どうやら、今年は“地下”がアツいらしい。
シールドマシン出発式や日比谷共同溝見学会には、定員を上回る数の応募があったそうで、11月21日に首都圏外郭放水路の庄和排水機場で行われた「地底文化フォーラム」にも、250人の定員を大幅に上回る400人以上の応募があったそうだ。
“地下好き”の筆者としても見逃せないこのイベント、さっそく出かけてみました。
首都圏外郭放水路とは、千葉・埼玉の両県を流れる中川、倉松川、大落古利根川らの水量が台風などで上がった際に、その水を、流れにゆとりのある江戸川に放水するための地下水路だ。
埼玉県北東部を流れる中川流域は、周りを利根川、江戸川、荒川に囲まれた起伏の少ない地形であることに加えて、近年、住宅地が急速に拡大してきたエリアであり、毎年のように浸水被害が起きていたという。
放水路は全長6300メートル。大落古利根川、幸松川、倉松川、中川、18号水路からの水を貯水する5本の立杭と、それら結ぶ地下水路、最終的に水を江戸川へ放水するための排水機場(庄和排水機場)で構成されている。
2006年度内の完成を予定しているが、既に2002年の6月から試験通水が行われている。今年10月の台風22号の際には、これまでならば床下・床上浸水となっていた雨量にもかかわらず(埼玉県杉戸町で総雨量173ミリ)、床上浸水はゼロとなり、浸水被害の低減に力を発揮したことが確認されている。
フォーラムの舞台となったのは、庄和排水機場のメイン施設と呼べる調圧水槽。これは177(全長)×78(幅)というサッカーコート2面分にもなる巨大な地下水槽で、高さは18メートル。25メートルプールにして約900杯分という約18万トンの水が貯水可能で、大雨の際には放水路を通ってきた水がここを満たした後、ポンプによってくみ出され、江戸川へ放水される。
これだけの広さがなければ、ポンプを利用するための水量が確保できないほか、緊急停止時に発生する、逆流による水圧を調整できないのだという。
しかし、これだけ大きな施設を地下に建造すると、地下水によるアップリフト(揚圧力)で水槽が浮かんでしまう(!)可能性もあるために、天井部の土砂や柱のコンクリートなどが重しの役目を果たしている。
ちなみに、放水路全体の貯水量は約67万トン(完成時)で、これまでに約63万人の人が建設に携わり、約140万トンの土を掘り出している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR