Windowsの操作性で生まれ変わった新gigabeat――「gigabeat S60V」:レビュー;(3/3 ページ)
東芝のHDDプレーヤー「gigabeat」に新製品「Sシリーズ」が追加された。動画対応が大きなトピックだが、注目すべきはWindows Mobile Portable Media Center(PMC)採用に伴う操作性の向上だ。
クオリティの高い動画再生、WMV再生可能だが実質的には変換必須
本製品で再生可能な動画ファイルの形式はWMVのみだが、転送ソフトに利用するWMP10は他のファイル形式からWMVへの変換機能を有しているので、WMP10の対応するファイル形式(MPEG-2など)ならば本製品で鑑賞できるといえる。ただ、ファイル形式がWMVであっても、本製品の再生能力を超える解像度/ビットレートの場合にはWMP10で再生可能な形に変換されてから転送される。
試しに、PCでTV録画した解像度640×480、ビットレート1MbpsのWMVファイルをWMP10で変換してみたところ、解像度は320×240、ビットレートは736kbpsとなった。解像度は本製品の液晶解像度(320×240ピクセル)にあわせて、ビットレートは再生できる上限である800kbpsを上限として変換されるようだ。
録画機能をもったPCの中にはWMVで録画ファイルを生成する製品も多いが、HDD容量も潤沢な今、320×240という低解像度を平時の録画モードに設定しているユーザーは少ないだろう。実質的には視聴前の変換は必要不可欠といえる。
録画ファイルの変換/転送中。変換に必要な時間はPCのスペックに依存するが、Celeron 2GHz/メモリ768MバイトのPCで前述のWMVファイル(解像度640×480、ビットレート1Mbps、収録時間約30分)を変換したところ所要時間は約20分
なお、ファイルの転送については本製品の「¥メディア¥Video」のフォルダにドラッグ&ドロップしてもよいが、本製品でそのまま再生できないファイルについては、WMP10で変換してから転送するよう警告するメッセージが表れる。
2.4インチながらもQVGA(320×240)という画素密度の高い液晶を搭載したこともあり、精細感の高い映像が楽しめる。バックライトの輝度が高く、視野角も十分確保されているので、机上においても十分に鑑賞に値するクオリティだ。一般的なソースを視聴するには応答速度も十分だが、スポーツやダンスミュージックのプロモーションビデオなど、特に動きの激しい場面では細部の鮮明さが失われるようにも見える。
動画の再生/一時停止はプラスボタン中央の丸ボタン、早送り/早戻しはプラスボタンの左右で行う。ボタンのレスポンスは迅速で、操作にストレスは感じない。アスペクト比の変更はできないが、画面の縦横切り替えは可能。縦にすると普段音楽を聴くようなスタイルでそのまま動画も楽しめるが、せっかくの解像度が無駄になってしまう。切り替えは動画の再生中でも可能なので、再生する際に切り替える使い方がいいだろう。
PMC採用で新たなステージに入ったgigabeat
本製品を既存シリーズ製品と比較すると、最も大きな相違点は動画再生機能の有無だ。しかし、“ポータブルプレーヤーで動画を見る”という需要がいまだ顕在化していないことを考えると、注目すべきはPMCを採用したことによる操作系の変更にあると思われる。
独自UIを搭載した既存シリーズもその操作性は決して悪くないが、やはり独自のものであり、利用にはある程度の慣れが必要だった。本製品はPMCを採用することで、Windows OSを普段から使っているユーザーならば、“何となく”でも十分に使いこなせる。ポータブルプレーヤーが一部の先進的なユーザーだけのものではなくなった今日、その“何となくでも使える”が重要なのだ。
動画再生機能の搭載をはじめとした多機能化が進むポータブルプレーヤーにとって、多機能さと使いやすさは相反する要素であり、この解決にWindowsの操作性を提示する本製品は、今後も登場するであろう「iPodではないポータブルプレーヤー」にとってひとつの方向性を示すものといえる。
実売価格は今回試用したS60Vで4万5000円前後、下位モデルのS30で3万5000円前後となっており(ITmedia Shopping調べ)、直接のライバルであるiPodとほぼ同価格帯に収まっている。市場においてはiPod nanoやフラッシュメモリタイプのウォークマンなど比較的安価なタイプが人気を集めていることもあり、爆発的なヒットとなるかといえば疑問も残るが、PMC採用で新たなステージに足を踏み入れた本製品が大きな可能性を秘めていることは間違いない。
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