企業や家庭で無線技術の普及が進む中、無線ネットワークユーザーは今年、Wi-Fi機器のセキュリティと性能品質に関する2つの重要な改善の恩恵を受けられるようになる見通しだ。
Wi-Fi Allianceのマネージングディレクターを務めるフランク・ハンズリク氏によると、同団体は9月までに新しい802.11iと802.11eの両規格について対応製品の認定を開始する。セキュリティ規格である802.11iは、2003年に一部の要素がWPA(Wi-Fi Protected Access)として先行して導入されたもので、802.11eは音声と動画を伝送する無線ネットワークの品質を向上させる新規格。
セキュリティは無線ネットワークの成長にとって最大の障害の1つとなっている。WPAは昨年から、完全な802.11i規格が承認される前に無線通信のセキュリティを強化する目的で、欠陥のあるWEP(Wired Equivalent Privacy)プロトコルの代わりに使われるようになった。WEPの暗号鍵が静的であるのに対し、WPAでは動的な暗号鍵を採用し、ユーザー認証プロセスも改善する。
802.11i規格には、WPAよりも強力なセキュリティを実現するAES(Advanced Encryption Standard)技術も盛り込まれている。最高水準のセキュリティを必要とする企業や政府機関では、AES規格を導入するために一部のネットワーク機器を交換する必要が生じる可能性がある。
過去3カ月以内に発売された新しいネットワーク機器なら、AESベースのセキュリティを利用するのに必要な高い性能要件を満たす処理能力を備えているだろうとハンズリク氏は説明する。だが同氏によると、それ以前の無線機器を使っているネットワーク管理者は、そうした機器をソフトのダウンロードによって完全な802.11i規格に対応させられるかどうかをベンダーに確認すべきだという。
旧来のネットワーク機器を利用している企業は、自社の無線ネットワークを通るデータが機器の大規模なアップグレードに見合うほど重要なものかどうかを判断しなければならないと、Synergy Researchの上級アナリスト、アーロン・バンス氏は語る。多くの場合、WPA規格を組み合わせて無線ネットワークを保護するサードパーティ製品が利用できるという。
ボストン公共図書館(BPL)は、802.11i規格へのアップグレードに関して当面は悩まずに済む。Bluesocketの無線ゲートウェイを用いて無線ネットワークのセキュリティポリシーを管理しているからだと、BPLのシステム担当者キャロリン・クールター氏。BPLはコプレイスクエアにある本館で無線ネットワークを一般に開放しているが、このネットワークにアクセスするには図書館カードが必要だ。
一方、金融サービス会社などのユーザーは、ネットワークセキュリティを高めるためにできる限りの手を打たなければならないとバンス氏は話す。
セキュリティは無線ネットワーキングに関する悩みの筆頭格だが、新しい802.11e規格は、ホームユーザーが無線メディアネットワークを構築するのに役立ち、企業ユーザーがVoIP技術に対応した無線端末を導入するのに利用できる。この規格は、遅延や途切れのない伝送を必要とするストリーミングビデオや音声通話などのトラフィックを優先処理することにより、無線通信のサービス品質を向上させるとハンズリク氏は説明する。
同氏によると、ほとんどの無線ネットワーク機器では、必要なソフトをダウンロードすることで802.11eを利用できるようになるという。
802.11e規格にアップグレードすれば、無線VoIPネットワークはネットワーク管理者にとって現実的な選択肢になる、とバンス氏は語る。端末メーカーは今年、802.11などの無線LAN技術とGSM(Global System for Mobile Communications)などの広域ネットワーク規格に対応したデュアルモードの電話機の投入を開始する見込みだ。
802.11e規格の登場を踏まえ、BPLはVoIP技術を無線ネットワークに導入することを検討するかもしれないとクールター氏は語る。
Wi-Fi Allianceは9月、サービス品質の向上のために802.11eの一部であるWME(Wireless Media Extensions)技術を採用した製品の認定を開始する。WMEは音声、動画、オーディオなどのデータパケットを特定し、トラフィック状況に基づいてその配送の優先順位を付ける。無線ネットワークで伝送される動画は、パケットが遅延したり落ちたりすると深刻な影響を受けるため、こうしたタイプのデータはネットワークを通過する際にほかのデータよりも優先される、とハンズリク氏は語る。
同氏によると、完全な802.11e規格にはWSM(Wi-Fi Scheduled Media)という技術も含まれるものの、Wi-Fi Allianceはホームメディアネットワークで利用できると何らかの形で認定した製品を、10〜12月期のクリスマス商戦で確実に販売したいと考えた。WSMは帯域を分割して各種の無線データに割り当て、必要に応じて音声や動画アプリケーション用の帯域を増やすことができる。
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