私的録画補償金、初の返還額は8円
DVD-Rを家族の姿の記録に使ったというユーザーに、私的録画補償金8円が返還される。10年以上の歴史を持つ私的録音録画補償金制度で、返還は初めてだという。
私的録音録画補償金が、制度発足以来初めてユーザーに返還される。4枚のDVD-Rに家族の姿を記録したと申し出たユーザーに対し、相当額の8円が近く返還される。
私的録音録画補償金は、レコード会社が販売する音楽CDや、テレビ番組などをデジタル記録できるメディアやハードの価格に補償金を前もって上乗せしておき、著作権者に分配する制度。録音補償金は1993年、録画補償金は1999年に徴収が始まった。
DVD-RやDVD-RAMなど録画用デジタルメディアには卸値(カタログ表記価格の50〜65%)の1%が上乗せされ、私的録画補償金管理協会(SARVH)を通じて著作権者に分配される。
補償金の返還請求が可能なのは、ハードやメディアを他人の著作物の複製に使っていないと証明できる場合のみとしているが、録音・録画ともこれまで返還実績はなかった。
SARVH事務局によると、「返還の問い合わせはこれまでに数十件受けている」が、手続きに手間がかかる上、数円程度しか戻らないと知ると請求をあきらめる人がほとんどだという。
請求には、メディアやハードを他人の著作物の複製に使っていないことを証明できる証拠と、購入時のレシートが必要。返還の是非は、SARVHが3カ月に1回開いている返還委員会で判断する。
今回は、申請者がDVD-Rを家族の映像の記録に使ったと文書で申し出た。返還委員会はDVD-Rの内容を確認していないが、申請者を信用することに決めたという。
申請者はDVD-Rの5枚パックを千数百円程度で購入しており、1枚あたりの補償金は1.87円。4枚合計で8円を、7月に銀行振り込みで返還する。
文書は80円切手を貼った封書で送られてきたといい、トータルでは申請者の赤字になる。申請者はSARVH事務局に対して、申請経費を請求者が負担するのはおかしいなどと指摘したという。SARVH事務局は「払わなくていいものを払わされているという不満があったのでは」と話している。
SARVH事務局は、補償金返還の申請には今後も慎重に対処していく方針だが、課題は多い。「DVD-Rの場合、1回しか録画できないため判断しやすいが、DVD-RWやDVD-RAMなど、何千回、何万回も書き換えができる場合、何をもって私的複製に使われないと判断するか難しい」といった問題もある。
デジタル形式の録画や録音が普及するにつれ、私的録画補償金制度の問題点が頻繁に指摘されるようになってきた(関連記事参照)。「制度が技術の急速な進歩に追いついていないのが現状」とSARVH事務局も認める。補償金制度を定めた著作権法の改正などについては、文化審議会著作権分科会で審議中だ。
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