スカパー!やWOWOWと、地上波の“組み方”を考える(2/2 ページ)
スカパー!もWOWOWも、その経営が加入者数の増減にばかり左右されないように、自らコンテンツ制作に投資し、マルチユースによる収益の拡大を図る方針だ。しかしその戦略は、地上波との組み方が成否の鍵を握っている。
テレビ番組として制作せずに、劇場からなり、DVDからなりで制作して、制作段階からブロードバントで流す権利も確保しておけば、回収手段はさらに拡大する。ブロードバンドで流せるコンテンツが少ないという事情はあまり大きく改善されていない。ストリーミング加えて、オンデマンドでも利用できるようにしておけば、マルチユースは容易であるし、投資の見返りとしての収益のシェアも、双方にメリットのある形で実現させることができる。
地上波局や映画会社のように、コンテンツの制作力が高いところと組んで、制作段階から投資していけば、スカパー!にしても、WOWOWにしても、収益源の多様化が実現する。WOWOWと地上波局のように放送局同士が提携する場合、(逆説的だが)最初からテレビ番組として制作しなければいいのである。
コンテンツの種類にもよるが、例えば、アニメであれば、海外市場での展開も視野に入ってくる。
ただし、コンテンツの制作事業は、あくまで当たりハズレのある、ハイリスク・ハイリターンのビジネスだ。それだけに、一社だけで全権を持とうとはしない方がいいだろう。
スカパー!もWOWOWも、株主構成を見ると、フジテレビ、東京放送、日本テレビといった顔ぶれが上位に並んでいる。地上波局との連携はそれほど難しいことはなさそうである。
留意しておくべき点は、お互いにウィン―ウィンの関係が構築できるようなコンテンツを制作していくという点だ。単独でコンテンツ投資を行い、ヒットしたらマルチユースを行い、ハズレた場合にはコスト負担をすべて負うという方法は避けるべきだ。
スカパー!とWOWOWの業態の違いを考慮しておけば、両社と地上波局との連携は十分に双方の企業価値を高める効果を持つことを忘れるべきではないだろう。
西正氏は放送・通信関係のコンサルタント。銀行系シンクタンク・日本総研メディア研究センター所長を経て、潟IフィスNを起業独立。独自の視点から放送・通信業界を鋭く斬りとり、さまざまな媒体で情報発信を行っている。近著に、「放送業界大再編」(日刊工業新聞社)、「どうなる業界再編!放送vs通信vs電力」(日経BP社)、「メディアの黙示録」(角川書店)。
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