BD-Rのコストは本当に高い?:インタビュー(3/3 ページ)
次世代DVD統一交渉の決裂後、各社はそれぞれ開発を再スタート。東芝は来年3月に2層30GバイトHD DVD-Rを投入する。“メディア単価”で有利とアピールする東芝側だが、一方のBD-Rは本当にコスト高なのだろうか? ソニー担当者に聞いた。
1層30Gバイトは信号処理系の小改良で実現可能か?
1層ディスクを30Gバイトに引き上げる可能性については、一連の次世代光ディスク関連記事でお伝えしてきた。ではなぜ“30Gバイト”なのか。これには2つの意味がある。ひとつはHD DVDの2層ディスクとBDの2層ディスクが同容量となる、というシンボリックな意味での30Gバイトという数字。
もうひとつはROM再生対応機の発売を来春に控え、すでにLSIを再設計している余裕がないだろうと推測されるためだ。既存のBD規格で採用されている信号処理技術の小改良で実現されるとすれば、30Gバイト程度だろうという“読み”から、一連の次世代光ディスクの取材の中で筆者が“30Gバイト”という数字を挙げて質問をしてきたわけだ。
小川氏は「推測は大まかには当たっている。現行BDのハードウェアを大きく変えずに容量を上げるとすれば1層30Gバイトになる。これ以外にも前述したように33Gバイト、35Gバイトという技術もある。実は35Gバイトクラスの容量は、パイオニア、サムスン、松下電器、フィリップス、ソニーのいずれも達成している。研究開発を進めれば、まだ密度を上げることもできるだろう。しかし、33Gバイト以上を実現するにはちょっとした壁を乗り越えなければならない」と話す。
小川氏は、これ以上については言及を避けた。だがBDA参加企業は、来年のワールドカップサッカーとオリンピックを見据え、BD-ROM再生対応録画機のスケジュールを組んでいる。これに遅れないためには、現在の仕様を動かさない、あるいは30Gバイトまでの容量拡張にとどめる、のいずれかの選択肢しか選べない。
現時点ではまだ不透明な面が多いが、HD DVDとの競合関係も考えれば「1層30Gバイト」という拡張仕様がBDに追加される可能性は低くないようだ。
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