“家電メーカー”三洋が本腰を入れる「リアプロTV戦略」:インタビュー(3/3 ページ)
三洋電機が満を持して日本市場に投入した55型リアプロTV「LP-55WR1」。市場では30万円台後半となるなど同サイズのプラズマTVの半額という値ごろ感で話題を集めている。同社の開発者に、リアプロTV開発経緯や事業戦略を聞いた。
ユニークなのは、「液晶リアプロTVでは業界初」(同社)という「クイックオン」機能だ。
ランプを光源に使うフロントプロジェクターと同様の投写システムを内部に持つリアプロTVは、電源を切るとクーリング状態に入ってしまうため、画面復帰まで時間がかかるってしまうのがウィークポイントだった。だがLP-55WR1は、電源ボタンを押して画面が消えてもすぐに押し直すと画面がパッと表示され、まさにテレビ感覚で使えるのだ。
「電源ボタンを押すとランプが消灯するように見えるが、実はウォームアップ状態になっており、4分以内ならば再度電源を投入するとすぐに復帰するようになっている。ランプを低ワットで駆動させることで瞬時の画面復帰を可能にした。また映像に応じてランプの明るさをリアルタイムに制御するなど、ダイナミックレンジ向上にも新開発ランプが役立っている。このワット数を変更できるランプは、当社がランプメーカーと共同で開発した」
通常、ランプの光を反射させるリフレクター(ミラー)にはガラス素材を使っているが、新開発のランプは金属製のリフレクターを採用している。これも、テレビとして使う上で危険性が伴う材質は極力避けるという、同社の“家電メーカーならでは”のこだわりだ。
「破裂するというケースはほとんどないが、ゼロではない。ガラスだと破裂の際に割れて飛び散ってしまうが、新開発のランプなら破裂しても割れることはない。交換用ランプの価格も、フロントプロジェクター向けと比べて安くしているし、ランプ寿命自体もフロントより長くなっている。我々はランプで儲けようとは思っていない。リアプロTVとして家庭に広く普及させていくためには、こういった小さなことも解決していかなければならない」(杉邨氏)
表示デバイスに透過型液晶デバイスを採用した理由のキーワードも「家庭向け」だ。
「フロントプロジェクターを透過型液晶でやってきたというのが最大の理由だが、例えばDLPの場合はカラーブレイキングノイズ(*1)の問題がある。カラーホイールという可動部分があるというのも、テレビとして使う場合には不安が残る。長い時間視聴することの多い家庭用テレビ向けには、表示デバイス選びも重要になってくる。LP-55WR1は、当社の最新フロントプロジェクターLP-Z3と同じ液晶パネルを採用しており、絵作りの面でノウハウを活かせる」(杉邨氏)
(*1) 「カラーブレイキングノイズ」――1チップDLPシステムで発生するといわれている、視線を移動した時や動きの速いシーン、字幕の部分などで映像内にRGBの残像が感知される現象
同社の今後のリアプロTVの展開を聞いてみた。
「これにとどまらず、リアプロTVの新商品は次々と出していきたい。画質面では満足いく製品に仕上がっているが、ランプの寿命、さらなる小型化、機能面など、まだまだ改良すべき点も多い。日本でのリアプロTV市場の見極めを含めて、早急にやっていきたい。中国で展開している45インチを日本で売るかどうかは未定だが、個人的にはリアプロTVのメリットを最大限に生かせるのは50インチ以上だと思っている。来年は北米や欧州にも積極的に展開していく構え」(杉邨氏)
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