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コラム

フィルムで撮る本物のパノラマ(4/4 ページ)

デジカメ全盛で、銀塩カメラは存在価値がなくなってしまったように見える。だが、それは違う。映像にとってデジタル化のメリットはプロセスが楽になったということだけで、アナログでもそれを利用すればいいだけなのだ。今回はそれを証明する“フィルムで撮れる本物のパノラマ写真用カメラ”を紹介しよう。

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 HORIZONの魅力は、やはりそのアングルにある。写真としての色は、例えばLOMOのようにグワーッと色の濃い独特のトーンではなく、意外にといっては失礼だが、結構真っ当である。だがモノクロフィルムを使うと、印象がガラリと変わる。

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フィッシャーマンズワーフの波止場
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PIER39でアシカを見物する人々

 ぐわーこのみっしりした鮮烈な解像感はどうよ。色がないのに、色彩がほとばしるようである。今現在の風景に間違いないのだが、現実感という生々しいアブラがさっぱり洗い流されている。

 パノラマは遠景もいいのだが、5〜10メートル程度の近景もいい。近景になるほど絞りの判断が難しくなるのだが、ネガフィルムはラティチュードが広いので、多少露出が外れてもなんとか絵になるところが強みだ。HORIZONの場合は、露出計の表示よりも1段開けるぐらいでちょうどいい。

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開店前のレストラン。もう少し絞りを開けるべきだった
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ショッピングモール中央にある小ステージ

フィルムにしかできないこと

 HORIZONは構造がシンプルであるがゆえに、トラブルも多い。実は今回の渡米でフィルム6本撮影したのだが、そのうち2本は中でフィルムが切れてダメになってしまった。ローティングが普通のカメラよりも長く、横が58ミリもあるので、その分、巻き上げは慎重に行なわなければならない。

 もっともこれは、フィルム装てんに問題があった可能性が高い。2本とも暗い車内で装てんしたものだったので、パーフォレーションがしっかりスプロケットにかんでいなかったのかもしれない。

 36枚撮りのフィルムでパノラマ写真が22枚撮れるのだが、24枚撮りなら15枚程度である。HORIZONはそれぐらいの短いフィルムで、こまめに装てんし直した方が、失敗したときの被害が少ないかもしれない。

 ランニングコストは、フィルムを使う割には意外に安い。というのも普通のカメラ店に現像に出しても、こんな変なサイズは自動プリントできないので、現像だけお願いして、フィルムも切らずに長いまま受け取るのである。24枚撮りならせいぜい1本450円程度で現像できるだろう。

 あとはそれを家でコマに合わせて切って、フィルムスキャナで読み込むだけだ。筆者宅のプリンタ複合機には、フィルムスキャナ機能まで付いているので、それを利用している。こうして現像以外を内製していけば、大してお金はかからない。もちろんもっと高度にやろうと思ったらいくらでもお金がかかるのだが、相手がHORIZONならば、筆者はこれで十分だ。

 デジタルカメラの高画素化によって、フィルムカメラはその存在意義を失ったかのように見える。だが映像にとってデジタル化のメリットは、単に途中のプロセスが楽だからというだけに過ぎない。今やフィルムのようなアナログメディアであっても、処理プロセスをデジタル化していけば、さほど面倒なものではなくなっている。フィルムのキズだって消せるし、露出や色味も後からいじり放題だ。

 HORIZONのような原始的なカメラも、もはやアナログだからデジタルだからということは問題ではない。それでしかできないことがあって、それが魅力的であるうちは、存在し続けるということなのである。

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