DLNAで一躍脚光を浴びる「DiXiM」とは何か(3/3 ページ)
家電・PC・モバイル機器の相互接続性を実現するため、標準化活動を推し進めるDLNA。Intelや松下、ソニーなど各業界をリードする企業が参加している同団体で今、福岡のソフトベンダーが開発した「DiXiM」が注目を集めている。
サーバの機能としては、急に特殊なことを始めるとクライアントが付いて来られないので、しばらくは標準的な機能から大きく逸脱することはないだろう。多くメーカーはそれよりも、DLNAクライアントの姿にオリジナリティを持たせようとするはずだ。それはGUIであるかもしれないし、なんらかのデバイスかもしれない。実際にこういうものは、ユーザーに一番近いところが面白くないと、ソリューション全体が面白くなくなってくるものなのだ。
まずPCは当然として、家電で一番最初にDLNAクライアント機能が載るべきなのは、テレビだ。クライアント機能の実装は、大型フラットディスプレイでは当たり前になってくるだろう。そしてその次に来る問題は、それ以前に購入したテレビではないかと思っている。
こういうものが将来のアナログ停波とともに一撃で全滅するということが、社会的に許されるのか。それだったらデジタルチューナーではない、DLNAクライアント機能のみという「ルームリンク」のような小型デバイスが注目を集めるだろう。そのデバイスの表示装置として、小型液晶テレビのアナログ外部入力を利用するという考え方だ。
「VAIO type X」が“全波1週間バッファ”ということが現実に可能であることを示した時点で、テレビをリアルタイムに見る意味は既に消失した。各部屋に置いてある小型テレビに至るまで、全部デジタルチューナーを装備する必然性も、同時に崩壊したと言えるのではないか。
もう一つの試みは、ホームオーディオへの展開だ。現在音楽シーンの最大の課題は、いかにポータブル機器へのコピーを許していくかというところに集約している。外出先で聞くなら、それは必然だろう。
だがその一方で、家庭内での音楽生活を考えた場合、いろんな場所に保存している音楽を、家庭内でどんな機器を使っても引き出せるという世界があっていい。
例えばヘッドホンような形をしていて、コピー先となるメディア(バッファ)を持たず、暗号化されたデジタルストリームを再生するだけのデバイス。シリコンオーディオぐらいのサイズにDLNAクライアント機能が丸ごと実装されたデバイスがあれば、家中のどこにいてもベストポジションで音楽が楽しめる。
こういったデジタルホームの考え方を家の外にまで拡張していけば、コピープロテクションの問題も解決の糸口が見えてくるのではないか。オリジナルのデータを外出先でいつでも引き出せるなら、そもそもコンテンツをコピーして個別に持ち歩く必要がなくなる。Webサイトをローカルにコピーする必要がないのと同じ理屈だ。
そこに至るまでは、インフラなど考えるべきところも多い。だが、通信にコンテンツが乗せられるというだけで、ビジネスチャンスはいくらでも広がってくる。
何を描き、どう実現していくのか。すべてはわれわれがどう望み、どう要求していくかにかかっている。
小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
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