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今そこにある「dynabook TX/98MBL」の3D立体視を試す元麻布春男のWatchTower(2/2 ページ)

» 2010年08月17日 11時05分 公開
[元麻布春男(撮影:矢野渉),ITmedia]
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64ビット版と32ビット版を選べるセレクタブルOS

テンキー付きのアイソレーションキーボードを搭載。タッチパッドのサイズは93(横)×52(縦)ミリあり、上部にオン/オフボタンを備える。パームレストはざらざらとした手触りで、奥行きは約88ミリある

 本機の主なスペックをまとめると、CPUはCore i7-740QM、メモリは4Gバイト(2Gバイト×2)、チップセットはIntel HM55 Express、GPUはNVIDIA GeForce GTS 350Mだ。プリインストールOSはWindows 7 Home Premiumだが、32ビット版と64ビット版をユーザーが初回起動時に選択することができる。今回は32ビット版で試用したが、リカバリー作業を行うことで64ビット版に変更することも可能だ。9.5ミリ厚の2.5インチドライブとしては大容量の640GバイトHDDを搭載するほか、eSATAをサポートしているためストレージの拡張が比較的容易である点が目立つ。一方、無線LANが2.4GHz帯(IEEE802.11b/g/n)と干渉の少ない5GHz帯をサポートしない。細かいところでは、メモリカードスロットがサポートするメモリースティックは、フルサイズのものでデュオではアダプタが必要になる。

 19ミリピッチのキーボードは、テンキー付のアイソレーションタイプを備える。タッチパッドはキーボードのホームポジションに合わせ、左側に寄っている。キースロトロークは1.7ミリと浅めで、長時間タイピングする用途では好き嫌いがありそうだが、3D立体視が大きくフィーチャーされる本機では、大きな問題ではないのかもしれない。キーボードの上部にはharman/kardonブランドのステレオスピーカーがあり、かなり音量を上げても音割れせずに再生可能だった。また、本機にはExpressCardスロットに収納可能な小型リモコンが付属する。

 なお、ボディサイズは380.5(幅)×254(奥行き)×30〜37.6(高さ)ミリ、重量は約3キロとなっている。バッテリー容量は10.8ボルト 4200mAhで、公称駆動時間は約1.8時間だ。

2基のメモリスロットやHDDベイは底面からアクセスできる
ACアダプタは66(幅)×155(奥行き)×36(高さ)ミリと大柄で、ケーブル込みの重量は約650グラムある
液晶ディスプレイは約135度まで開く

前面にSDXC対応SDメモリーカードスロット/メモリースティックPRO/xDピクチャーカード/MMC対応のメモリカードスロットや赤外線受光部、状態表示ランプが並ぶ(写真=左)。背面はバッテリーが占める(写真=右)

左側面に排気口とアナログRGB出力、ギガビット対応の有線LAN、HDMI出力、2基のUSB 2.0(うち1基はeSATA兼用)、ExpressCardスロット(/34対応)がある(写真=左)。右側面にヘッドフォン、マイク/ライン入力、2基のUSB 2.0、Blu-ray Discドライブ、DC入力、ケンジントンロックホールが用意されている(写真=右)

3D立体視のオン/オフでスコアが大きく異なる場合も

OSは初回起動時に64ビット版と32ビット版から選べる

 本機の性能だが、今回行ったテストの結果については下記にまとめた。ここでは、NVIDIAコントロールパネルの「ステレオスコピック3Dの設定」を用いて、3D立体視機能を有効と無効の2通りについて、同じテストを行っている。

 基本的に、本機はクアッドコアCPU搭載のノートPCということで、高い性能を持っている。メインストリームのノートPCに比べてPCMark Vantageのスコアがあまりよくないのは、本機が採用するCPUがAES-NIをサポートしない45ナノメートルプロセスによるものであることが影響しているのだろう。Core i3やCore i5(32ナノメートルプロセスルールのArrandale)にはAES-NIが採用されており、PCMark Vantageの通信関係のテスト(PCMarkやCommunicationsに含まれる)で高い効果を発揮する。逆に、AES-NIの恩恵がないテストでは、やはり本機の性能は高いと思う。

 3D立体視機能の有無によるスコアの変化だが、3DMark06とUnigineのHeaven Benchmark 2.0で顕著だ。これらのテストでは3D立体視を有効にすることで、フレームレートが約半分になってしまう。しかし、これもフレームシーケンシャル方式で2倍の負荷がGPUにかかることを考えれば、無理もないところだ。DirectX 9以降に対応したテストにはPCMark VangateやFF XIVベンチマークテストも含まれるが、これらのテストはフルスクリーンで実行されないため、スコアに大きな影響が現れていない。

PCMark Vantage(32ビット版)のテスト結果
3DMark06のテスト結果
CrystalMark 2004R3のテスト結果

FINAL FANTASY XIV Official Benchmarkのテスト結果(画面=左)と、Heaven Benchmark 2.0(1366×768ドット)のテスト結果(写真=右)

 この結果からいえることは、普段利用するうえで、3D立体視(ステレオスコピック3D)は有効にしておいて構わないだろう、ということだ。3D立体視を有効にしておいて性能に影響が現れるのは、3D対応アプリケーションをフルスクリーンで実行する場合のみ。ムービーの場合は、一般にプレーヤー側で3Dの有効/無効を設定できるから、ディスプレイドライバで設定する必要はない。ディスプレイドライバで無効に設定する必要があるのは、フルスクリーンで3Dゲームを実行するが、3D立体視を使いたくない場合だけ、ということになる。

 この設定が必要になるのは、3D立体視を有効にして3Dゲームを快適にプレイしようとすると、ゲーム内でグラフィックスのフィーチャーなどをかなり落とす必要があると思われるからだ。グラフィックスフィーチャーを落として3D立体視するか、3D立体視をあきらめてグラフィックスフィーチャーを有効にするか、どちらがよいかは、ユーザーにより、あるいはタイトルにより異なるだろう。

 しかも、この問題がGPUのパフォーマンスにあることを考えると、解決は非常に難しい。ノートPC内蔵のGPUを交換するのが難しいのはもちろん、たとえ交換できたとしてもアップグレード用のチップを見つけることが困難だ。本機が採用するGeForce GTS 350Mのすぐ上位となると、GeForce GTS 360Mだが、若干のクロックアップによる性能向上だけで、それほど大幅な改善にはならない。本格的なアップグレードを求めるならその上のGeForce GTX 480Mということになるが、こちらはTDP 100ワットとノートPC用としてはモンスター級である(GTS 350MはTDP 28ワット)。このGPUを採用した瞬間に、全く別物のノートPC(専用ゲーミングノートPC)となってしまう。一般的なノートPCの枠(本体サイズや価格)を考えれば、現状では本機のあたりがよい落としどころなのだろう。逆にいえば本機は、3D立体視という機能そのものがすたれない限り、比較的陳腐化しにくいスペックを持っているといえるかもしれない。

高い付加価値を備えたバランス重視の3DノートPC

 本機のスペックを見たとき、液晶ディスプレイがフルHD(1920×1080ドット)解像度でないことを気にする人もいるかもしれない。実際には、ノートPC用でフルHDに対応した120Hzのパネルが入手できないことが理由かもしれないが、CPUやGPUとの性能バランスを考えても、本機が採用するHDパネル(1366×768ドット)はよいところではないかと思う。一切3Dゲームはしない、動画だけ、というのであれば性能的にフルHDは可能かもしれないが、その場合、同等の価格で3D対応テレビを買ったほうがより幸せになれる気がする。

 このdynabook TX/98MBLは、3D立体視による3Dコンテンツ(ムービー、ゲーム)の利用、基本的なPCとしての利用、さらに入手可能な各デバイスの取捨選択といった点で、現状におけるバランスを取ったノートPCだ。ソフトウェア的にもう少し完成度を高めて欲しい部分もなくはないが、1世代目の製品としてはやむを得ない側面もある。採用するフレームシーケンシャル方式による3D立体視は、コストを別にすれば、現時点で最良の方式であり、チラつきやボヤケの少ない3D立体視が実現されている。

 内蔵する記録可能なBlu-ray Discドライブは、3Dコンテンツの利用だけを考えるとオーバースペックだが、最近は1万円程度で外付けUSB接続のデジタル3波対応テレビチューナーも市販されている。これを加えて、デジタル放送の録画も行うというユーザーにとっては、悪くない選択だ。オフィススイートのOffice Home and Business 2010がプリインストール済みで、価格は大手量販店で21万円前後と決して安くはないが、クアッドコアCPUに3D立体視と、付加価値は高い。

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