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対談 小寺信良×津田大介(3)――コンテンツ業界は今、なにをするべきか特集:私的複製はどこへいく?(3/3 ページ)

音楽産業を語るとき、なぜか「レコード会社 対 消費者」という構図ばかりがクローズアップされ、実際の著作権者がほったらかしになっているという現状がある。コンテンツ業界はその上、消費者の“気持ち”にもあまりに鈍感だ。彼らは今何を考え、どう行動すべきなのだろうか?

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小寺:多分、音楽にしても映像にしても、コピーを回数で制限するというモデルはどこかで破綻すると思います。本人が忘れていても実はコピー回数がカウントされていて、10年後ぐらいに急に再生できなくなったりして、「そんなコピープロテクト技術はもう誰にも分かりません。解除もできません」なんてことになったら、目も当てられない。

 最初にふれましたが、個人情報とメタデータを結合させ、「永久的な視聴権」を手に入れることのできる方向が正しいのかなぁと思います。

津田:そうした世界を考えるならば、未来に登場するハードウェアも視野に入れる必要がありますよ。ハードウェアとソフトウェアが提携してやっていかなくてはいけませんから。仲良くしてほしいなぁ(笑)

小寺:本当はコンテンツに対して対価を支払っているはずなのに、物流手段であるCDやDVDパッケージにお金を払うビジネスモデルが定着してしまっている。早く“形のないコンテンツ”にお金を払うビジネスモデルを構築しないと、いつまでも流通に口を出させるビジネスを続けていたら、いつかつまずきますよ。

もっと困らないと、状況は変わらない?

――どうしても今の日本では、技術というと「制御」であったり「コントロールであったり、退路をふさぐような方向に向かいがちです。技術が、新しいビジネスを加速させるために利用されていないような雰囲気もあります。

津田:僕が頭にくるのは、身銭を切ろうという姿勢を示す企業が少なすぎることですね。ソニーがATRAC3なりOpenMGなりを本気で普及させたいと思っているならば、極端な話2GバイトのMAGIC GATEメモリースティックを1000円で売ればいいんですよ。

 売れば売るほど赤字にはなるでしょうけれど、「これだけ便利なんだよ」「MDよりたくさん曲を入れられるし、ちょっと制限かかるけど、安くて便利でしょ」と提案できるならば、支持する消費者だって出てくるわけですよ。

 売れた分の還元をしていかないと、どんどん市場は小さくなっていきます。CDの売り上げでいえば、今年の夏はかなり売り上げ的にも厳しかったみたいですね。キラータイトルやヒットソングがなかったということもありますけれど、売れてないという現実は変わらないです。

――「売れていない」という危機感をバネに、何か新しい動きはありそうですか?

津田:いろいろ考えてはいるでしょうが、iTunes Music Storeをどのタイミングで認めるか、が一つの大きなポイントになるでしょうね。音楽配信に積極的なエイベックスや東芝EMI、コロムビアミュージックエンタテインメントあたりは好意的みたいですよ。

 特に東芝EMIは業績の悪化もあって、今年から各社の音楽配信や音楽DVDレンタル事業など、持っている音源の活用に積極的になりましたから、iTunes Music Storeに楽曲を提供する可能性も高いと思いますね。

小寺:とりあえず、一度困っていただかないと状況が変わらないという体質みたいですね。

津田:他人事なんで言わせてもらえば、つぶれた方がいいんですよ(笑)。1、2社ぐらいつぶれないと分かんない。

 つぶれたって、もともと、人の行き来が激しい業界ですから、優秀な人であれば生き残れるんじゃないですかね。

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