あなたの知らない理化学の世界――理研公開:っぽいかもしれない(4/4 ページ)
独立行政法人理化学研究所(理研)の和光研究所が一般公開された。113番元素を発見した線形加速器「リニアック」、超伝導リングサイクロトロン、脳の仕組みがわかる企画展示「ブレインボクス」など、あまり見る機会のないものがいろいろあった。
歌を歌う動物たち
題名だけ見て、今回一番楽しみにしていた展示。一番最初に見に行った。展示を見ると、いろいろな動物の鳴き声をソナグラムにしたものが掲げられている。なるほど鳴き声からその意味を探るものだろうか、と思って説明を聞いてみた。
全然違った。ここでは「意味」は考えていない。ジュウシマツでもっとも研究が進んでいるので、それを例にして説明してくれたのだけど、ジュウシマツのさえずりをグラフにすると、いくつかの「語」(意味がないので、「語」というのは不適当なのだけど、他にいいことばがない。音楽でいう動機くらいのところ)が組み合わされていることがわかる。これをさらに調べると、語のつながりは決してランダムではなく、ある語のあとには別のある語が出やすいとかいうパターンが見えてくる。また、鳴き初めの語はいろいろあるのだけど、最後にくる「語」はだいたい決まっているということもわかった。
「わたしたちは、人間のことばの文法というものも、(意味とは独立に)このようなところから発生したのではないかという仮説を立てています」
すごい話になって来た。その場で思いつく限りの質問はしてみた。
――それは、ジュウシマツの口の構造で決まることではないのですか?
「グラフをよく見るとわかるのですが、語と語の間には無音時間があります。一度鳴くのを区切っているわけで、口の構造上からくるものだけはなさそうです」
――音楽的な理由ということはありませんか? これは、コード進行がある程度決まっているという話と似ていると思うのですが。
「そこから文法が生じたのかもしれません」
一方、女王を中心とするアリやハチのような「社会性」を持つことで知られるハダカデバネズミは、鳴き声にすべて「意味」があるのだそうだ。つまり、彼らは「歌わない」し、語を組み合わせるということもない。
人間の言葉がいま、1語でひとつの意味を示すだけではなく、それを文法構造で組み合わせられるようになったのは、遠い先祖が意味もなく歌っていたからかもしれないのだ。
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