアル期間を設定しているか
- 取引先との連携を行いやすいか
- サポート体制は充実しているか
必要な機能が揃っているか
マルチチャネル受注、在庫連携、納期調整、請求書自動発行などが自社運用に必要か検証します。
導入・運用コストが妥当か
SaaS型とオンプレ型でコスト構造が異なります。導入費用だけでなく月額・長期保守費用も含め、費用対効果を比較検討しましょう。
導入しやすさ(クラウド vs オンプレ)
クラウド型は比較的初期投資や管理負担が軽く、スモールスタートに適しています。
無料トライアルで実際の操作性を確認
感触をつかむために、UI・業務手順を現場で確認できるトライアルやデモの提供があるかチェックします。
取引先との親和性
取引先がスムーズに利用できる操作性と環境対応(スマホ対応・FAX併用など)が整っているかが重要です。
サポート体制が充実しているか
導入支援や操作研修、定着化支援などをきちんと行う導入実績とサポートがあるベンダーを選ぶと安心です
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中小企業向けのおすすめ受発注システム3選
受発注システムには、複数のタイプが存在します。その中から、自社のニーズに最適なシステムを見つけることが重要です。
汎用タイプは、さまざまな業種や受発注業務に対応し、柔軟な運用が可能です。一方で、業界特化タイプは、特定の業界に特有の機能を提供し、専門性の高いニーズに応えます。
また、BtoBやBtoCの受注管理に特化したECサイト向けのタイプもあり、オンラインでの取引をスムーズに行うための機能が充実しています。
これらの中から、自社の業種や業態に最適なシステムを見つけていきましょう。
楽楽B2B
特徴 | 取引先に応じた柔軟な設定ができるBtoB専用ECサイトサービス |
月額費用/購入価格 | ・Standard:月額3万9800円(税抜) ・Professional:月額6万9800円(税抜) |
トライアル期間の有無 | 無料デモアカウントの申し込みが可能 |
主な機能 | ・取引先ごとに掛け率、価格、商品、決済手段を設定可能 ・AIによるOCR注文書自動読み込み機能 |
Bカート
特徴 | BtoBの受発注業務に特化し、EC化するクラウドサービス |
月額費用/購入価格 | 初期費用8万円(税抜) + 月額費用(プランによって商品数と会員数の上限が変動) ・ライト:9800円(税抜) ・プラン10:1万9800円(税抜) ・プラン30:2万9800円(税抜) ・プラン50:3万9800円(税抜) ・プラン100:4万9800円(税抜) ・プラン300:7万9800円(税抜) |
トライアル期間の有無 | 30日間 |
主な機能 | ・取引先ごとに価格、商品、決済手段を設定可能 ・標準機能以外に必要な機能はオプションとして柔軟に追加可能 |
BtoBプラットフォーム 受発注
特徴 | 飲食業界に特化した受発注システム |
月額費用/購入価格 | 要お問い合わせ |
トライアル期間の有無 | 要お問い合わせ |
主な機能 | ・スマホやタブレットに数字を入力するだけで棚卸可能 ・レシピごとの原価やアレルギー情報を管理できるメニュー管理機能 |
ITセレクトおすすめの受発注システム41選(製品の詳細資料あり)
(製品名 abcあいうえお順/2025年6月時点)