風変わりな外観から“直球サラウンド”――「NIRO 600」:レビュー:フロントサラウンド特集(3/3 ページ)
直販中心の“知る人ぞ知る”ブランド「NIRO」。サテライトSP/SW/アンプというシンプル構成は一見“変化球”だが、実は設置スペースや接続の手間を最小限にした“直球”仕様。フロントサラウンドの理想形ともいえるNIROが生み出すシアターサウンドをレビューで探ってみた。
初期設定は特に必要ない。フロントの音量を基準に、リモコンでサブウーファー、センター、サラウンドの音量を個別に+/−できるほか、高音/低音の調整も可能だが、実際に聴いているうちに、気になればいじればよいというレベルだ。
2ch/5.1chともに抜けのよい上々の音質
まずは、ステレオの音楽を再生してみよう。2chソースはドルビーサラウンドプロロジックIIでのデコードも可能だが、音楽を聴く際はダイレクト出力したほうがいいだろう。この場合、音はフロントL/R、つまり、横へ外向きに取り付けられた2基のスピーカーユニットからしか鳴らない。
フロントL/Rが自分のほうへ向いていないため、どうなるのかと若干不安だったのだが、左右の音声はともに、サテライトスピーカーから1メートル以上離れた位置へ見事に定位する。ボーカルなど、センター定位の音像として録音された音は、その意図どおりに中央から聴こえてくる。各楽器の微妙な位置関係すら感じ取れる。
ただし、通常のスピーカー配置での音響とは若干肌合いが異なることもたしかだ。通常のステレオスピーカーの配置から得られる音場が、仮に“∧”とか“∩”の感覚だとしたら、この製品ではサテライトスピーカーを中心とした点から放射状に音が出てくるため、どうしても“∪”という感覚を受けがち。ただ、これは視覚からの影響や、先入観もあるとは思う。それに微妙に異なるとはいっても、ステレオ感はあり、定位もしているのだし、必ずしも通常のスピーカー配置と同じ感覚でなければまずいわけでもない。
次に、5.1ch音声収録の映画を鑑賞。左右の定位は音楽再生時と同様で、さらに、右から左への音の移動などもスムーズだ。もちろん、センタースピーカーは最も理想的な位置を与えられているのだから、セリフの安定感は抜群。問題は後方のイメージだが、これも前述の最適とされるリスニングポイントであれば、きちんと回り込んでくる。
音質は5.1ch、2chソースとも、抜けがよく、上々の印象。サブウーファーからの重低音の響きも自然だ。難点を挙げるとすれば、各音の分離感がもう少しほしいかなという感じ。また、1ユニットという構成上、小音量時にはどうしてもサラウンド効果やステレオ効果が薄れてしまう。ただし、この場合は前述のMovieMouse(2万2800円)を併用することで回避可能だ。
NIROシリーズは一見風変わりだが、そこから流れ出る音は、決してごまかしやトリックではなく、5.1ch分が出力されている。また、壁からの反響音を利用する仕組みではないので、部屋の形状や家具などの制約をあまり受けないのもありがたい点だ。今回はリビングルームへの設置を想定して「NIRO 600」を取り上げたが、PCと「NIRO 400」の組み合わせでデスクトップシアターを構築するのもいいだろう。両者はスピーカー出力の大小があるのみで、機能面では特に差はない。
関連記事
- コンパクトな“プライベートシアター”――ケンウッド「ES-9DVD」
ケンウッドの「ES-9DVD」は、独自バーチャルサラウンド技術「V.F.S.II」でフロントサラウンド出力が行える小型サイズのシステムコンポ。レビュー特集第5弾となる今回は、このコンパクトな“プライベートシアター”の実力を探ってみた。 - MDコンポの顔から“映画音響”――ビクター「NX-DV3」
独自の4chフロントサラウンド「√4(ルート・フォー)」を搭載した日本ビクター「NX-DV3」。十分効果のある映画音響が楽しめ、価格の割に音のいいスピーカーなど音楽を聴くのにも申し分ない。MDコンポを購入予定だが、サラウンドにも興味があるという人に適した製品だ。 - 音の質と豊かさで感動を演出〜BOSE「FreeStyle」
フロントスピーカーのみでサラウンドを提供するBOSEのエントリー向け「FreeStyle(3・2・1 SPEAKER)」。質の高い音響を手軽な操作で楽しみたいというユーザー向けにスピーカー名門が作った“フロントサラウンド”の実力をレビューで探ってみた。 - 手軽さが売りの“2.1chかんたんシアター”――松下「SC-HT03」
フロントサラウンド特集の第2弾は、松下電器産業の“2.1chかんたんシアター”「SC-HT03」。手軽に構築でき、音質も気軽に音楽や映画を楽しむには十分。「大画面薄型テレビの次はカジュアルなシアターサウンドシステムを」というユーザーに最適だ。 - ワンボディで“本物の5.1chサラウンド”を――ヤマハ「YSP-1」
フロントスピーカーのみでサラウンド環境を提供する製品をレビューする短期集中連載。第1弾は、ワンボディに搭載した40のスピーカーを個別制御して5.1chを作り出すヤマハ「YSP-1」を聴いてみた。 - 低価格5.1chサラウンドシステム特集
- LifeStyle:ホームシアター
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.