S-VHSユーザーの強い味方、松下「DMR-E150V」を試す:レビュー(3/3 ページ)
新「DIGA」シリーズの中で、もっともユニークなのが“3 in 1”モデルの「DMR-E150V」だ。VHSビデオデッキからの“置き換え”需要を狙った本命ともいえる製品で、S-VHS再生によるダビングや、EPGを使ったVHS録画などにも対応している。VHSユーザーの強い味方になるか?
意外と注目度が高いのが“S-VHS再生”のダビング機能機能だろう。従来のDVD+VHSビデオレコーダーでは、ほとんどが「SQPB」と呼ばれる簡易再生機能であり、クオリティはVHSと同等。せっかくS-VHSで録画したテープでも、本来の画質を生かせなかった。S-VHSテープのコレクションをデジタルビデオ化したい人にとっては、不満の残る部分だったわけだ。
もっとも、S-VHSよりも高画質に録画できるDVDやHDDを備えたビデオレコーダーにS-VHSビデオ機能を丸ごと持たせるのはコスト的に無駄だ。そこで、DMR-E150VとDMR-E75Vでは「再生だけS-VHSクオリティ」という変則的なVHSデッキ機能を採用し、S-VHSテープからの高画質ダビングと価格を両立させた。
では、期待の「S-VHS再生」ダビングはどうだろう。今回は、S-VHSテープに「S-VHS標準モード」で録画した番組を「S-VHS再生」と「SQPB」で再生。さらに、無印VHSテープに「VHSの標準モード」で録画した番組をSPモードでHDDへダビングして、ダビング後の画質を比較してみた。検証に使用したS-VHSデッキは、東芝の「A-SB88」だ。
「S-VHS 再生」でS-VHSテープからHDDに録画した。画像は画像は、スカパー!/スカパー!110、ケーブルテレビで放送中のディスカバリーチャンネルより、シリーズ キャセイパシフィック「ツタンカーメン暗殺の疑惑を探る」(7月4日 22:00〜23:00 放送)(c)2004 Discovery Communications Inc.
「SQPB」でS-VHSテープからHDDに録画した画像。字幕の部分を見る限り解像度に大きな変化はなさそうだが、「S-VHS 再生」でダビングしたほうが情報量が多く、階調表現も豊かに見える。劇的な差ではないが、比較するとはっきりと違いがわかるシーンも多かった
劇的な差は感じられなかったが、やはり「S-VHS再生」のダビングのほうがシャープで情報量は多かった。VHSからHDDやDVDへであっても、ダビングは画質劣化が前提なだけに、少しでも高画質でS-VHSテープをデジタルビデオ化したい人にはやはり嬉しい機能だ。
初物ながら機能統合も進んだ“3 in 1”
DMR-E150Vは、HDD+DVD+VHSとしてはもっとも早く市場に投入された製品だ。同じ“3 in 1”としてはアナログBSチューナーを内蔵するシャープ「DV-HRW30」が7月1日から出荷されており、7月25日には“VHSの雄”日本ビクターからも「DR-MX1」が発売される。いきなり激戦区になりそうだ。
もっとも、DV-HRW30はEPG機能がないし、DR-MX1はVHS側でEPG予約する機能を持たない。2番組同時録画をもっとも生かせるのは、DRM-E150Vということになりそうだ。また、DRM-E150Vはダビング機能などを含めてDVD+HDDとVHSという2つのユニットの機能統合も進んでおり、「VHS一体型」としての完成度の高さを感じさせる。
一方、気になったのは、やはりVHSビデオ側の性能だ。チューナーはHDD+DVD側とは明らかに異なる傾向で、解像度が低めで色のりも浅め。録画した映像も少々ジッターが多く、画面の揺れが大きく感じた。いまさらVHSの高画質録画にこだわる人は少ないと思うが、ハイエンドS-VHSビデオデッキとの代替といった場合には不満が出てくるかもしれない。
リモコンの出来も悪くない。DMR-E85Hの物をベースにしつつ、VHS用の操作系もうまく融合している。テレビがHDD+DVDとVHS共用のAV出力に接続されていれば、表示されている画面とリモコン操作も一致する。共用のAV出力に相変わらずS端子出力がない点は気になるが、今時の高画質を謳うテレビはY/C分離も高精度になっているから、それほど気にする必要はないだろう。
基本操作部はDIGAシリーズ共通で、VHS用の機能もうまく割り振っている。上部にあるVHS切り替えボタンは赤く点灯するようになっており、操作対象がVHSに切り替わっている時には、なにかボタンを押すたびに赤く点灯して区別できるようになっている。リモコンの電力消費量を抑えつつ、という意味では結構アイデアものかも(クリックで拡大)
80GバイトというHDD容量、ゴーストリダクションチューナー未装備といった点には不満を感じる人もいると思うが、やはり“3 in 1”の魅力は大きい。2台ビデオデッキを置くスペースがない、HDD+DVDレコーダーも欲しいが、そろそろVHSビデオデッキも調子が悪い、といった人には格好の選択肢だし、基本的な使い勝手の良さはDMR-E85Hでも実証済みだ。
また、既にHDD+DVDレコーダーを所有しているヘビーユーザーが、過去のVHSコレクションのデジタル化や、バックアップ録画用に買い増しするにも悪くない。HDDを利用してVHSのコレクションを整理しながらDVDメディアにダビングできるし、バックアップ録画用であればHDDが80Gバイトでも十分使えるはずだ。
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