三菱電機が8月24日に発表した新型冷蔵庫は、「ビタミンCを増量する野菜室」を搭載した。買ってきた野菜を庫内に入れておくだけで、ビタミンCやクロロフィルを増量してくれるというものだ。もちろん、家庭用冷蔵庫としては“世界初”の機能となる。
同社は、このほかにも「サプリメントエアーを出すエアコン」「油を使わずに唐揚げを作るオーブン」「玄米炊飯時のビタミンE減少を抑える炊飯器」などをラインアップしている。これらをひっくるめて「抗酸化家電」と名付け、健康指向の奥様方に訴求していく考えだ。都内で開催中の新製品内覧会で、家電が持つ“抗酸化パワー”の秘密を聞いた。
あるあるによると一般的に、「抗酸化物質」(スカベンジャー)といえば、人間の体内で「活性酸素」の攻撃をブロックする性質を持つ物質のことだ。活性酸素は、呼吸で取り入れた酸素の一部が変化したもので、さまざまな病気を誘発する悪い奴らしい。
一方、抗酸化物質には、人間が体内で作り出す「抗酸化酵素」(カタラーゼ、SODなど)と、食品を通じて体内に取り込むもの(ビタミンC/E/B群、カロチン、ポリフェノールなど)の2種類がある。お茶に含まれる「カテキン」やゴマの「ゴマリグナン」などもポリフェノールの一種だ。最近、サプリメントや飲料などを中心に抗酸化物質が流行しているのは周知の通りだが、家電とはどのように関わってくるのだろうか?
「抗酸化家電では、“活性酸素の発生を抑える”という広い意味で“抗酸化”という言葉を使っています。たとえば冷蔵庫では、食品に含まれるビタミンなどの抗酸化物質をできるだけ保存することに着目しました。オーブンなら、活性酸素が発生しにくい調理方法を提案するというわけです」(同社)。
たとえば新型冷蔵庫では、野菜室に設けられた3つのLEDが590ナノメートルの波長を持つ光を照射し、野菜の光合成を促進させる。その結果、10日後には野菜の持つビタミンCが約10%増量。従来の冷蔵庫で保存した場合と比べ約1.5倍のビタミンCを保持できるという。
「光パワー野菜室ではクロロフィルも増量します。たとえば半分に切っキャベツをこの冷蔵庫で保存しておくと、内側の黄色い部分も緑色に変わってきます」(同社)。
このほか、冷気の“通り道”にビタミンCを配合したフィルタを設置することで、除菌・脱臭のほか、食品の酸化を約40%抑えることが可能になったという(保存9日後の過酸化物価値比較による)。ビタミンCは、食品の酸化防止剤としても使用されており、その効果を冷蔵庫の中で再現した形だ。
オーブンレンジには、2つの“抗酸化”機能がある。1つは各社の製品で既に採用されている「ゆでもの」ボタンだ。野菜をお湯で茹でると、水溶性のビタミン類が水に溶け出して減ってしまうが、レンジで加熱すれば摂取効率が高い。同社の検証によると、ブロッコリーを普通に茹でた場合のビタミンC残存率は15%だが、レンジ加熱では90%も残るという。
もう1つは、独自の「ハイブリッドスチーム焼き」。角皿に水を張って加熱することで高温のスチームを発生し、食品の表面を素早く焼き硬める。食品内部の水分を閉じこめることで、油を使用せずに鶏の唐揚げを作ったり、少量の油だけでフライドポテトを揚げるといったヘルシー料理が可能になる。
「油脂の酸化物というのは、それ自体が活性酸素といえます。スチーム焼きは、油の使用量そのものを少なくするほか、スチームがオーブン内に充満して酸素を減らすため、油の酸化を抑制する効果があります」(同社)。
調理直後のTBA値(油脂の酸化度)を比較したところ、鶏の唐揚げの場合で最大39%、フライドポテトでは37%、スチーム焼きのほうが低い値だったという。なお、スチームを使うレンジは先日シャープも発表している。スチーム機能は、今後オーブンレンジのトレンドになるのかもしれない。
エアコン、除湿機、加湿機などの空調製品が備えたのは、その名も「サプリメントエアー」だ。吹き出し口に取り付けた「サプリカートリッジ」に天然ハーブ「ローズマリー」の抽出成分を封入。ユニット内の薄型ヒーターによって暖められると、ローズマリーの抗酸化成分が揮発し、エアコンなどが吹き出す風にのって部屋中に降り注ぐ。
効果はいくつかあるようだ。「紫外線を浴びると体内で活性酸素が増えることが分かっていますが、天然ハーブエキスがそれを15〜25%抑えます」。また、除湿機の場合は、部屋干しした洗濯物の皮脂が酸化して「黄ばみ」や「ニオイ」に変わることを防ぐという。
カートリッジの交換時期は、通常の使い方で1シーズン(別売品のカートリッジは1200円)。ユーザーが自分で取り替えることもできる。
なお、ローズマリー抽出液とはいえ、匂いが気になる人もいるため、室内では匂わないレベルに調整されているのだが、逆にアロマテラピーなどの用途に向けたカートリッジのバリエーション展開も期待できそうだ。三菱電機も「考えてはいる」と話している。
となると、次はヒーリング家電か、それともリラックス家電か?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR