トータルバランスが魅力の新しい“Z”――三洋「LP-Z4」:レビュー:Theater Style(3/3 ページ)
ユーザー本位の“かゆいところに手が届く”機能で人気の三洋電機ホームプロジェクター“Z”シリーズ。その最新モデル「LP-Z4」は、画質と便利さの両立を果たすなど、トータルパッケージとしての完成度をさらに高めている。
ただし、クリエイティブシネマは規定値でコントラストエンハンスメント(コントラスト強調)と黒伸張が、それぞれ弱めにかけられている。元々、暗部の見通しが良いZ4だけに、黒伸張は弱めにかかっていた方がコントラスト感は増すが、コントラスト強調はオフの方が良い結果となるだろう。このあたりはマニュアルで調整し、メモリに登録しておきたい。
暗くシアター向けに調整した部屋以外では、ピュアシネマではなく、クリエイティブシネマの方が向いている。実際にリビングシアターなどで利用する場合は、クリエイティブシネマモードを基礎に、好みの調整値へと合わせ込むといい。レンズアイリスで白ピークと黒の沈みのバランスを調整し、コントラストエンハンスメントと黒伸張を好みに応じてオフに。さらに色温度のバランスを見極めれば、大まかな追い込みができる。
やや明るめの部屋にも対応可能な懐の広さ
一方、145ワットの新ランプはリビングというZシリーズでは新設のプリセットを生み出している。リビングモードは緑かぶりを感じない程度に明るく見える方向にチューニングされ、レンズアイリスも解放がデフォルトに。コントラストエンハンスメントや黒伸張がかかった上、全体的に彩度を上げる方向に調整してある。
スペック上の明るさはさほど高くはない(最大1000ルーメンだが、リビングモードでは800ルーメン以下と推測される)のだが、夜、スクリーンに直接光を当てずに調光できる環境ならば、完全に部屋の灯りを落とさなくとも十分にテレビ番組を楽しめるだけの明るさが確保されている。
このとき、さらに明るさが欲しい場合は、ランプモードをプリセットのリアクトイメージ2からリアクトイメージ1へと変更するといい。リアクトイメージ1は、明るい場面でランプパワーが最大となるため、冷却ファンの音はリアクトイメージ2よりも大きくなる。しかし、静音時には22dBとなるZ4は、最大でも26dBとかなり静か。リアクトイメージ1でも、天井つり下げや棚への設置で頭から離れた場所にある場合は、ほとんど動作音が気にならない。ランプパワー最大でも、十分に使えるのである。
映像回路の面では、12ビット化された映像プロセッサが強く全面に押し出されているが、12ビットという数字そのものは、あまり考えなくても良い。問題は出てくる絵であり、12ビットが重要ではないからだ。しかし、前述したように量子化誤差の出やすい暗部階調の見通し、色の安定性が高いといったZ4の特徴を振り返ると、12ビット処理が大きく貢献しているのだろうとは想像できる。
また、新しい映像回路は、昨年、松下電器やソニーが導入していた特定の色を調整する機能を「3Dカラーマネジメント」として実現している。画面上から色をピックアップし、明るさ、色相、ガンマを微調整する。機能的に他社と大きな差異はないが、調整幅がやや狭めな代わりに、解りやすいユーザーインタフェースとなっている。
さてITmedia LifeStyleでは2機種目となる今年のホームプロジェクターの紹介だが、やはり気になるのは他機種との比較だろう。絵作りの違いによる見え方の違いはあるものの、絶対的なコントラストに関しては、各機種で大きな違いがあるわけではない。違いは主に、絵作りの方向性、それに想定する設置環境などの違いで、画質面でのポテンシャルはかなり近い。
その中にあってZ4は、シャープで緻密で境界線の細いエッジ表現が特徴だ。特にコンポーネントからのDVD映像入力時など、スケーリングの品質はこのクラスでは高い方で、ボケ感がなくシャープな印象。レンズ解像度の高さもあって、シャキッとした切れ味の鋭さがある(一方で、ややシャープ過ぎる印象もあるが)。その上で階調重視の絵作りは、ダイナミックさには欠けるものの、明暗あるいは色相の描き分けは丁寧。
このあたりの作り込みの方向と、Z4ならではの便利機能を評価するならば、トータルバランスで大変魅力的な機種だ。
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