画質を改善するビデオプロセッサたち:2006 International CES(2/2 ページ)
固定画素における映像処理の重要性は以前から叫ばれてきたが、パネルレベルでの画質が向上してくると、映像処理チップの優劣がハッキリしてくる。「2006 International CES」の会場で、北米を拠点にする映像処理チップメーカー2社のビデオプロセッサを取材した。
一方、フルプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を用いてアルゴリズムを実装するアプローチを取っているのがアンカーベイテクノロジーズ(ABT)だ。同社はシリコンイメージで開発していたDVDOプロセッサユニットを開発していたメンバーがスピンアウトして設立した企業。処理チップをABTが各社に供給し、DVDOが単体プロセッサを販売する。
ABTは、まずDVDO向けにFPGA上でアルゴリズム開発し、それをハードワイヤ化してAV機器ベンダーに提供している。たとえば、マランツ「DV-9600」にI/P変換およびスケーラチップ、デノンの「DVD-A1XV」にスケーラチップを供給している。
同社のI/P変換はジャギーやフリッカーが非常に少なく、S/N感が高いのが特徴。とくにエッジ描写はなめらか。なおかつボケ感が少なく、それでいてリンギングがなくホッソリとした輪郭線になる。DVDなどのSD映像に対する処理も優秀だが、1080iからのHD I/P変換の品質も高い。さらにフレームレート変換の自由度が高く、あらゆるソースをディスプレイに最適なフレームレートへと変換して出力することが可能だ。たとえば60iの映画ソースを3-3プルダウンし、72Hz(つまり24フレームの3倍)で出力することができる(ただし受け側が対応していなければならない)。
今回のCESでは、映像処理によるディレイに合わせて音声を同期させる機能を搭載した「iScan VP30」というDVDOブランドのビデオプロセッサユニットをメインに展示していた。また、ABTの開発したI/P変換、スケーリングのアルゴリズムとオンスクリーンディスプレイ表示回路などを1チップに統合し、映像機器ベンダーに提供していくという。なお、DVDOブランドで発売されるiScan VP30に関しては、日本でもマルチフォニック・サウンドが販売する。
シリコンオプティクス、ABTともにアプローチは異なるが、共通しているのは映像処理アルゴリズムに特化した研究開発を行っていることだ。画像品質にフォーカスして集中した開発を行い、それを半導体技術の進化に応じて低価格製品に落とし込んでいる。
これらの企業がリーズナブルな価格でチップを供給するようになれば、自ずと薄型テレビやプロジェクターの中に入り込み、全体の画質レベルが底上げされていくことになるだろう。
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