“ブラウン管画質追求”の結論――東芝が初めて語る「SED」(2/2 ページ)
次世代ディスプレイ「SED」を開発したキヤノンが、“SEDテレビ作り”に選んだパートナー「東芝」。これまで表舞台に登場しなかった東芝のSED開発担当者が、SEDの詳細と今後の展開について初めて口を開いた。
そのほかSEDは、蛍光体残光の減衰が速いため高速応答性にも優れているほか、OFF時のビーム電流がカットオフできて低い黒輝度が得られるためブラウン管並みの広いダイナミックレンジ表示が可能なのも特徴だ。
福間氏はCEATECで展示した36インチのSEDテレビ試作機のスペックを今回のセミナーで初公開。
コントラスト比は10000:1で、特に黒輝度が0.04cd/m2と非常に低い(プラズマは0.5cd/m2、液晶は0.7cd/m2)ため暗部のコントラスト表現に強い点や、明るいシーンや色再現性で重要となる白輝度も260cd/m2(プラズマは60cd/m2)を確保するなど、他の薄型ディスプレイと比べてSEDがスペック面で圧倒的に有利である点を紹介した。
そのほか、SED発表会時に比べてCEATEC機はコントラスト比(8600:1→10000:1)だけでなくピーク輝度も360cd/m2(発表会時は300cd/m2)に向上している点などが明らかにされた。
「SEDは、高い色再現性、優れた動画特性と暗コントラスト、広い視野角など、ブラウン管の長所を継承した画質が得られる。さらに固定画素方式なので、ブラウン管に見られた周辺フォーカスのボケ感もなくなるなどブラウン管を超えた性能も魅力」(福間氏)
液晶からSEDへ
東芝は1999年にキヤノンとSED共同開発を決定するまで、ポスト・ブラウン管として液晶テレビを推進していた。当初は液晶で大型ディスプレイもできると思っていた、と福間氏は打ち明ける。
「だが液晶はブラウン管と比較して、一向に画質が追いつかないという状況があった。研究開発レベルではプラズマにもトライしていたが、こちらも画質面でブラウン管には及ばなかった。SEDを選んだのは、フラットパネルでブラウン管画質を実現できるから。ただし、FEDに取り組んでいる他メーカー同様に開発は困難を極め、特に薄いギャップに高電圧をかけるという部分の制御で苦労し、開発中止の手前までいったこともある。もちろん、現在この問題は克服している」
新会社によるSEDの量産は来年の夏以降で、来年の年末商戦には50インチクラスを市場投入する予定という。
「近年の液晶/プラズマのコストダウンで、SEDのロードマップも見直すような状況もあったが、安く生産できる技術的な見込みが出てきたので心配はしていない。もちろんメーカーとしては高く売りたいのだが……(苦笑)。SEDのメリットを生かせる高い技術を持つメーカーという条件付きでSEDの外販も検討している」(福間氏)
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