ハリウッド、“ウィッシュリスト”の真実:特集:次世代DVDへの助走
この連載の中で繰り返し話題になっている“ウィッシュリスト”は、次世代光ディスクに対してハリウッドの映画スタジオ7社が提出した要望書だ。ここでは、ウィッシュリストについてアップデートした情報を記しておきたい。
“ウィッシュリスト”ーー業界内では“HACリスト”(またはHAC 2リスト、原文書名は“Hollywood Advisory Committee II letter”で2003年10月30日発行)と呼ばれる。文書の原文は非公開ではないが、関係者のみに郵送で届けられたものであり、これまでわれわれはAOD側の説明の中だけでしか、その存在を知ることができなかった。
しかし先日、HACリスト原文を入手した。最初にこのリストに関する記事を書いた時、“Sony Picturesを除く主要スタジオ10社による連名”と書いたが、これは誤りであることをお詫びしたい。実際には、MGM Home Entertainment、Columbia/Tri-star、Universal Studios Home Video、The Walt Disney Studios、Warner Home Video.、Paramount Pictures、Twentieth Century FOXの7社合同による文書であり、DVDの成功を次世代に引き継ぎ、消費者にとって良い結果をもたらすために要望リストを届けると書かれている。
この7社のうち、Columbia/Tri-starとはSony Picturesの昔の名前である。ハリウッドの中では、スタジオとしての独立性をアピールするため、Sony Picturesではなく旧名を名乗ることが多い。つまりHACリストの内容は、BDへの対応を態度として明確にしているSony Picturesも確認していることになるわけだ。
実際に原文の内容を見ると、先日、HD DVDがロサンゼルス・センチュリーシティで行ったプレゼンで説明されたニュアンスに比べ、BD、AOD双方にとって不利な内容がほとんど存在せず、内容的にも具体性が非常に低いものだった。つまり、どのようにも受け取ることが可能な内容だ。
リスト入手に協力してくれた関係者を経由した伝聞だが、リスト作成において調整役となったDisneyの役員は、「本当はもっと具体的な内容を盛り込みたかったが、WarnerがAODに有利な内容を、Sony PictureがBDに有利な内容を求め、結果的に細かな内容はすべて落ちてしまった」と話していたという。各スタジオは、当然もっと細かなところでの要望を持っており、HACリストの内容はスタジオの要求の20〜30%しか満たしていないそうだ。
別途、HACリストの原文を掲載するが、あまりの具体性のなさに驚くかもしれない。このリストに適当な説明を付ければ、BDにもAODにも有利なプレゼンテーションを行える。それもそのハズで、リスト中の項目はBDでも、AODでも満たすことが可能なものしか残されていないのである。
では残り70〜80%の要望はどうなっているのか? それぞれの映画スタジオが、個別に要望リストを作って対処している。その内容は、より具体的で、細かな仕様に言及するものであり、子細な部分に至るまで合意できるよう、BD側、AOD側双方ともに調整を続けている段階というのが真実のようだ。
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