見えてきたHD DVDレコーダーの姿――東芝の戦略を聞く:インタビュー(2/2 ページ)
いよいよ本格展開の時期を迎えた次世代光ディスク。International CESで低価格プレーヤーを発表した東芝だが、日本市場に話を絞り込むと、話題の中心はレコーダーになるはずだ。東芝デジタルメディアネットワーク社主席技監の山田尚志氏に話を聞いた。
「東芝は記録メディアの製造販売を行っていませんから、具体的な価格は提示できません。しかし、容量単価でBlu-ray Discよりも安くなるのは間違いないと思います。BD-Rの1層25GバイトとHD DVD-Rの2層30Gバイトで、HD DVD-Rの2層の方が安くなるのではないでしょうか。HD DVD-Rの2層ディスクはディスクのソリや色素塗布などで、通常のDVD-Rのノウハウを活用できますから技術的な障害は少なく、1層対2層でもコスト面での不利はないと考えています。通常の2層DVD-Rとの違いは、ディスクの溝を作るときのピッチの違いによるものだけです」
――HD DVDレコーダーは2層Rが標準的なメディアになると考えていいのでしょうか?
「少なくともライバルの2層ディスクよりも、気軽に使えるものになるでしょう」
――記録型HD DVDドライブはDVDの書き込みが可能になりそうですか?
「できれば盛り込みたいと思っていますが、現時点ではDVD記録が可能かどうか決まっていません」
――一方、H.264 High-Profileの画質向上は目を見張るものがあります。まだ圧縮ツールによる差は大きく、良い画質、悪い画質の差が激しいようですが、15Gバイトでも映画を収めることはできそうです。こうなるとHD DVDとDVDの片面ハイブリッドディスクも実用的になりそうですが、DVD層の4.7Gバイトは小さい。このあたりを解決できるハイブリッドディスクは考えていますか?
「コンテンツ制作側からは、DVD2層とHD DVD1層のハイブリッドを規格化してほしいという声も一部にありますので、検討はしています。ただHD DVD層が1層だけというのは、アンバランスですし、ディスク製造マージンを十分に稼げるかなども含めて検討する必要があり、規格化されるかどうかは現時点ではわかりません」
――技術サイドでHD DVDに対する誤解を解きたい部分はありませんか?
「よくHD DVDはチルト(ディスクのソリによるレーザー入射角のブレ)に弱いということをいわれます。確かに0.6ミリカバー層なので、そうした面はありますが、ドライブ側の工夫もあってチルトサーボ(チルトを打ち消すサーボ機構)なしでも問題ないレベルまで開発は進んでいます。HD DVDはチルトサーボ必須になっていますが、これはサーボがなければ動かないのではなく、サーボを用いて安定させることが目的で、世間でいわれているほどチルトに弱いといったことはありません」
――最後に次世代光ディスクに期待している読者に、東芝としてのメッセージをお願いします。
「まずHD DVDの画質と音質の良さを楽しんでほしいと思います。またインタラクティブ機能のiHDは、柔軟性と機能性に富んで、リッチなインタラクティブコンテンツを容易に作成できます。DVDではインタラクティブ機能があまり使われませんでしたが、大幅な機能アップと改良が施されたことで、圧倒的におもしろい機能に仕上がりました。今度こそはコンテンツベンダーも、インタラクティブ機能を活用した興味深いソフトを作ってくれるでしょう。HD DVDが生み出す新しいエンターテイメントの世界を楽しんでください」
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