デジタル放送を2層メディアに残せる――パイオニア「DVR-DT90」:レビュー(5/5 ページ)
「DVR-DT90」は、3波対応デジタルチューナーと500GバイトのHDDを搭載したパイオニアのフラグシップモデルだ。DVD-R DLのCPRMメディアをサポートしたことで、デジタル放送を長時間/高画質で残すことができる。その実力を詳しく検証していこう。
ダビング時間の検証は、三菱化学メディア製のDVD-R DL、太陽誘電製のDVD-R 16倍速対応メディア、日本ビクター製のDVD-RW 6倍速対応メディアを用い、ほぼメディア一杯に高速ダビングを行った。結果は下表の通り。DVD-Rだけは若干カタログスペックより時間を要したものの、ほぼカタログスペック通りだ。DVD-RWメディアでは6倍速対応のメリットは大きく、ダビング時間だけなら10分を切っている。
DVDメディアへの書き込み品質チェックは、いつも通り、PCを用いた簡易計測環境で行った。DVD-Rでは、外周部でエラーレートが高まる傾向が見られるものの極めて優秀。DVD-R DLは、2層目の方が若干エラーレートが高くなったが、エラーレート自体はまったく問題ないレベルだ。このあたりは、定評のある自社製ドライブを採用したパイオニア製品ならでは。期待を裏切ってはいない。
基本をおさえた親切なハイビジョンレコーダー
画質面にはあまり言及しなかったが、少なくともTS録画した番組をHDMIやD4接続で視聴する限り、放送波とまず区別がつかない。MPEG-2録画(DVDメディアへのダビングを含む)では、同社の伝統といえる誇張の少なさが、HDからSDへのダウンコンバートにマッチしている印象だ。
現時点で唯一、DVD-R DLメディアにデジタル放送をダビングできるのは大きな特徴だ。CPRM対応のDVD-R DLメディアは依然高価ではあるが、たとえばデジタル放送をXPモードで約2時間保存できる点に大きな魅力を感じる人は多いだろう。アナログ地上波放送でXPモードを常用する人が多いとは思わないが、ソースの解像度が高い(デジタル放送)場合は話が別。XPモードとSPモードの画質の違いは、よりわかりやすい。年末年始は2時間枠の特番も多くなり、デジタル放送を少しでも高画質でDVDメディアに残したい、という人には存在意義の大きな製品といえるはずだ。むしろDVD-R DLのVR記録に対応しない競合製品の方が、このタイミングで「なぜ?」と首を捻ってしまう。
また、スペックとしては分かりにくい部分だが、2005年モデルから採用されている新GUIの出来の良さも大きな魅力。ちょっとおせっかいかなと思える部分もあるし、一部に機能統合が完全ではないところもあるが、やはり基本的な使い勝手がいい。ソニー「RDZ-D90」のXMB(クロスメディアバー)のような俊敏さがなくても、ストレスが溜まるようなことはない。目的に達するまでのステップ数が少ないからだ。また、RDZ-D90が地上波アナログ放送とデジタル放送で電子番組表のデザインを統一しなかったのに対し、本機ではしっかりと統一されている。
ハイビジョンレコーダーは“マニア向け”と思われがちだが、地上デジタル放送のエリア拡大に合わせて利用者が広がっていくことを考えれば、本製品のような万人向けの“分かりやすさ”を備えた製品の存在意義は大きいだろう。チャイルドロック機能を備える点なども、本製品が決してマニア層だけをターゲットにした製品ではないことを物語っている。それだけに、TS録画とMPEG2録画の録画領域をユーザーが設定するという点はいただけない。まるで、素晴らしい家を建てたのに、リビングの真ん中に大黒柱が通っているような感じがして非常に残念だ。
また、現在のラインアップでは同機がフラッグシップとなっているが、A/D、D/A回路などに「DVR-920H-S」ほどの高価な部材は使われていないようだし、アナログチューナーにはゴーストリダクションも非搭載だ。つまり、東芝でいえば「RD-X6」のような、“真のフラッグシップ”製品を追加する余地が残されている。DVDレコーダー事業からの撤退も取り沙汰されている同社だが、AV専業メーカーならではのフラッグシップモデルを見せてほしいと思うのは、筆者だけではないだろう。
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