Appleの新iPodとiMac、アナリストと小売業者は歓迎(1/2 ページ)
アナリストはAppleのABCとの契約を特に評価し、小売業者はクリスマスシーズンを前に思いがけなく発表された新製品に歓迎の声を上げている。
米Apple Computerが今週発表したメディアセンター型の新型iMacとビデオ対応iPodについて、アナリストと小売企業はかなり肯定的な反応を示している。
同じ週に過去最高の利益を発表したAppleの株価を下落させたウォール街とは対照的な見解だ。
Appleのスティーブ・ジョブズCEOは10月12日、「Front Row」と呼ばれるメディアセンター型ユーザーインタフェースを採用した新型iMac、ならびにカラービデオコンテンツを再生できる新iPodを発表した。
これに加えジョブズ氏は、ABCおよびその親会社であるDisneyと、AppleのiTunes Music Store(iTMS)上で合法的に販売するコンテンツ供給を受ける契約を結んだと発表した。
iTMSでは、音楽ビデオやビデオポッドキャストのほか、ジョブズ氏率いるPixarの短編映画も販売される。
米調査会社JupiterResearchのマイケル・ガーテンバーグ副社長兼リサーチディレクターは、「これは、非常に重要な取引だ」と語っている。
Appleによる一連の発表は「メディアセンター型のパーソナルコンピュータとモバイルビデオという2つのコンセプトを実現してみせた」と同氏。
ArchosやCreative Technologyといったメーカーもポータブルビデオメディアプレーヤーを投入しているが、ガーテンバーグ氏によれば、Appleは「それらの限界を克服した」という。
特に現行の携帯ビデオプレーヤーの問題として、同氏は合法コンテンツを供給する信頼性の高い供給元が不足していることと、ビデオをプレーヤーに転送しにくい点を挙げた。
iTMSでは、現在1社の供給元から5本のテレビ番組しか販売していないが、ガーテンバーグ氏は、今後その数は確実に増えていくと見ている。
iTMSの立ち上がり当初に提供されていた楽曲数はわずか20万曲だったが、現在では200万曲に達していることに同氏は言及した。
JupiterResearchのデータによれば、家庭におけるオンラインに対応したDVR(デジタルビデオレコーダー)保有率は4%を下回り、またVTRを保有する大半の人々は、放送されていない番組の録画にはVTRを使わないという。
今回のビデオコンテンツの提供は、かつてiTMSが「Napsterに代わる最初の合法的な選択肢になった」当時の音楽配信と似ているとガーデンバーグ氏は話している。
現在は配信されていないバックカタログなどのコンテンツを持っていて、将来的にiTMSを通じてこれらを提供する可能性のあるメディア企業は、数百とはいかなくとも数十社はあると同氏は見ている。
米調査会社Gartnerのリサーチ担当副社長、バン・ベーカー氏も、ダウンロード可能なデジタルコンテンツについて楽観的な意見を述べている。
「先日の発表で最も印象的なことは、AppleがDisneyとの契約によって、現在放送中の2大人気番組の配信を確保したことだ。これにより、現行シーズンのエピソードが放送された翌日から提供されるようになる」(同氏)
「Appleにとっては大当たりだ。これからほかのテレビ局がどんどんAppleに交渉を持ち掛けてくるだろう」(同氏)
ベーカー氏は、AppleのFront RowとMicrosoftのWindows Media Center Edition(MCE)を直接比較することは時期尚早だとした。
「MCEに見られるすべての機能を(Front Rowが)提供しているわけではないが、Front Rowはほぼ同じ機能をはるかに洗練された形で提供している」(同氏)
「Appleが(Microsoftよりも)多くのビデオコンテンツを提供できるという前提に立った場合、多くの新製品がMedia Center PCの前に立ちはだかることになるだろうとも。
Creative Strategiesのアナリスト、ベン・バハリン氏は、Appleは「メディアセンターに向けて歩を進めた」と話している。
「『我らがMacこそデジタルメディアライフスタイルの中心だ』とうたうAppleの次なるステップは、明らかに、このデジタルメディアをいかにテレビにもっていくかだ」。
Appleはパートナーと手を組んで新たなハードウェアを開発するかもしれないし、独自開発するかもしれないという。
Front Rowについては、新型iMacの有力なセールスポイントになると同氏は見ている。DVRまたはVTRを保有する人々が放送済みの番組を有料でダウンロードする理由は何かとの問いに、同氏は「それが出来るからだ」と答えた。
バハリン氏は携帯電話とメディアコンテンツを例に挙げ、Fox TVの人気番組「24」のショートエピソードの続編が3ドルで携帯電話上で鑑賞できるようになったと説明した(9月15日の記事参照)。
さらに、コンテンツ製作者はiTunesを介して、アウトテイクや拡張版、コメンタリーなど、本編以外のコンテンツを販売することもできるという。
「ビデオ対応iPodはヒットする」と話すバハリン氏だが、ただしその主因はビデオ機能ではないようだ。
「iPodは今でもホリデーシーズン向けのギフト製品であり、このモデルの価格付けもアグレッシブだというのが理由だ」と同氏は説明している。
一方、Current Analysisのアナリスト、サム・バブナニ氏は次のように話す。「最大のニュースは『人々がiPodでビデオ鑑賞できる』ことではない。ジョギングやエクササイズの最中にはビデオを観られないのだから」
「iTunesを通じてムービーをダウンロードできるようになった小さな一歩――これが今回の発表の目玉だ」(同氏)
「Appleは着実に歩を進めつつある――カギは有力なコンテンツを供給できるパートナーとの提携にある」
バフナニ氏によれば、iTMSでダウンロードされるムービーの解像度は320×240で、現在テレビで放映されているものと同レベル。しかし、(回線速度によっては)ダウンロードに(放映時間と同じ)45分以上かかることも考えられる。とはいえ、BitTorrentなどのP2Pサービスと違い、このダウンロードは合法だ。またP2Pサービスからのダウンロードは「時間が果てしなくかかる」と同氏は言い添えた。
「これはデジタルホームに向けた第一歩であり、これからこの分野の関連製品が続々登場するだろう」。バブナニ氏は来年2月頃に大きな発表が新たにあるだろうと予測している。
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