ソニーの新経営戦略に思うこと(4/4 ページ)
“エレクトロニクスの復活”を目指して先週ソニーが発表した新経営戦略は、新味に乏しい内容だった。だがソニーの苦しみは彼らだけの問題ではなく、コンシューマー向けエレクトロニクス製品全体を投影しているのかもしれない。
高画質・高音質の開発は継続できるか?
ひとつの鍵はソニーが「高画質・高音質」といった、非常に感覚的で定量的には表現できない要素に対して、今後も継続的な投資を行えるかどうかにかかっていると思う。前述したように、消費者はコンテンツに対するコダワリを以前ほどは持たなくなり、相対的に高品質へのニーズも下がってきてはいる。
しかしだからといって平凡なデジタルデバイスを、ソニー的デザインで包み、ソニーのバッジを付けて売っていたのでは、単にこれまで作ってきたブランドを食い潰すだけだ。振り返ってみるとソニーがエレクトロニクス企業として大成した背景には、常に上位に他社にはないユニークな高級機種が並び、それが現実のビジネスを支える大衆向け製品の商品力とイメージを上げていたからのように思う。
現在もSXRDを用いたハイエンドのプロジェクター、リアプロジェクションテレビ、AVアンプなど、ソニーならではの製品は存在する。だが、そうした“数は出ないがイメージを向上させる”製品の魅力が一般の認知として広がり、ミドルクラスやローエンドの製品にまで伝搬しているかといえば、決してそうはなっていない。
その原因とも言えるのが、消費者の志向性の変化ということになるのだろうが、ソニーが今後もソニーたりえるためには、今以上にソニーブランドの強化を図るためにも上位製品の品質志向を徹底しなければならない。そうした意味では、QUALIAブランドの新規開発凍結は(相対的なソニーブランドの大衆化を止めるという意味で)良いニュースであると捉えたい。
もっとも、今回の新経営戦略には不採算部門の撤退や大幅なリストラも含まれている。そこでソニーらしさの象徴でもある高級機への投資が削減、あるいは大幅リストラされるようならば、“ものづくりのソニー”復活は遠くなるだろう。高画質・高品質を追求した開発ノウハウの蓄積を継続し、それを実業たる大衆向け製品に転化できるか。ソニーの復活はそこにかかっているのかもしれない。
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