「放送と通信の融合」を制作現場はどうとらえているのか:NET&COM 2006(2/2 ページ)
IT企業による放送局買収問題で人口に膾炙した「放送と通信の融合」。主に経営面から取りあげられることが多かったが、制作現場ではどのようにとらえているのか。VODサービス「第2日本テレビ」やブロードバンド放送「GyaO」の責任者らが率直な意見を交わした。
土屋氏:コンテンツの充実ぶりや会員数の上昇カーブを見ると、GyaOはすごいとしかいえない。ブロードバンドで映像を見るということはまだ一般化しておらず、習慣が作りだされている段階なので、GyaOと一緒に盛り上げていきたい。第2日本テレビでは「テレビではできないものは何か」を考え、地上波放送とは違う、深く狭いコンテンツを流すことをポリシーとしたい。
滝山氏:地上波の弱点はリピートができないこと。番組制作費はどんどん高騰しており、単純に地上波で放送するだけではペイできないのが現状だ。日本はこれから少子化が進むので、マルチユースを推進することと平行し、「カートゥーンネットワーク」のようなブランド化を進めて海外へも進出する必要があると考える。
ネット上のコンテンツ展開がビジネスになれば、制度は後からついてくる
菊池氏:乱暴にいってしまうと、すべては費用対効果の問題に尽きるのではと考えている。大事なのは権利者も含めて、関連する人すべてにネット上にコンテンツを流すことがビジネスとしてプラスになるととらえてもらうこと。そうすれば、制度は後からついてくる。
土屋氏:国内マーケットもまだ成長すると思うが、日本のコンテンツ力は世界に通用するはず。第2日本テレビの最終形としては、日本語/英語/中国語/スペイン語のエントランスがあって、各国の通貨で決済できるようなイメージを考えている。日本のコンテンツにはそれだけの力がある。
滝山氏:ハリウッド作品の場合、プロデューサーが予算や権利の多くを把握しているので(権利処理が容易)、マルチユースしやすい。とにかく、クリエーターに還元される仕組みが必要だ。
2006年、放送と通信はどのように絡み合うのか
楜沢氏:行政には、公正な競争ができる環境をつくって欲しい。「放送と通信の融合」については、人材面や企業間も含めて「放送村」「通信村」というムラ意識を取り払っていく必要があるのでは。
菊池氏:GyaOの会員数1000万はそう遠くないうちに達成できると思う。会員数の獲得も進めるが、新聞やテレビのように、1日1回、チェックしてもらえる愛されるメディアになりたいと考えている。
土屋氏:最終的な目標は日本産コンテンツの世界進出だが、第2日本テレビを開始してから、予想以上に女性や若年層など、PCに不慣れな層も興味を持ってくれていることが分かった。今年はそうした層にもアピールしていきたい。2005年は主にビジネス面から「融合」について騒がれたが、まずはコンテンツとクリエーターありきであることを喚起していきたい。今年はネット上のコンテンツ流通について、すべてのスピードが上がってくるはず。
滝山氏:私も土屋氏と同じで、「まずはコンテンツありき」の考え方であり、それは変わらない。地上波テレビに頼らない制作スキームの構築を目指したい。アニマックスに関して言えば、1000万世帯契約を達成することと、海外展開を進めていきたいと考えている。
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